Elgar 序奏とアレグロ/弦楽セレナーデホ短調/
Vaughan Williamsトマス・タリスの主題による幻想曲/
グリーンスリーヴスによる幻想曲
(ジョン・バルビローリ/シンフォニア・オブ・ロンドン)


EMI 7243 5 67264 20 Elgar

序奏とアレグロ 作品47(アレグリ弦楽四重奏団)
弦楽セレナーデホ短調 作品20
エレジー 作品58*
ため息 作品70*

Vaughan Williams

トマス・タリスの主題による幻想曲
グリーンスリーヴスによる幻想曲

ジョン・バルビローリ/シンフォニア・オブ・ロンドン(1962年)/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団*(1966年)

EMI 7243 5 67264 20

 以下のコメントより13年経過。”東京にて待望の入手!”と喜んだ頃も懐かしいデータ拝聴の時代を迎えております。劇的な詠嘆を感じさせるElgar、幻想的に幽玄なVaughan Wiilims、どちらも大好きな作品を揃えて、ここ最近誰のでもいいや、なんて、やっぱりJohn Barbirolli(1899ー1970英国)による慈しむような、舐め回すような表現が懐かしいもの。Sinfonia of Londonとは1955年創立、録音専門のオーケストラとのこと。アンサンブルは優秀。「エレジー」「ため息」を除く収録がLPオリジナルらしい。ちょいと古めかしい音質だけれど、雰囲気はちゃんと感じ取れますよ。

 Elgarによる序奏とアレグロ(Introduction and Allegro)作品47との出会いはヴィクトール・デザルツェンス/ローザンヌ室内管弦楽団によるもの。弦楽合奏と弦楽四重奏による合奏協奏曲風、序奏(ト短調)は詠嘆の掛け合い、力強い弦楽合奏の叫びを静かに弦楽四重奏が受け止める懐かしい旋律はウェールズ民謡とか、アレグロ(ト長調)はぐっとモダーンな風情に快活、その対比が劇的な効果を上げております。(13:59)弦楽セレナーデホ短調 作品20は第1楽章ホ短調「allegro piacevole」(3:59)第2楽章ハ長調「larghetto」(6:00)第3楽章ト長調−ホ長調「allegretto」(3:07)からなる短い作品。寂しげにデリケート、モノクロームな弦楽サウンドはたっぷり甘くて、こんな作品はバルビローリの個性ににぴったりでしょう。

 エレジー/ため息のオリジナルは「エニグマ」と一緒だったみたい。儚い吐息のように短い4:23-5:09、アンサンブルのサウンドの洗練はこちらもほうがわずかに上に感じました。音質印象かも知れません。

 トマス・タリスの主題による幻想曲は編成が凄い!典型的な弦楽オーケストラから成る第1アンサンブル、1パートにつき譜面台1台(つまり2人)ずつの小編成による第2アンサンブル(第1アンサンブルから離れた空間に置くのが望ましい・・・)+弦楽四重奏(Wikiより引用)。遠い視線に深呼吸するような深遠な旋律、サウンド、風情は旧き佳き英国バロック、複雑な弦楽の絡み合いはオルガンの響きを連想させ、じつは編成を再確認したほど。横流れのリズムに纏綿まったりと舐め回すようなバルビローリ・サウンドの真骨頂はたっぷりセクシーであります。(16:13)

 ラスト、誰でも知っているグリーンスリーヴスによる幻想曲。編成は弦楽+フルート(ヴァイオリン・ソロ代替可/バーンスタインがその版採用)+ハープ、懐かしい主旋律は英国の古謡とのこと。切り詰められた編成にフルートとハープの色彩は浮き立って効果的、表現は上記とまったく同じ、入念な描き込み。(4:40)やや霞が掛かったような曖昧な音質も、かえって作品風情に似合っているように感じたものです。(2021年10月16日)

SERAPHIM TOCE-8921 1962年録音 Vaughan Williams

トマス・タリスの主題による幻想曲
グリーンスリーヴスによる幻想曲

シンフォニア・オブ・ロンドン

Elgar

「エニグマ」変奏曲
「威風堂々」第1番

ジョン・バルビローリ/フィルハーモニア管弦楽団

SERAPHIM TOCE-8921 1962年録音 (中古)315円

 2006年11月13日、東京にて待望の入手を果たしたもの。少々の出費を厭わなければどこでも買えそうなものだけれど、この価格はワタシを待っていて下さった、と確信を得るのに充分な説得力がありました。「タリス」「グリーンスリーヴス」はLP時代の愛聴盤であり、オーケストラはロンドンの録音専用団体らしい。録音があまり鮮明ではないことは、その時から知っておりました。それがどうしたっ!

 「グリーンスリーヴス」との出会いは小学生の時、アーサー・フィードラー/ボストン・ポップス管弦楽団(17cmLP)の演奏でした。おそらくは、ワタシの英国音楽嗜好を方向付けた衝撃だったのでしょう。「タリス」のほうはその魅力をそのまま拡大延長して、タップリ楽しませて下さる音楽なんです。いったい棚中に何種の録音が存在するのか・・・数えたことさえないお気に入り。

 編成が凄くて、大規模弦楽合奏+9名の小アンサンブル+弦楽四重奏という凝りに凝った、複雑なもの。響きは淡彩であり、激しいリズムも存在しないが、噎せ返るような浪漫に充ちて、”Mahler !?”を連想させるのは、バルビローリの纏綿甘美な”泣き”の表現故でしょうか。たっぷり横流れの粘着質+ゆるゆるな歌は、まさに”バルビローリ節”と呼ぶに相応しい。万葉集に於ける長歌ですな。それを要約してちょっと色付け(フルートとハープ)し、シンプルに仕上げた短歌が「グリーンスリーヴス」と勝手に理解しております。

 シンフォニア・オブ・ロンドン起用の理由はわかりません。ふだんお付き合いしている、ロンドンのオーケストラのメンバーがけっこう参加しているのかも。特別な固有の個性ではなく、バルビローリ一色に染まっております。どんな演奏でも(よほど酷くない限り)文句なく感動できる音楽だけれど、これは別格なる”クサい”存在〜文句あるか。(ない)蛇足だけれど、バルビローリには「グリーンスリーヴス」(1948年)/「タリス」(1946年)いずれもハレ管弦楽団による旧録音が存在します。(DUTTON CDSJB 1022)

 「エニグマ」のCDも最近貯まってまいりました。その十数種では納まらない。個性が違っていて各々愉しめるものです。バルビローリはいつものように、切迫感のないズルズルと引きずった表現であり、とことん甘く、切なく、たっぷりと(クサい)歌は誰にもマネできぬ個性でしょう。それが作品に似合うか、聴衆の好みにフィットするか、一発博打の世界。ほとんど陶酔の世界であって、ワタシは切なくも酔いしれました。ボウルトだって大好きだけれど、バルビローリ円熟の表現である「ニムロッド」こそ英国黄昏の茜色の夕空表現なんです。

 音質は前2曲より少々改善されております・・・が、先日、ダイニングのエエ加減コンポでぼんやり聴いていたら、あまり推奨できぬ音質であったことに気付きました。

 ラスト「威風堂々」は収録なくても良いくらいだけれど、「英国音楽の一夜」コンサートのアンコール!ブラーヴォ!な賑々しさであります。ワタシにとって「無人島の一枚」也。

(2008年3月14日)


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written by wabisuke hayashi