Rachmaninov ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18
(アシュケナージ(p)/コンドラシン/モスクワ・フィル)


FIC ANC-166
Rachmaninov

ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18

アシュケナージ(p)/コンドラシン/モスクワ・フィルハーモニー(1963年)

前奏曲
第12番ハ長調/第13番 変ロ短調/第3番 変ロ長調/第6番ト短調/第8番ハ短調

リヒテル(p)(1959年)

FIC ANC-166 英DECCA/DG録音  中古250円

 毎度のことではあるが、駅売海賊盤であります。LP時代の大ベストセラーであって、Tchaikovskyのピアノ協奏曲第1番(マゼール/ロンドン交響楽団)との組み合わせでした。ワタシはこの曲は大好きでして、出会いは小学生時代、リヒテル/ザンデルリンク/レニングラード・フィル(1959年)の深淵かつ重厚濃密なものだったはず。アシュケナージは再録音、再々録音があって、プレヴィン/ロンドン響との録音は既にサイトに掲載済(再コメント必要ですね)。知名度低いペナリオ盤だってありまっせ。これはずいぶんと明るく、華やかな演奏だった。ああ、ヴァーシャリ盤だって繊細で洗練されたエエ演奏でしたね・・・ほか、シリル・スミスという往年の歴史的録音もありましたね。

 大好きな作品は、どんな演奏を聴いても「ああ、エエなぁ」と思うだけでコメント難しいものです。(これを”無条件幸福”と呼ぶ)このアシュケナージ26歳若き日の録音だって、何度聴いてもそれ以上の感想が浮かばない・・・で、プレヴィン/ロンドン響との1970年録音を再度、念のため確認すると・・・なるほど!微細迄入念入魂なプレヴィンのバックが、驚くべき感情を込めていて、RACHNANINOVに対するこだわり、入れ込みをひしひしと感じさせます。アシュケナージも引きずられるように、(けっして大仰なる詠嘆ではないが)微に入り細を穿つピアノひとつひとつ音の粒が、磨き上げられ、味付けが繊細・・・

 それに対して、こちらの演奏の若々しく、誠実なピアノ。これは好みの世界だけど、まずコンドラシン/モスクワ・フィルのバックが極上でしょう。”ロシア風”という先入観から連想されるような、泥臭く、重苦しい響きではない。遣る瀬なくも甘く、暗鬱な雰囲気が漂います。幽愁、とでも呼ぶべき濃厚な味わいが根底があって、コンドラシンは基本西欧的なやや洗練された方向を示すけれど、そこはやはりロシアのオーケストラ〜ゆったり粘着質で、とろりとした大河の流れを連想させて感銘深い。もちろん迫力も充分。(録音優秀なこともある)

 アシュケナージの手は小さいそうで、冒頭の鐘を思わせる和音が分散されている・・・んなことはともかく、素直で、明快・ていねいなタッチが清潔で好ましい。彼の後の録音やら、リヒテルの録音などと比べると、ほんのり甘く、優しくて、ピアノ音色が素直に美しい。作りすぎた表現ではなく、初々しい含羞を含みながら、むしろ表現としては淡々と自然体なのに、キラキラするような華がある。清涼なる陶酔があります。(第2楽章が白眉)

 技巧的にはまったく問題ないが、いかにも切れ味ありまっせ、的リキみも、表層的な技巧に走って”流した”ようなところも皆無。終楽章は、むしろ抑制が利いていて、大仰なる見せ場を作るより、粛々と甘美な世界をすました表情で、リリカルにピークを迎えました。ラスト、シンバルの乾いた爆発音は聴きものですね。英DECCA録音の精華か、コンドラシン渾身の一撃(実際は数発)なのか・・・おそらく後者なのでしょう。

 リヒテルの前奏曲フィル・アップ(DG録音)は、駅売り名曲海賊盤ならではのもの。ワタシは愛する音楽に5段階評価とか、優劣を付ける習慣を持たないが、この強烈な集中力と迫力、有無を言わせぬ強靱なる技巧には驚嘆するばかり。先の協奏曲との違和感は相当でして、「ほんのり甘く、優しくて、ピアノ音色が素直」/「千変万化する表情の深遠さと個性大爆発!貫禄」・・・ワタシはリヒテル大好きです。鈍く深淵に輝く、硬質なピアノに魅了されます。どきどき興奮と昂揚と溜息が待っております。

(2005年9月16日)

 


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written by wabisuke hayashi