Mahler 交響曲第3番ニ短調
(ショルティ/ロンドン交響楽団1968年)
Mahler
交響曲第3番ニ短調
ジョージ・ショルティ/ロンドン交響楽団/アンブロジアン・シンガーズ/ワンズワース小学校少年合唱団/ヘレン・ワッツ(a)(1968年)
さすらう若人の歌
イヴォンヌ・ミントン(ms)ジョージ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1979年)
FIC FCD-314-315(英DECCAの海賊盤) 2枚組500円
21世紀は廉価盤の時代であって、駅売海賊盤の存在意義はほとんどなくなっております。登場した1990年頃とほとんど価格相場が変わらないから、場末のホームセンター売れ残りでは正規盤と逆転現象が発生している・・・ワタシも随分と処分(100円ほどならオークションでも売れることもある)して、残りは200枚ほどとなりました。それでもBOOK・OFFにて@250登場すれば(ものによるが)購入することも希にあります。これは2007年2月東京にて入手、FIC初期のものであって「MADE IN JAPAN」(CD本体)となっております。ま、道義的問題自覚しつつ、ちゃんと聴けるものを捨てられない、もったいない、という気持ちが優先して、せめてちゃんと拝聴してあげましょう、ということで、ご勘弁下さい。
壱時間半、6楽章に及ぶ大作であり、全曲続けて聴いて飽きない、平易でわかりやすい旋律満載のお気に入り名曲。夏になると聴きたくなるんです。ショルティのMahler は世評高いが、ワタシは彼の佳き聴き手ではありません。しかも第1番(1983年)以外は”駅売海賊盤”で揃えている!という罰当たり者(第9番は新旧録音とも未入手未聴/でも、累計金額的に正規ボックスの方が安い)。いつの日か正規全集入手しましょう。この旧録音の方が貴重かな?
購入時のコメントは 驚くべきほどクリアで強面強靭で、しかも裏表なく明るい!演奏であります。出足、元音源上の問題か少々割れるが、その後はまったく問題なし。オンマイクで残響やや少な目、奥行き異常(ティンパニが眼前で鳴る!)不自然ではあるが、とにかく鮮明な音質であります。晦渋で狂気を感じさせるMahler ・・・ではなく、ひたすら健康的明快なる世界。あとは”嗜好”の問題でしょう。
・・・なるほど。久々の聴取は(安物ダイニング・コンポにても)目が覚めるほど!音質がクリア!ティンパニの低音明快!ということです。自然ではないかも知れないが、安物ミニコンポでは効果絶大。シカゴ交響楽団との録音(1982年)は未聴だけれど、ロンドン交響楽団の技量切れ味集中力抜群でして、強引さはやや控え目な印象となりました。わかりやすい、馴染みやすい明快演奏だと思います。こういった作品は、あまり歴史的録音!とか、マニアックで貴重な録音!みたいなものにこだわらないほうがよろしいに決まっている。
「あとは”嗜好”の問題でしょう」〜最近、ショルティの第6番(1970年)に唖然としたばかり。まさに”体育会系(ノーミソは筋肉でできている!)”系演奏の極北。同じオーケストラなのに、この明るさ、こだわりのなさ。おそらくナマで聴けば、圧巻の迫力と技量でたっぷり楽しませて下さることでしょう。オーケストラの技量は表層をなでるような感触であり、明快な音質に支えられ「悲劇」はどこにも存在しません。困った演奏だ・・・(「音楽日誌」より)
お気に入りはジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団(1969年マンチェスター/フリー・トレード・ホール・ライヴ)であって、縦の線を少々犠牲にしても、纏綿悠々と歌うスタイルがワタシの嗜好であって、こんなメルヘンにはぴたり!だと思うんです。
でもね、この作品の場合”濃厚に、情念を感じさせる旋律の歌に溢れて、劇的であり、重苦しく”(ワタシのシノーポリ評)ある必要はないと思います。長大(32:53)なる第1楽章も労働者の祭典「メーデー」の行進風で、表情も明るく、勇壮雄弁で元気良く!これでよろしい。朗々たるホルン絶好調、打楽器のキレ・迫力最高。第2楽章「メヌエット」だって、テンション高く(途中やや走り気味ながら)、良く歌って”明快”。穏やかで優しい楽章だけれど(ショルティには珍しく)違和感はない。こんな楽章にこそ、アンサンブルの真価が表出しますから。木管のアンサンブルは唖然とするほど優秀。
第3楽章「スケルツォ」には剽軽なる味わいと、巨魁な怪しさが同居します。”巨魁な怪しさ”は健康的に、輝かしく表現され、この場合違和感はありません。とにかくアンサンブルが素晴らしくて、ぴたり!と縦線が合う。静謐なる第4楽章にヘレン・ワッツ登場。ショルティは”薄もやの掛かったような、曖昧な”表現を嫌います。深いホルンと木管の絡み、そして静かな弦がさわさわと「ツァラツゥストラの輪唱」を支えます。この辺り、夏の朝を連想させる情景でしょう。
(ここでCD壱枚目終了)
第5楽章の少年合唱に心洗われます。初めて聴いたときから。「ビム・バム」と汚れなきこども達の(鐘の音を模した)声に、アルトと女声合唱は不安げに「3人の天使は歌う」で絡みます。トランペットが軽快に、存在を主張します。リズムは明快そのもの。終楽章、弦の詠嘆は第9番と双璧の感動でしょう。ショルティは雰囲気ではなく、あくまで正確なフレージングで作品の味わいを生かします。明快入念なる表情付けに、ここでは反発を感じません。そして全編に活躍する、豪快なホルン参入。
ラスト、ちょっと弦が激昂し過ぎ(元気良すぎ)かな?ティンパニ、金管が盛り上げ(過ぎ)ちゃうかな?ま、全曲を締め括るに相応しい、きりりと雄弁なフィナーレでありました。音が佳いのは百難隠す。全編聴き通すのがツラくはない。
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「さすらう若人の歌」は、ショルティがシカゴ交響楽団に赴任した初期の録音となります。わずか2年後。ミントンの深みのある声ともかく、早くも硬派で急いたサウンドが前者・ロンドン響との違い明白。あまりに優秀なシカゴ響故、ショルティの指示が正確に表出される(つまり、音が安易に出てしまう?)ことになるのでしょう。明らかにオーケストラは華やかな技量を誇って、馴染みのショルティ・サンド徹底されております。
あとは好みの問題ですから。これで500円だったら”買い”でしょう。許して。
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