Mahler 交響曲第3番ニ短調(アブラヴァネル/ユタ響)
交響曲第3番ニ短調 アブラヴァネル/ユタ交響楽団/クルースコス(con)/ユタ市民大学合唱団/女声合唱団/花崗岩学区少年合唱団 VANGUARD 08 4006 72 1974年録音 11枚組5,280円で購入した(中古)ウチの二枚 先日サイト検索していたら偶然、アブラヴァネルの「Sibelius 全集」を「アマ・オーケストラに毛が生えた程度の技量」というコメントを発見しました。人生、いろいろだなぁ。その方はSibelius に(例えば)ヤンソンス盤、もしくはカラヤン盤(EMI)みたいな強烈なるテンションと、アンサンブルの集中力を求めていたんでしょうか。音楽の好みや、感じ方は人それぞれです。 ワタシは日々廉価なCDを探求しているが、出会いとはオツなものでして、このアブラヴァネル全集も2003年4月に広島の中古屋で見掛け、BBS上で相談して「買うべし」とのご神託有、即購入。その後一年間以上、あちこちお店を廻ってもどこにも見掛けません。この全集はクーベリックとはまったく別な意味での「素朴」な演奏が揃っていると思います。茫洋として、少々掴みどころも屈託もない、こだわりもない方向か。既に第9番については、少々コメントしました。 30分を越える長大なる第1楽章。楽しげなる行進曲風であり、ホルンを中心に気持ちよい金管の咆哮が楽しめます。行進曲だからノリは大切ですよ。なんせ長丁場を厭きさせないことも大切ですし。豊かで余裕のオーケストラの響きは、やはりアマ・オーケストラでは出せない味でしょう。「素朴」な味わい〜それはひとつの個性だけれど、旋律の歌わせ方が洗練されないというか、正直「田舎臭い」(独逸南部の、じゃなくて亜米利加中西部の)演奏なんです。(それがダメ、ということじゃないですよ) 「ノリ」という点では少々問題有か?時々、テンションが続かなくて間延びしちゃうことがありました。テンポを揺らせて個性的な場面は数々存在するが、温微的というか、どうもアンサンブルに締まりと緊張感が足りない。各パート、ていねいに演奏してるが、自主的な細かいニュアンスの集積、という点でアメリカのオーケストラには良き伝統が積み重なっていないのだと思います。 第2/3楽章は、そのややノンビリとした味わいが、牧歌的な雰囲気を醸し出して成功しております。弦も管(金管は迫力有)も良く鳴っているし、明快健全なる表現。急いたり、リキんだり、は皆無だけれど、残念ながらカッコ良くはない。Mahler に必須な、時に「陰」やら「闇」を感じさせる部分、それはほとんど存在しなくて健康的です。例のポストホルン・ソロは、レーグナー盤に負けない大自然を感じさせる、奥行きある出色の出来となっております。 第4楽章の女声ソロ、絡み合う粗野なオーボエのしっとり静かな雰囲気は上出来。ホルンの奥行きも、楚々としたヴァイオリン・ソロも上々。第5楽章の女声とこども達の歌声は天上の響きですね。ワタシはこの楽章が大好きです。無心で遊ぶ、こども達の姿を連想します。 ワタシはこの作品の最終楽章の静謐なる弦の調べを拝聴するたび、至福の世界へ連れて行かれるんです。これは録音の関係かも知れませんが、厚みある弦の集積としてではなく、むしろ少人数で演奏しているかのような錯覚に囚われます。表現は雄弁ではなく、あくまで素朴さ、木訥さを失わない。ホルンのチカラ強い奥行きは特筆すべきでしょう。 敬虔なる感謝の気持ちに溢れ、誠実なる弦も泣きます。これは正直な喜びの涙でしょう。やがてすべてのパートが参加し、大団円を迎える満足度は相当なものです。正直、長大なる第1楽章に先行き不安を覚えたが、後半に至るほど満足度は高まりました。ゆったり、まったり、緩いMahler の存在も悪くない。総計98分、そんな余裕を楽しみましょう。(2004年9月3日)
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