Mahler 交響曲第3番ニ短調(レーグナー/ベルリン放送交響楽団)


DEUTSCHE SHCALLPLATTEN  TKCC-15103
Mahler

交響曲第3番ニ短調(1983年録音)
交響曲第6番イ短調(1981年録音)

レーグナー/ベルリン放送交響楽団(旧東)/ベルリン放送少年少女合唱団/ベルリン放送女声合唱団
ラッペ(a)ギュトラー(ポストホルン)ベルタ(v)

DEUTSCHE SHCALLPLATTEN  TKCC-15103 3枚組1,600円(中古)にて購入

 Mahler もBrucknerも大好きだけれど、自分自身にとっていささか樹海に迷い込んだようでもあり、いずれ「ああ、コレ名曲だなぁ、美しいなぁ」という感想しか出てこない状態。このCDも1999年に(今は亡き)ワルツ堂で購入していて、なんども聴いているのに一行たりとも書き出せなくて既に足掛け3年経ちました。

 思い出すのは、小学生の時の読書感想文ね。詳細忘れちゃったけど、本を読んで読書感想文を出すと先生が「努力賞」(小さい賞状みたいなもの。これが欲しかった。偽造したバカな同級生もいたっけ)をくれるのね。で、バリバリ読みました。読書感想文のパターンを作り上げてね、つまり、一番面白かったところを集中的に表現する〜コレ、ん十年経ったいまでも変わらない。そうだ、これで行きまっしょい。

 音楽(CD)の聴き方にはいろいろ有。次々と同曲異演を聴き比べる方法。つまり、違い、個性を相対的に発見する方法。一方、そのCDにのみ集中して自分なりの「発見」を模索する方法〜ここ最近、これです。もっぱら。とにかく、ひたすらなんども聴く。朝聴いて、通勤時に聴いて、夜聴く。翌日も聴く。しばらく聴き続ける。すると見えてくるものがある。で、このCDも薄ボンヤリと光が見えてきたような・・・・そんな気が。

 Mahler の第3番って、90分以上掛かる大曲中の大曲です。とにかく長い。長いが、ワタシはこの曲に長さを感じたことはないんです。これほど安寧に充ちて、わかりやすくて、牧歌的で、やすらぎを感じさせてくださる曲も滅多に存在しない。題して「夏の田園交響曲」(ワタシ一部命名)レーグナー一連のBruckner録音と、ほぼ同時期、同一オーケストラ、ながら雰囲気が異なる(しっとりとオーケストラの響きが溶け合って、いっそうまろやか)なのは録音会場(こちらベルリン・イエス・キリスト教会)故でしょうか。(国内盤故のマスタリング、プレス技術のせいもあるかも)

 Brucknerの躍動する速いテンポも魅力(テンポの揺れもかなり)だけれど、こちらの清寧ぶりはいかがでしょうか。なんやらすべてが欧州の深い森での出来事のように、深遠なる自然の声が聞こえるようです。一番面白かったところを集中的に表現〜第3楽章「急がずに」に於けるポストホルンの気が遠くなるような、奥床しい響き。どことはわからぬが、遠くから響く森の精霊の声ですね。名人ギュトラーの担当。これほど美しい楽章は他では記憶がない。

 第1楽章の8本のホルン・ユニゾンぶちかまし〜これは印象的ですよね。でも、行進曲風の楽しい雰囲気が延々と30分ほど続いてくださるのが嬉しい。この時期のベルリン放響(旧東)はある意味全盛期だったのでしょうか。この厚み、余裕、重心の低さ、奥行き、スケール、個々のパートに特別なる色気はない(例外はギュトラー)かもしれないが、バランスがヨロシくて、まろやかに溶け合って自然体〜というのは先ほど述べましたね。技術的にはなんらの問題なし。ベルリン放響って、こんなに美しかったのか。

 Brucknerで一部見られた、落ち着きのなさ、ややヒステリックな絶叫(あくまで、やや)がまったく見られません。ひたすら安らいで、微笑みがありました。第4楽章でアルト・ソロが神秘的に入って、それに遠くのホルン、弦が静かに絡みます。粗野な音色はオーボエの特殊な奏法ですか?あの、ズリ上げるような不思議な音。ヴァイオリン・ソロも切ないな。息を潜めて聴くべき、静謐なる楽章、そして演奏。

 第5楽章〜女声と少年少女合唱団は天使の歌声ですよね。ココ、初めて聴いた人でも好きになる箇所でしょう。チューブラーベルは「幸せの鐘」だね。「これクリスマスの歌だよ」って、騙しても充分通用するでしょ。アルトが、そして低弦が絡んで、木管が歌うと幻想が深まります。金管が静かに進出すると、不安感も募りました。それがこども達の歌声で、すべて解決されわずか4分の夢が終わりました。

 終楽章「ゆるやかに、おだやかに、感情を込めて」〜白眉。静謐。長い、なが〜い子守歌を聴いているような安らぎに満たされました。弦は地味だけれどこれは単なる「美しさ」の水準ではない、目を閉じてこの透明な世界を堪能すべき世界。やがてオーボエが、ホルンが、いつの間にか参加し、少しずつ音色が多彩に広がります。この素晴らしき幸福感がいつまでも続きますように〜そんな祈りに充ちた暖かい透明感がありました。

 なんと、控え目な幸福!細部まで入魂の思いが充満するアンサンブル。透明なる響き。こみ上げる懐かしい想い出〜これはレーグナー/ベルリン放響の記念碑的演奏と確信しました。執筆までに、のべ3度拝聴。(第6番は、またいずれかの機会に)

(2003年1月17日)


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written by wabisuke hayashi