Mahler 交響曲第9番ニ短調(アブラヴァネル/ユタ響)
交響曲第9番ニ短調 アブラヴァネル/ユタ交響楽団 VANGUARD 08 4012 72 (p)1974 11枚組5,280円で購入した(中古)ウチの二枚 VANGUARDやEVERESTは1960年〜70年あたりの注目すべき演奏、録音水準で狙い目の音源でしょう。もともとあまり廉価で出なかったのと、そろそろ店頭在庫も怪しくなりつつ今日この頃、中古で見かければ「買い」と思います。ネーム・ヴァリュー的に弱いし、もともとの価格もそう安いものではないから、やや片隅に追いやられた全種セットでしょうか。アブラヴァネルのことはワタシのサイト「Sibelius 全集」参照のこと。 Mahler の傑作、交響曲第9番は誰の演奏ということもなく、おそらく初めて聴いたときからその世界に埋没できました。FMで聴いたワルター/コロンビア響がおそらく初体験、いやLPでレオポルド・ルートヴィヒのを持っていたかな?やがてCD全集で購入したクーベリック盤、有名なるワルター/ウィーン・フィルの歴史的録音も、テンシュテットも、マデルナも、ハイティンクもおよそ色合いは違っても、各々怒濤の感動がちゃんとあるもの。いやムント盤には少々文句を付けたか。 ココロの中に刺さるトゲだとか、甘い胸の痛み、懊悩が溢れこぼれ出るような作品。生と死の葛藤〜希望に満ちた「生のテーマ」を、「死のテーマ」が断固として否定する、その衝撃。さてアブラヴァネルや如何?「オーケストラが弱い」とのBBS書き込みも有。いざ、流れてきた音楽や如何。 これ、結論的にいうと「癒し系Mahler 」だね。オーケストラはとても美しいと思いました。よく鳴りますね。ユタ響って、財政的に豊かで良い(=高い)楽器使っていたらしいですよ。豊かでね、まったりノンビリした歌い口。これはこれで朗々と、ていねいに旋律を表現しているんだけど、深刻さ皆無。緊張感が足りない、と評されてもおかしくない。 旋律の節回しににタメがないんです。リズムに切迫感とか躍動感が足りない、というか、ほとんど存在しない。結果、健康的でまっとうなMahler ができあがりました。Mahler の音楽ってセクシーじゃないですか(その辺りがBrucknerと違って女性にも人気あるところか)。ところがモルモン教総本山のオーケストラに掛かると、いけませんセクシーなんて、官能的?〜罪ですよ。健全路線です。明日の日本を担う青少年にもお勧め・・・的演奏か。 で、これはMahler にあるまじきヘロ演奏かというと、そうでもない。ああ、音楽ってこんなにたっぷりして楽しいよ、と思わせる演奏で、いつもいつも「人生の懊悩」を眉間のシワに刻まなくてもいいでしょ?汗水激情の果て的演奏とか、超現代機能的技術論完璧演奏とも違う「ワシゃ、そうバリバリ働かんでもゆったり暮らしていけるけんね」的演奏が、この暗黒の21世紀を癒します。 なんか、Mahler の美しい旋律を久々に堪能した、第9番ってこんなに素敵な旋律の連続だったんだね、といった満足感がありました。録音も極上です。交響曲第10番「アダージョ」も同様の演奏。(2003年5月29日)
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