Faure 組曲「ペレアスとメリサンド」/歌劇「ペネロープ」序曲/
組曲「マスクとベルガマスク」
(エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団)


FIC(英DECCA録音の海賊盤) ANC-155
Faure

組曲「ペレアスとメリサンド」
歌劇「ペネロープ」序曲
組曲「マスクとベルガマスク」

Debussy

小組曲(Bu"sser編)

エルネスト・アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団(1961年)

FIC(英DECCA録音の海賊盤) ANC-155 (おそらく)1,000円で購入

 このCDともずいぶんと長い付き合いとなり、(駅売海賊盤だけど)お気に入りのCDであります。正規盤でも現役なんですね。時代は移って、正規盤も海賊盤も同じ価格となってしまった・・・やや作り物っぽい音質だけれど、たった今現在21世紀の耳で聴いても広がりと雰囲気タップリの音質であり、そして演奏であります。

 日本では独墺系の作品演奏が長く人気であったせいか、「重厚長大」「厳密厳格」「一糸乱れぬ・・・」的演奏を称揚する傾向があるみたいですね。アンセルメはステレオ初期に、主に音質で高く評価されたものです。でも、「ナマではヘロヘロのアンサンブル」「録音のマジック」との酷評も散見しました。でもね、アンセルメの魅力って、きっちり縦線が合うアンサンブルに存在するのではないと思いますよ。

 Faureの旋律は、くすんだように哀しく、甘美で聴き手を痺れさせます。それはレクイエムでも、夜想曲でも、ヴァイオリン・ソナタでも、室内楽でも変わりはない。「ペレアス」の「前奏曲」が始まると、まるで、”馴染みの泣ける映画”開幕のような、そんな嬉しい錯覚を想起させます。

 ふわふわと柔らかく、ゆらゆらと軽く、薄もやが掛かって冷ややかなる響き。「シシリエンヌ」のフルートはあくまで切なくて、甘やかに妖しいヴィヴラート、独逸系の背筋が伸びたきっちりとした世界とは別種なものであります。この味は、そんな生真面目強靱なる姿勢では出せないものなんです。上手すぎない、この不思議なる味わいは、現代では絶滅してしまったのか。

 「ペネロープ」って、どんなオペラなんでしょうね。現代の歌劇場では少ないレパートリーかな?悩ましげなる悲劇の幕開けを予感させる旋律。(でも、筋書きは”悲劇”じゃないんですね)屈託のない明るいホルンやら、トランペットが幽玄に響いて個性的だと思います。「マスクとベルガマスク」は、アマオケで数回楽しんだ作品でして、きっと編成が小さかったり、演奏技術的にはシンプルなんでしょう。

 劇音楽らしいけれど、軽快明快愉快なる序曲はときに含羞を含み、メヌエットは牧歌的であり、ガヴォットは毅然としてバロック的な味わいもある。パストラールは夢見るように繊細であります。

 このCDには、Debussyの「小組曲」が収録されます。これはもともとピアノ4手の作品を管弦楽編曲したものでして、ワタシの大のお気に入り・・・まるでメルヘン。「小舟にて」は、水もを滑るように流れていく姿がフルートの気怠い音色で開始されました。「行列」は妖精の行進ですか?いつものフルートに薄っぺらいオーボエの音色、暖かいホルンが楽しげに木霊しました。

 やや不安げに囁きあう「メヌエット」は胸が痛むほど懐かしい旋律であり、さわさわとした弦がまるで衣擦れであります。「バレエ」はこども達が楽しげに踊る風でもあり、そんな楽しかった想い出をちょっぴり切なく回想しているようでもあります。

 FaureもDebussyも、ノスタルジックでセンチメンタを満載したCD一枚分。Beethoven の交響曲とは正反対のこんな世界を愛します。 

(2006年9月9日)

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written by wabisuke hayashi