Elgar 交響曲第1番 変イ長調 作品55
(ジョージ・ハースト/BBCフィルハーモニック)


NAXOS 8.550634 Elgar

帝国行進曲 作品32
交響曲第1番 変イ長調 作品55

ジョージ・ハースト/BBCフィルハーモニック

NAXOS 8.550635 1992年録音  880円

 数年前、交響曲第2番(エドワード・ダウンズ)の記事を載せておりました。その後、益々廉価盤の時代は深化し、ワタシは数種の交響曲を入手いたしました。そして一番最初に購入したジョージ・ハースト(1926年生まれのヴェテラン/未だ存命ですか?)盤の存在をすっかり失念・・・ある日、なにかの検索をしていたら偶然「2ちゃんねる」のスレッドが出現・・・曰く「NAXOSのElgarは全部クソ!」〜例の如しの罵倒合戦に辟易〜で、思い出したのも何年ぶりか?記憶もない。楽しみに再聴いたしました。

 まず、プロムスでお馴染み「帝国行進曲」〜わずか4分ほどの「威風堂々」系作品だけれど、題名から類推される(日本だったら国威発揚右翼系「軍艦マーチ」)厳つさはなくて、そこは英国紳士の国、穏健で優しい旋律が支配して、どんちゃん型行進曲ではない含羞有。これは、ハーストの表現方向かも知れません。

 ジョージ・ハーストはたしかBBCフィル(マンチェスター)のシェフを務めていたはずで、出会ったCDから類推すると知名度より、ずっと優秀なオケだと思うんです。交響曲の印象は、まず録音が(第2番同様)自然な奥行き感、残響がとてもよろしい。オケはブルー系のサウンドにてアンサンブルは優秀。「2ちゃんねる」氏によると「クソ」なんだそうだけれど、彼はElgarになにを求めたのでしょうか。野太く咆哮する粗野な金管か、盤石に雄弁なる構成か、激しく揺れ動く浪漫的ノーコー演奏か?いずれ、英国音楽表現には縁の薄いものじゃないか。

 ゆったりと盤石の歩みで始まる第1楽章「アンダンテ」〜そして「アレグロ」へ。落ち着いた味わい、クリアに爆発する金管にも不満はない。表現がやや淡彩淡泊に過ぎて、貫禄のタメが足りないと感じるのは、バルビローリの甘美なる洗礼故でしょう。いずれ細部迄明快クリアであり、穏健かつ力強い世界がしっかりと描かれて、どこが「クソ」なのか。立派な集中力あるアンサンブルでした。

 第2楽章「アレグロ」はスケルツォ楽章なんだろうが、勇壮決然たる旋律がカッコ良い。過度にリズムのキレや金管を強調しないバランス感覚も抜群。第3楽章「アダージョ」は全曲中の白眉であって、ここ最近の緩徐楽章嗜好もあってワタシは陶然といたしました。まさに「人生の美しい黄昏」〜清涼なる弦の静謐かつニュアンスたっぷりな歌は絶品!(これを「クソ」としか聴けない人の不幸を哀しむ)後ろ向きだけれど、感傷にベタ付かない。大仰に感情を剥き出しにしない。

 終楽章は「レント」(第3楽章のテンポと静謐をそのまま引き継いで、ずいぶんと遅い)〜「アレグロ」のクライマックスへ。このテンポ対比はお見事、満を持した金管+ティンパニの迫力は見事だけれど、サウンドはあくまでクリアなまま。スマートで、強面厳つい表現に至らない。英国音楽は含羞抑制が基本なんですよ。テンポは微妙に揺れるが、自然であり、第1楽章が万感のエモーションを以て再現されると感極まりました。

(2009年7月10日) 

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written by wabisuke hayashi