Debussy 牧神の午後への前奏曲(ベルトランド/パリ放響)
交響的素描「海」(パンテルリ/スラヴォニア・フィル)+ピアノ作品集(シュマルフス)


デ・アゴスティーニ LC7709。いわゆるPILZ音源。100円 Debussy

牧神の午後への前奏曲

ベルトランド/パリ放送交響楽団

交響的素描「海」

パンテルリ/スラヴォニア・フィルハーモニー(ホルヴァート/オーストリア放響)

シランクス

コトノフスカ(fl)

月の光/子どもの領分/二つのアラベスク

シマルフス(p)

雨の庭

レーゼル(p)

デ・アゴスティーニ LC7709。いわゆるPILZ音源。中古100円

 「牧神」と「シランクス」は以前、zyxレーベルで所有していた音源(既に売り払った)でして、少々懐かしい。演奏はそうへんなものでもなくて、素朴でややオーケストラが味わい薄いくらい。「海」は当然幽霊変名(なぜそんなことするの?)演奏家でして、ホルヴァート/オーストリア放響のものとぴたり同じタイミングです。つまりダブり買いだけれど、色気はないがきちんとしたアンサンブルの好演でしたね。シュマルフスは幽霊らしいが、なぜか「雨の庭」のみレーゼル登場〜これはぼんやり聴いていても、ここのみ「!」状態でしっかり芯のあるピアノが楽しめました。全体として音質も悪くないし、入門用としては良くできた一枚でしょう。

 ・・・これは数年前、購入時のコメントです。それからわずか2年、「10枚組1,980円」的相場が市場を席巻して、聴き手(=ワタシ)の意識を変えつつあります。但し、よろしからぬ安易なほうに。ワタシはこのような”怪しげ音源”に頼らなくても、定評ある演奏を安価で楽しめる状況となっております。しかし、音楽にはいつも虚心に向かい合わないと、という思いで取り出した一枚。「海」の実演奏者はホルヴァートだったのか・・・って、自分で確認してるじゃないの。以前に。

 「牧神」はマルケヴィッチではないですね。タイミングが異なる(やや長い)し、オーケストラの響きも少々異なります(音質はこちらのほうがずっと良好)。いえいえ、そんなマニアック的(「真の演奏者誰だ!」的)ねじ曲がった”楽しみ方”ではなく、音楽そのものをちゃんと楽しまないと。コレ、よくできたCDだと思います。代表的な管弦楽作品とピアノ曲、これに日本の幽玄漂う「シランクス」・・・上手いもんです。これに声楽+室内楽でもあれば・・・いえいえ贅沢言いますまい、CD一枚だし、100円だし。

 パリ放送交響楽団(ラシオ・シンフォニー)も、ベルトランド(以前所有していたCDではロイク。ここではロイオ表記)も実在なのでしょうか。(ジャン・フルネのBerliozのレクイエムは時代が違いますね。ベルトランドは他に「カルメン」前奏曲の録音が存在する)「牧神」はオーケストラの素の実力がモロに出る、というかフルートの深み、弱音で響き渡る弦のニュアンスと奥行き、作品が作品だけに”雄弁に煽ればGood!”ということでもないでしょ。さっぱり清涼系で素っ気ないですか?作品を楽しむには、充分なる音質と雰囲気を感じましたが。

 「海」は以前通りの印象に尽きます。「オーケストラの響きに『香り』みたいなものはありませんが、繊細で細部まで神経の行き届いた指揮ぶり」「地味ながら意外と良い音で鳴っていますね。弦も透明。オーソドックスで、芝居じみた表現とは無縁、ゆったりめで余裕のテンポ。バランスのとれた美しい演奏と思います」〜ワタシはブーレーズの旧盤を別格として、この作品に細部、あまり大きな思い入れはないんです。ごめんなさい。嫌いな作品じゃないですよ、もちろん。音質も良好。

 侘び寂びと儚さ漂う「シランクス」・・・この作品(わずか2分強)を聴いていると、”能”を連想します。まさに東洋・日本の伝統が響き渡りませんか。ここから収録はピアノ作品となります。ペーター・シュマルフスはPILZが創作したピアニストではなく実在、との情報有。(BRILLIANTにてSmetanaの作品がCD化されている。BELLAMUSICAにTchaikovskyのソナタ集がある)使用楽器はベーゼンドルファーらしく、1曲のみ「雨の庭」を担当するペーター・レーゼルとの印象の違い(切れ味と重み)は使用楽器(おそらくスタインウェイ)によるものでしょう。

 流麗華麗なテクニックを表出する方向ではなく、細部の揺れとか微妙な味付けを旨としているようで、タッチが曖昧というか弱さも感じます。でも、Debussyはこれで良いのかも。とつとつとして地味な、そして夢見るようなピアノであります。

 それにしても・・・まだこんな音源現役で売ってるんですねぇ。驚き。   

(2006年4月14日)


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written by wabisuke hayashi