Debussy 交響的素描 「海」「牧神の午後への前奏曲」舞踏詩「遊戯」
(ピエール・ブーレーズ/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団)


CBS/SONY FDCA 339CBS/SONY FDCA 339 Debussy 

交響的素描「海」
牧神の午後への前奏曲
舞踏詩「遊戯」

ピエール・ブーレーズ/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

CBS/SONY FDCA 339 1966年録音  166円で購入(中古)

 昔から賛否両論、話題に事欠かない有名な録音もいつのまにか、ずいぶん昔のことに。それでもいまだに鮮度は失われない驚異。「海」とはLP時代からのおつきあいだけれど、子供の頃には、この演奏の価値に気付きませんでした。なんという「色気」「雰囲気」の欠如。愛想のなさ。明快さ。冷たさ。

 中学校の音楽室にはカラヤンのLPがあって(昼休みなどに勝手に聴いていた)「海」ってこんな曲か、と思っておりました。ねっとりと濃厚、セクシーな響き。かなり後で聴いたアンセルメの演奏も、雰囲気という点では負けていないし、ブーレーズの演奏には違和感がありました。(新しい録音のほうは聴いていない・・・と、思ったら、1995年のLSOライヴが手元に)

 うんと好きな曲、というわけでもないので、そうそう幾種類もの演奏を聴いたわけじゃありません。でもおそらく、これほど明快な問題提起を孕んだ演奏は少ないかも。この曲にインスピレーションを与えた、北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」って、ホンワカ、どんよりしていないし、怒濤の大波と、飲み込まれる小舟のはかなさ、遠くに小さく富士が明快に描きわけられている傑作。北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

 そのデフォルメされた世界に近いのが、この演奏だと思うんです。あとから聞いた話しですが、当時のブーレーズはわざとフランスのオケを嫌ったんでしょ?(いかにも、っていう色を嫌ったのか)ニュー・フィルハーモニア管は、明快でカッチリとしたアンサンブルが魅力、へんに化粧っけがない、軽めの響きを狙ったんでしょうか。(それにしてもこのオケ、レーベルが変わると響きの印象が変わります。EMI録音は一般によくない)

 第1楽章の「海の夜明けから正午まで」。低弦のピツィカートのあと、オーボエが夜明けを表現しているのでしょうが、じつにそっけなく、感情移入なく、さっぱりとした音色。続くトランペットだってそう。波にあたる弦も、うねうねしていなくて、さっぱりとしたもの。アンサンブルの緊密さは尋常ではない水準だけれど、この演奏を好む人は少ないと想像されますね。音符の細部にまでピン・スポットが当てられているようであり、様々な色合いが混じり合わず、独立して存在を主張しているような、そんな演奏。

 第2楽章「海の戯れ」は、フルートの美しさを先頭に聴きやすい演奏に仕上がっています。第3楽章「風邪と海との対話」も、妙に乾いていて、楽譜がむき出しで鳴っているようであり、「全体として『海』という感じでまとめました」なんていう意図は感じられない。いつものことながら、ブーレーズは確信犯なんです。

 「海」にたいする、一種ホンワカとしたイメージを破壊するのが意図だったんでしょう。その衝撃は30数年経ても揺るがず、ワタシにとっては新鮮な驚きであり、むしろ現在に至って初めて真価が認められるべき「美しい」演奏と感じました。「牧神」もじつに淡々と乾いた演奏だし、「遊戯」の完成度は類を見ません(選曲が渋い)。その鮮度には唖然。

 LPではじめてこの演奏を聴いたとき「えらくデッドで、オン・マイクな録音だな」と感じたものですが、いま聴くとそうでもない明快な音質。リマスタリングや当時の盤質(初期のSONYはひどかった)の問題もあるのでしょうが、演奏そのものの印象が反映していたのでしょうか。(2001年4月27日。このCDのジャケットはクールベの「波」〜これはブーレーズの音楽のイメージではない)


Debussy 

交響的素描 「海」 ブーレーズ/ロンドン交響楽団(1995年5月19日サントリー・ホール・ライヴ)MD〜DATへ。

 30年後の録音。しかも日本でのライヴ。LSOは、しっとりとした響きでNPO盤(の挑戦的なスタイル)とは少々味わいが異なります。アンサンブルの精緻な点では変わらないが、もっとお客様寄りになって、わかりやすく仕上がっています。自然体ではあるが、細部のニュアンスに色気を感じさせて、強弱の圧倒的対比も抜群。ライヴならでは温度も感じさせます。こちらのほうが好みの方は多いはず。(熱狂的な拍手有)

Debussy 

交響的素描「海」 ピエール・ブーレーズ/イギリス・ナショナル・ユース管弦楽団

BBC 16656 92002 1971年8月25日ロイヤル・アルバート・ホール・ライヴ

 意外と知られていない録音。若者のオケとしては抜群で、そんじゅそこらのプロ顔負けだけれど、やはり上記2種と続けて聴くと、やや細部の甘さを感じます。でも、ブーレーズのクールで透明な味わいはちゃんと表現されていて、立派な完成度。NPO盤ほどの硬派でもないが、LSOとのライヴに比べると若く、急いた感じはあります。テンポ速めで、熱い演奏。(よりいっそう熱狂的な拍手有)


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written by wabisuke hayashi