Bruckner 交響曲第5番 変ロ長調
(ティントナー/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団) 


Bruckner 交響曲第5番 変ロ長調(ティントナー/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団) Bruckner

交響曲第5番 変ロ長調

ティントナー/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

NAXOS 8.553452 1996年録音 11枚組2,625円(税込)円で(再)購入

 ゲオルグ・ティントナー(Georg Tintner, 1917年5月22日 - 1999年10月2日)1997年に発売された、この交響曲第5番を第一弾として、ずいぶんと話題となったBruckner全集だけれど、彼の逝去以来じょじょに忘れ去られている状態しょうか。【♪ KechiKechi Classics ♪】を開設したのが1998年だから、ちょうどその頃、ワタシはティントナーの新発売を楽しみにしながら熱心に聴いていたものです。やがて、ワタシは自分のなりの”Bruckner嗜好”に混迷を深めてしまいました。いえいえ、けっして作品を嫌いになったワケじゃないけれども。(このCDは”出戻り買い”なんです)

 やがて数年を経、ワタシはティントナーを”聴ける”ように復活いたしました。あちこち寄り道しながら、悩みながら。ようやく、出会った頃の”鮮度”が蘇ったような、その意味合いを理解できたような気がしましたね。茫洋として巨大なる演奏ではなく、優しいというか、少々情けないくらい颯爽とは縁が薄い、素朴な個性。中庸のテンポで強靱(強面?)にアンサンブルを引き締めない。叫ばない、煽らない、焦らない、ノンビリとして慌てない。つまりは全然カッコよろしくない。

 走らない、急(せ)いたアッチェランドが存在しない。響きが清涼で濁らない。結果、他では類を見ない、味わい系親しげなるサウンドを実現して”癒し系”(盟友の言葉)Brucknerを実現しております。金管の鳴りっぷりに不足はない(はずだ)が、決然とした切れ味はないから「お話にならん!」と否定される方もいらっしゃるでしょう。ぎらぎら、艶々した録音ではないが、自然で聴き疲れしない録音も極めて良好・・・但し、音量レベルが低いからボリュームを上げたほうがよろしいかと。

 この作品、Brucknerの作品中、屈指の巨魁なるスケールを誇っているけれど、ここではずいぶんとゆるゆる、ぼそぼそと呟くように〜時に決然と立ち上がる第1楽章。あまりに抑制され、さらりと繊細クールなる弦の詠嘆が聴かれる第2楽章「アダージョ」〜やがて金管が相和して合流するが、けっしてヒステリックに絶叫しない。木管だって清楚そのものじゃないか。テンポは粘らない。粛々諄々と流れる音楽は、いつしか切ない。この楽章、白眉ですね。

 Brucknerのキモは「スケルツォ」に決まっているんです。交響曲全曲に短時間、一気に馴染もうと思ったら「スケルツォ」だけ比較したらよろしい、但し元気な時にね。決然とした第3楽章はいくらでも煽って走って、切迫させることが可能そうだけれど、ここも緩いですなぁ。とくに金管〜よく鳴っているし、技術的に問題なさそうな感じ(いえいえ、充分魅力的な音色です!)だから、確信犯ですか。響きがクリアで濁らない、威圧感がないのも特筆すべきでしょう。同じような繰り返しに、聴き手はやがてあきらめの境地に達する・・・

 あちこち、田舎の田園風景をゆっくり進む列車のように、長大なる交響曲は最終楽章を迎えました。懐かしい第1/3楽章の旋律が回帰します。幻想的で美しいが、器用ではない、颯爽と流麗とは縁遠い。やがて堂々と金管が鳴り渡って、フィナーレを予感させるが、それさえ含蓄深く響いて表層を磨かない。音楽は強靱に構築しない。

 リズムは切迫せず、遠慮がちで不器用、そして清明なるBrucknerは如何ですか。マニアックなBrucknerでしょうか?今から8年ほど前のワタシは、たしかにこの演奏に感動したはず。この名曲のヴェリ・ベストではあり得ないかも知れないが、各々の演奏個性をたしかに感じ取るのは、聴き手の責任であります。壮大華麗なる表現ではないが、万感胸に迫って、たしかに壮大華麗なる最終楽章であることを聴き取ることは可能でしょう。

 安易なる”摘み聴き”を許さないのは、このCDばかりではないだろうが、全曲、まるごと、しっかり聴いてあげないと、この演奏は胸襟を開いて下さらない。全曲聴き終えて、爽やかな気分に充たされました。(2006年9月1日)

●以前の恥ずかしいコメントも残しております。

●追記 2009年1月、いろいろ逡巡した挙げ句、ゲオルグ・ティントナーの全集はオークションにて処分してしまいました。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi