Brahms ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調/4つのピアノ小品集
(カリン・レヒナー(p)/マルトゥレット/ベルリン交響楽団)
Brahms
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83
4つのピアノ小品集 作品119
カリン・レヒナー(p)/エドゥアルド・マルトゥレット/ベルリン交響楽団(旧西)
BRILLIANT 99274/2 録音年不明 3枚組1,500円で購入
1999年、大阪にて購入したCDであり(当時BRILLIANTの相場はこんなもんであった/一度下がって現在はまたこの辺りの価格か)一度サイト上でもコメントしていたもの。思わぬメールをいただいたのも懐かしい想い出です。ここ数年、棚中在庫CD処分大量に行ってきたが、この3枚組はちゃんと生き残っておりました。聴き手は華麗なる加齢を重ねるし、心身の調子によって音楽へのイメージはガラリ変わることがあるから要注意。
まず要らざる蘊蓄だけれど、BerlinER SYMPHONIKERは、クルト・ザンデルリンクのベルリン交響楽団ではなくて、旧西ベルリンにて発足した管弦楽団とのこと。VOXとか、BRILLIANTにていくつか録音があって、時に情けないサウンドを堪能させて下さることも有。ここでは特筆すべき奥深い響き!でもないが、それなりのアンサンブルでBrahms の渋い世界を邪魔するようなサウンドではありません。レヒナーのサポートとして対等平等、立派なものです。(冒頭ホルンにはもっと深淵を!期待するが)録音もまぁまぁ。
ワタシは”しつこい親父の説教”/”質(たち)の悪い中年オトコの繰り言”的音楽は嫌いです。なんとなく、この長大なる(4楽章50分を超える)変ロ長調協奏曲もそんな音楽っぽい(失礼)が、ワタシは初耳から黒砂糖を煮詰めたような、苦甘い旋律を気に入ったものです。(ルービンシュタイン(p)/クリップス/RCAヴィクター交響楽団のLPであった、と記憶)
この録音年はわからないが、おそらくレヒナー20歳代の録音じゃないでしょうか。濃厚さとか、陰影、重心の低さを旨とした演奏ではない。技巧に不足はなく、細部弾き崩しも存在しないが、先鋭に切れ味を誇る方向ではないでしょう。素直で優しい、肩の力が抜けたような、むしろ可憐なるタッチが瑞々しい。叩いたり、響きが濁ること皆無。巨魁深遠なる世界を求めるなら、ちょっと嗜好から外れるでしょう。でも、弱いことはないと思いますよ。だから全曲中白眉の聴きものは、第3楽章「アンダンテ」に於けるソロとピアノの静かな会話なんです。
もともと北ドイツ人が、南欧イタリアの陽光に憧れる作品だから、後者に焦点を当てたらこれで良いんでしょう。全体構成にだって弱さはない。ワタシは久々にこの作品を堪能いたしました。
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Brahms のピアノ・ソロ作品は、それこそ”中年オトコ寂寥なる後ろ姿”でして、ワタシは切なくなっちゃう。(先日、マーティン・ジョーンズの全集をオークションに出したが、なかなか売れませんでした/人気ないのかな)作品119なんて、深夜、寒い部屋で音量落として聴いたら一気に黄昏(たそがれ)ます。先入観かも知れないが、若きレヒナーにはちょっと甘美な慰安と(美音ではないが)デリカシーがあって悲壮ではない。間奏曲 ホ短調には情感の揺れもあります。
ラスト、ラプソディ 変ホ長調には快活な歓びが、賑やかに溢れました。 |