Viotti ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調/
Paganini ヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調 作品7「ラ・カンパネルラ」
(サルヴァトーレ・アッカルド(v)/ボンコンパーニ/ローマ・フィルハーモニー)


FIC(RCA録音)  ANC-149 Viotti 

ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調

Paganini

ヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調 作品7「ラ・カンパネルラ」

サルヴァトーレ・アッカルド(v)/エリオ・ボンコンパーニ/ローマ・フィルハーモニー

FIC(RCA録音)  ANC-149 1962年録音 667円で購入

 1941年生まれ、イタリアの名手・アッカルド21歳のデビュー録音。RCAオリジナルは廃盤、別復刻にて入手可能のようです。指揮者やオーケストラの情報はリンクしておきました。いずれぱっとしないバックだったような・・・録音用に集められたんでしょう。駅売海賊盤は一部スーパーの催事場、ホームセンターのカゴ中に生き残っていないことはないけれど、歴史的役割を終え、かつての”日本一の駅売海賊盤収集家”も(なんの自慢にもならない)ぼちぼち処分し続け、我が棚中からも減る一方、そろそろ100枚残になりつつあります。閑話休題(それはさておき)

 結果的に厳選された我が在庫は、貴重な存在になりました。リンク先現役CDは2枚組4,200円でっせ(この更新時点)。バブル迄?隆盛を誇ったFM放送(クラシック番組)自分の基礎知識はそこで培われた自覚有、某番組タイトルに流れていたのがこのViotti第2楽章「アダージョ」。ゆったり優雅な旋律をすっかり気に入って、ズザーネ・ラウテンバッヒャー盤LP(コロムビア・ダイヤモンド1000シリーズ)を入手したのも懐かしい思い出。1994年LPを最終的にキレイさっぱり処分してCDに完全乗り換え、その作品レパートリーをCDにて回復せん!と収集したものでしょう。随分マニアックな演目でした。

 ViottiはMozart と同世代だから、古楽器による録音もいくつか出ていることでしょう。このサイトを検索するとソマー・リンク(v)/ローウェル・グラハム/アメリカン・プロムナード管弦楽団を聴いているけれど、既に記憶の彼方(CDも行方不明/おそらく処分済)。他は聴いたことはなし、2006年6月ぶりの拝聴でした。

 久々の拝聴は記憶より音質状態さほどに気にならない(もちろん良好とは言いがたい水準)。嫋々と浪漫テイストな序奏は響き少々濁って、足取りもリズムも重い感じ。そこに纏綿たる哀愁甘美な旋律ヴァイオリン登場、瑞々しく明るく、歯切れのよい音色に、バックは完全に引き立て役、伴奏に徹しております。優雅な第2主題はいっそう浪漫の色濃く、この表現が時代に似合っているどうか別にして、Brahms に愛されたという歴史の反映なのでしょう。ワタシもこのスタイルに馴染んで違和感なし。第1楽章「モデラート」カデンツァ(目の覚めるような技巧)〜最終版、いっそう表情付は入念、色濃いもの。

 この作品最大のキモ第2楽章「アダージョ」。フルートも美しい静謐なオーケストラに乗って、ヴァイオリンは絶品の安寧旋律を奏でました。朗々延々と歌い続けるソロは、まさにイタリア・オペラの伝統か。浪漫派の作曲家演奏家に愛されたというのが理解できる、短い不安げな間奏曲を挟んで陰影豊かな楽章であります。珍しく緩徐楽章に登場するカデンツァ(主旋律を元にした叙情的なもの)はヨーゼフ・ヨアヒム作らしい。第3楽章「アジタート・アッサイ」(極めて情熱的に)〜イ短調だけれど、基調は明るく、快速であり技巧的な旋律続きます。ヴァイオリンは指示通り情熱的であり、響きは無機的にならず濁りは一切なし、カリッと芯のある美音が凛として圧巻。

 こうしてみると第2楽章のみならず、どれも名曲揃いだなぁ、この作品。最近の古楽器成果を聴きたくなりました。

 Paganini始まりました。ワタシは彼の佳き聴き手ではなくて、別に苦手でも嫌っているわけでもなし、偶然聴く機会が少ないのみ。終楽章「ラ・カンパネルラ」(鐘のロンド)は、後年Lisztに引用されたのは有名な話(そちらのほうが有名でしょう)。第1楽章「アレグロ・マエストーソ」冒頭”それ”らしい劇的オーケストラ序奏が3分弱、あとは徹底的に伴奏(ソロの引き立て役、合いの手+ソロ休憩時の色物的扱い)となります。ヴァイオリンは変幻自在に歌って、歌謡的旋律延々と続いて、なかなか魅力的であります。細かい弓使い、技巧的にはなんの労苦の陰も見せぬ、完璧な美音。節回し。カデンツァはダメ押し、ソロ妙技披瀝の場=一人舞台であります。

 この辺りに至ると唖然として”音質云々”忘れ去りますよ。第2楽章「アダージョ」。”それ”らしいホルン+フルート〜激高した弦乱入して開始(ここのオーケストラが下品で美しくない)、アッカルド登場すると”掃き溜めに鶴”状態、まさにオペラ・アリア(愛の歌風)旋律纏綿朗々と歌われて、その対比はみごとであります。このまま歌詞をつけて、歌っても違和感なし。7分弱、あっという間に終わります。

 第3楽章 ロンド(アレグロ・モデラート)ロ短調は誰でも知っている哀愁の「鐘のロンド」旋律にて開始。繊細なるフラジオレット奏法が腕の見せどころ、歌心に溢れたヴァイオリンは一点の曇りもない。重音連続して、ソロの技巧披瀝はいや増すばかり、それもアッカルドの妙技に掛かれば、美しさばかり際立って、艱難汗水はどこにも見えませんでした。オーケストラの鐘との掛け合いも楽しいもの。

(2013年9月14日)

 これ当時二十歳くらいだったアッカルドのデビュー盤だったはず。正規CDは、ここ最近見かけたことがないので貴重な存在かも知れません。ヴィオッティの作品は、ペーター・リバールなどの名演奏によって意外と昔から有名だけれど、録音自体も少ないんです。ワタシはLP時代、ラウテンバッヒャーの立派な演奏で楽しんでおりました。(おそらくVOX録音。これもCD復刻されていないはず)

 ヴィオッティは1755-1824で、Mozart とほぼ同世代でしょう。イタリアの作曲家。NAXOSが録音計画を立てているようで一枚出ているが、なかなかこれ以外の作品を聴く機会はありません。第2楽章「アダージョ」が甘い旋律で有名、かつてFM番組のテーマ曲にもなっておりました。(あれはボベスコだったのかな?)

 本来、もっと古楽器系の録音が出てもよいのでしょうが、アダージョの旋律を主眼に置いているためか、浪漫的に演奏されることが多いのです。アッカルドのヴァイオリンは、いつものように歯切れが良くて、明快で、イタリアの青空のような爽やかな音色、節回し。もう、ほとんど完成されていて、ま、若者が演奏しても、もともと精神的深刻さを要求するような曲じゃない。

 肝心な「アダージョ」は清楚でデリケート。数あるヴァイオリン協奏曲の中でも、屈指の名旋律。

 ところで、このボンコンパーニという指揮者、それと「ローマ・フィル」という団体、このCD以外では見たことがない名前だけれど、かなり酷いもんでした。もともとパガニーニ作品におけるオーケストラは「伴奏専門」だけれど、ヴィオッティでも前奏から響きが濁りまくり、リズムは悪く、どうしようもない。「録音が悪いのか?」と、思っているとアッカルドの凛とした音色が出てくるので、結果、その対比がニクい演出になっている皮肉。

 パガニーニはアッカルド得意のレパートリーで、デビュー盤で有名な第1番ではなく、「ラ・カンパネルラ」を持ってくるところが渋い選択。(いずれにせよ、そう違わない曲でしょうか?)バックは慣れのせいか、あまり気にならなくなりました。これがパガニーニ・マジック(って、どんなオーケストラと共演しても、あくまでヴァイオリンのみが目立つ仕組み)か。

 アッカルドの技巧の冴え、明るく、キリリとした美音は絶好調で、これほど気持ちの良い演奏は滅多に存在しないはず。シロウトが聴いていても「いかにも」という難しいフレーズが頻出しますが、見事にクリアしてくれます。たっぷり歌い、澄まし顔で演奏しているのが眼前に浮かぶよう。

 パガニーニの旋律の魅力は、シンプルで、ありがちなイタリア・オペラのアリアを連想させるところでしょう。(これ誉め言葉のつもり)ただ、バリバリ弾きゃいい、というもんでもないんです。美声で、のどをよくころがしてくれないとダメ。おそらく、ハイフェッツのようにスルスルと演奏しても魅力半減で、いかにもアクロバテイックに、観客を冷や冷やさせてほしいもの。

 第2楽章、「アダージョ」楽章のセンチメンタルな旋律はヴィオッティに負けない魅力有。終楽章は、リストの有名な「ラ・カンパネルラ」の旋律そのまま。ピアノでもそうとうな難曲だそうだけれど、その難曲ぶりをそのままヴァイオリンに移したような凄い楽章。パガニーニらしく、妙技をどんどん発揮する方向に広がっていって、楽しいこと限りない。(2001年6月1日)


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written by wabisuke hayashi