Mozart 交響曲第33番 変ホ長調K.319/第34番ハ長調K.338/第35番ニ長調K.385「ハフナー」
(ヤープ・テル・リンデン/アムステルダム・モーツァルト・アカデミー)


BRILLIANT 92625/20 2002年録音  14枚組全諸経費込1,470円程でオークション入札したウチの1枚 Mozart

交響曲第33番 変ホ長調K.319
交響曲第34番ハ長調K.338
交響曲第35番ニ長調K.385「ハフナー」

ヤープ・テル・リンデン/アムステルダム・モーツァルト・アカデミー

BRILLIANT 92625/20 2002年録音  14枚組全諸経費込1,470円程でオークション入札したウチの1枚

 ここのところ歴史的音源のLP復刻がネットに多く掲載されるものだから、昔の音源ばかり拝聴しておりました。その関連にて、LP時代コンサートホール・レーベルにてMozart 交響曲全集(演奏家様々)が出ていたことを発見いたしました。意欲的だなぁ!ワタシの子供〜若い頃って「全集」は画期的+贅沢品、中古LPにてベーム全集盤を入手(たしか壱万円)したときには感涙溢れた記憶有。CD時代に入ってラインスドルフ全集を全部揃えたときにも同様の感慨があったものです。

 やがて幾星霜。あの謙虚で無垢な精神(こころ)今何処。

 アレッサンドロ・アリゴーニ/トリノ・イタリア・フィルハーモニー全集出現辺りから価値観がおかしくなったのか(後、1000円でお釣り状態/既に処分済)。全集は日常の姿に至りました。後期作品中心に著名盤複数CD棚に揃えるのはもちろん、「全集」はハンス・グラーフをリファレンスに、マッケラス、そして古楽器代表ヤープ・デル・リンデン、これにて一段落。価値ある(史上初録音)エーリヒ・ラインスドルフ全集は(発売権移ってメジャーレーベルにて再発売CDもあるけれど)パブリック・ドメインへと至りました。浦島太郎状態でっせ。「Mozart  交響曲全集に寄せて」という駄文を上梓したのが2003年、そこに載っている3種の全集はすべて処分済み、このヤープ・テル・リンデンは収納の関係で簡易紙パックに買い替えるという傲岸不遜なる暴挙実施。(プラケース全集オークション処分でお釣りが来た!)

 閑話休題(それはさておき)。

 ヤープ・デル・リンデンの交響曲ニ長調/第18/19/25番への言及は既に掲載済み。BRILLIANTという廉価盤専門レーベルの録音、ということで端っから一段低く見られている風潮なきにしもあらず、そのワリに最近ちょっと価格は高止まり?(挙げ句、廃番)状態。CD価格と音楽の価値はなんの関係もないんだけどね。カスタマー・レビューには辛口も多くて、嗜好は人それぞれ、全然かまわないんだけれど、「35番のトラックわけがおかしいので9点」とはねぇ・・・恥ずかしながら、素敵なハフナー交響曲を各楽章バラバラに聴いたり、プレーヤーのトラック表示を睨み付けながら聴く風習はないので、気付きませんでした。おそらくはiPodに取り込むときに気付いたんでしょう。鬼の首でも取ったように騒ぐことか。

 カスタマー・レビューの続きだけれど、「流して聞くにはもったいないほどに立派だけれど感動を期待すると見事に裏切られる。私はもっと覇気ある演奏を求めるけど、のんびりサッパリ系モーツアルトをお望みの方たちには好まれそう」〜そう、まったくその通り。ワタシこそ”のんびりサッパリ系モーツアルトをお望みの方”そのものであります。「奇をてらって、楽譜にないティンパニを平気で加えている」とのご指摘には敬意を以て拝聴いたしましょう。(エエ加減ド・シロウトにはどの部分かわからぬが!)音がよろしくないとのコメントは、オーケストラのサウンド?それとも録音のことか、ようわかりません。残響豊か、なかなかエエ音と思うのですが。

 この3曲(第33/34/35番)はいずれとびきり元気の良い、明るく名曲であって、穏健まったりノンビリ系古楽器演奏では物足りない、というか、全然だめジャン、的評価にも一理有。この作品に限らぬが、ヤープ・テル・リンデンの演奏を聴いていると、いままで馴染んできたものはなんのか?”目から鱗”状態になるんです。旧態頑迷先入観融通の利かぬノーミソに喝!一発、そうかぁそんな世界があったのか、ま、エエではないか。爽やかな清々しい気分に至ります。古楽器としての研ぎ澄まされた、目眩く鮮やかな技量、寸分違わぬキビキビ縦線の精緻とは少々(かなり)世界が異なって、ちょっぴりリズム緩いのも事実。ま、それも味わいのひとつ。なんせ都会の喧噪ばかり、そんな毎日なんで。

 劇的溌剌リズムのエッヂを立てない、昨今の古楽器演奏を想像したら大間違い!弦の響きは薄く(編成小さく、もちろんノン・ヴィヴラート)、マイルドな管楽器の存在が目立って、粛々と静かな演奏。変ホ長調交響曲K.319始まりました。第1楽章「Allegro assai」は、のんびり床しい古楽器の響き、柔らかいノリ。馴染みの「ジュピター」音型出現。第2楽章「Andante moderato」に於ける練り上げられた。第3楽章「Menuetto」の素朴な舞踏、そして終楽章「Allegro assai」は贅肉もちろん筋肉モリモリとも無縁なる、体脂肪低い静かなる躍動続きました。”Beethoven の交響曲第8番最終楽章に影響与えた”とはネットからの要らぬ知識ながら、こちらのほうがずっと粋でっせ。

 ハ長調交響曲K.338第1楽章「Allegro vivace」って、まるでオペラの序曲ですよね。華やかなる物語の幕開けを予感させるけれど、それはちょっと遠慮がち。メヌエット楽章のない3楽章製は「プラハ」と同様?第2楽章「Andante di molto」出足、弦は少人数地味な響き〜というのはK.319と同様、ほとんど室外楽の世界に接近している表現也。ここ好きだなぁ。終楽章「Allegro vivace」はアンコールに良く取り上げられるような躍動!優しく、力みなどどこにもない風情であります。うっすら汗ばむ程度のジョギングスピード+ノリ。

 お疲れ中年サラリーマンの耳にも、心にも優しいサウンド也。

 ニ長調交響曲K.385「ハフナー」は後期作品の幕開けを告げる著名作品也。もともとはセレナーデとして意図された明るい作品とのこと。第1楽章「Allegro con spirito」は、ややまったり、ゆったりめのテンポにて表現されました。急いたり走ったり、そんな風情とは無縁の余裕であります。練り上げられた弦+管楽器が柔らかく絡み合って、ティンパニも(意外と)存在感を主張してワリと華やか、優雅なる演奏也。第2楽章「Andante」は床しい弦より木管の存在感が光りました。緩徐楽章の魅力は古楽器でこそ引き出せます。第3楽章「Menuetto」は典型的リズムしっかりな舞曲であって、古楽器の飾らない素朴なサウンドが似合います。

 終楽章「Presto」(なるほど。トラック切り忘れ)。意外とテンポはゆったり。噛み締めるように、足取りたしかめるように、(柔らかい)トランペットが高らかに歌って、ティンパニは抑制気味。慌てず騒がず〜これは第1楽章と同じ流れなんですね。CD一枚64分ほど、こんな柔らかい、まったりとしたサウンドなら全曲聴き続けて聴き疲れしません。

(2012年3月31日)


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written by wabisuke hayashi