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Mozart  交響曲全集に寄せて


 アダム・フィッシャーの貴重なるHaydn全集が、いつまでもラスト一枚までたどり着けません。一昨年購入したBach のカンタータ全集(リューシンク)〜これも同様。言い訳だけれど、ワタシのCDの聴き方に問題があるんです。「とにかく一通り聴いておく」ことができない。情けない。

 「おっ!」と、思えばその曲をなんども聴いちゃう。「?」と感ずれば、膨大なる在庫から関連物を取り出してしまう。「関連物」とは、同一作品のこともあれば、演奏家のこともある。(希にダブり買いを発見することも)たまには高尚に「同時代の作曲」なんかを比較してしまう。場合によっては書籍で資料を調べる、インターネットで検索する・・・・そんなことばっかりやってますんで。

 ま、これも趣味。老後の準備ですよ。(な〜んてこと書くから「実物より年寄り〜としょり、と発音する〜クサイ」と言われる)

 でもね、こんなワタシでもMozart は別格なんです。上記2全集が終わらないのもBRILLIANTでMozart 全集が始まっちゃうから・・・という言い訳もしてみたい。で、今回はMozart 交響曲全集のお話し。ま、雑感です。いつもの通り。なんらの資料的価値は存在しない。

 小学生の時、17cmLPで売っていたのが交響曲第35番「ハフナー」(ベーム/ベルリン・フィル)で、これがワタシのMozart 交響曲との出会いです。その前に「アイネ・ク」との決定的なる出会いが存在したけど、いやもうそれ以来幾星霜、ずっとMozart の虜。お次が「ジュピター」でたしかセル/クリーヴランド管のもの。まぁ、単発の話しはキリがないから止めます。いまでも、見掛けて安ければ必ずCDは買いたい。


ベーム/ベルリン・フィルハーモニー  DG 453231-2 10枚組(いま、いくらくらい?)

 じつは全集は持っていないんですよ。CDでは第38/39番があるだけ。LP時代はね、ちゃんと全集を持っていました。布張豪華装丁ボックス入りね。中古だったけど、いくらだったんだろう。記憶がない。きっと壱万円くらいだったんじゃないかな。それに、ごていねいにもコンセルトヘボウとのモノラル録音(2枚分)も聴いてましたね。

 やっぱり、この演奏が(自分にとって)基準になってますね。先日、上記第38/39番を聴いたけど、ただただ、そのまっすぐで几帳面なるフレージングに頭が下がる思い。ウィーン・フィルとの再録音(第40/41番を所有)が数曲出ているけど、ベルリン・フィルとのほうが、その生真面目な指揮ぶりに似合っていると思います。

 3,000円くらいで出ませんか?万難を排して買いたいけれど。

 あと、どうなんだろう、世評高いのは。新しめのレヴァイン/ウィーン・フィルか〜興味なし。ホグウッドのは一斉を風靡した時期があったけど、全然話題に上らなくなりましたね。(評論の流行廃れの典型だね)ピノック/イングリッシュ・コンサートのは評価が高いらしい〜聴いたことはないが。マリナーね、数曲聴きました。一枚CDもありますが。フツウだな。グラーフ/ザルツブルク・モーツァルテウム〜これは価格も安いし、オーソドックスで良いかも知れません。(初期作品を2枚ほど所有)

 で、そんなこと、どーでも良いんですよ。手持ちのCDのコメントをしたくって。以下、3種紹介。


Mozart  交響曲全集(第1〜41番)

ラインスドルフ/フィルハーモニック・シンフォニー・オブ・ロンドン

MCA(Westminster) MCAD2-9808AB/9812AB/9814AB/9818AB(全8枚)  8,000円で購入

 1955年前後の録音で、旧Mozart 全集に依っています。だから、交響曲第37番(序奏以外、M.Haydnの作品)もちゃんと含めていて、妙に資料価値が高い。第1番〜20番+40番はステレオ録音。オーケストラはロイヤル・フィルの契約問題による変名とのこと。史上初の「全集」録音です。1988年にCD化。

 お恥ずかしいが、1998年頃、一番最初に書いたこのサイトの原稿だったし、思い入れはあるんです。早めのテンポで、カラカラに乾いたガサツな演奏の連続、もちろん繰り返しはまったくありません。なんせ41曲をCD8枚に収録しなくっちゃいけないからね。それでもときどき聴きます。やっぱりMozart はMozart 。幸せになります。ニヤニヤしながら聴いています。

 1990年代の中盤にLP約3,000枚を(涙ながらに)処分し、プレーヤーをご近所のご老人に譲りました。ああ、もうLPは贅沢品になっちゃったな、と。で、とうとう上記ベームの全集も某中古レコード屋さんにお嫁に行きました。CDでワタシは全集が欲しかったんですよ。で、このCDをみつけました。

 今は亡きワルツ堂堂島店で、2枚2,000円の「MCAダブル・デッカー」を計4組、毎月買い足して全集としました。8,000円って大金ですしね、揃ったときは嬉しかった。そんな思い入れがないと聴けませんか、このCD、もしかして。許して下さいよ。ワタシだけだから、部屋で聴いているのは。

 旧全集だし、音質もうんと良好とは言いかねるし、もう2度と再CD化されることもないかもしれませんね。だからこそ、この全集にはますます愛着がある。すみませんねぇ、なんの説明にもなっていないで。きっと売れなかっただろうから、中古でも見たことないなぁ。ワタシが売価値付けすれば、8枚2,000円だな。


 

Mozart  交響曲全集(第1〜41番)

センス悪いジャケット絵に愕然

アレッサンドロ・アリゴーニ/トリノ・イタリア・フィルハーモニー

TIM  203301-205〜20310-205   (P)1999  1988年以降録音  10枚組2,360円で購入

 たしか2002年に購入。新Mozart 全集による。TIMは例の10枚組Historyのレーベルだし、その名に恥じないこの激安ぶり。録音情報が少ないが、このオーケストラができたのが1988年だからそれ以降の録音でしょう。間の抜けたMozart の肖像画もたまらない魅力。ラインスドルフ盤が「8枚8,000円」(これでも当時は激安)だから、バブル崩壊後のデフレ現象の衝撃を地でいったような価格変動ですね。@1/4以下でしょ。ハンバーガーどころじゃないね。

 購入以前に、数人の方々からボロカスに評価されていたけれど、ワタシはどうしてもこの全集が欲しかったんです。だから、秘密裏にYAMACHIKUに発注しました〜なんだ、なかなかいいじゃない、と、いった感想をサイト上に掲載したら、またまたボロカスに言われました。うるさいやいっ!ちゅうの。ワタシはMozart だったらなんでもいいのさ。できればスリム紙パックにして欲しかったけど。

 先日、スウィトナーBOX10枚組買いました。(0002612CCC 4,680円)一部ダブリもあったけど、Mozart の交響曲が第28番〜41番迄揃って+「アイネ・ク」とか入ってます。これがね、シュターツカペレ・ドレスデンの音がホンマに良いじゃない・・・・音そのものが音楽している・・・・ジ〜ンと来ましたよ。じゃ、アレッサンドロ・アリゴーニさんどうなのっ!て、そう目くじら立てずに、さぁ。

 203310-205に第40/41番入ってます。堂々として、のびのびして、ゆったりオーソドックスでいいじゃない。響きに厚みもあるし。オーケストラも想像よりずっと瑞々しく鳴っていて、楽しめませんか?「間」の感覚も急いたところがなくて好きだなぁ。低音もちゃんとあるし。磨き上げられた響き、とはいえないが、充分でしょ、ダメ?繰り返しがないのは気に食わないが。録音も適度な残響が悪くない。

 ほか、9枚だって同じですよ。なに文句あるの・・・・って、なるほど、どれも「同じ」なんだなぁ。やや緩いのが快感なんだけど、ずっと続けて聴いていくと、そのワンパターンが耳に付くように〜なるかもしれない。件の「ジュピター」も、終楽章に疲れが出たのか、ややアンサンブルはヘロヘロ状態でした。しかし、達人(ワタシのこと。なんの達人?)はそんな枝葉末節、些細なことに気を病むなどということはありえない。

 これは未来明るい子供〜若者が聴くべき廉価盤なんです。これでも存分にMozart は堪能でき、楽しめます。道は誤らない。「アレッサンドロ・アリゴーニ?イタリア・フィル?うぅ、怪しい!」なんて、若者は冒険しなくちゃ。文句あるか。


Mozart  交響曲全集(第1〜41番)

ヤープ・テル・リンデン/アムステルダム・モーツァルト・アカデミー

BRILLIANT 99730/1〜5(5枚組1,990円) 99715/1〜6(6枚組2,390円) 2002年録音

 BRILLIANTのMozart EDITION第12巻+第20巻で全曲揃います。価格もGood!録音も新しい。交響曲第40番ト短調は「クラリネット有無版」両方収録する念の入れよう、なにより古楽器の鄙びた、しかも精気に満ちた表現が素晴らしい。繰り返しも実施〜但し、全部確認したワケじゃないが。

 地味だけれどふくよかな(例のオランダ風中ふくらみか)弦の魅力、管楽器は粗野だけれど、細かい配慮に充ちた表現、どこをとっても一流の演奏でしょう。リキみはどこにもなくて、むしろやさしく、音をそっと置いていく感じが好ましい。表現的にはオーソッドクスだけれど、古雅な響きそのものが新鮮で、小編成故の軽快さ、内声部の明確さもあって、いやぁこれ、21世紀ののMozart でっせ。

 古楽器演奏も、一時の先鋭的なものではなくて、こなれてますね。リズムに特有のキレがあって、バランスがとてもよろしい。うるさくならず、ひ弱さを感じさせない。全体サウンドが、ポジティヴ・オルガンを連想させるような暖かさと素朴さに溢れております。録音は自然で極上。技術的な問題一切なし。広がりもスケールもある気持ちよい演奏。

 これで5,000円少々!どうだ、もってけドロボー。この全集はけっこう息長く愛されるべき演奏と判断しました。いかがでしょうか。

(2003年2月25日) 


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi