Beethoven 交響曲第3/8/4/7番(ヨーゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団)Beethoven
交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」 ヨーゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団 EVEREST EVC 9010/14 1960年録音 5枚組 1,554円にて購入(中の2枚) この全集はなんども購入しております。その件は「謙虚ではなく(クリップス/ロンドン交響楽団のBeethoven 交響曲全集購入)」にて経緯言い訳済み。最終6年スパンくらいで正規盤入手(もちろん格安で)できました。以下のFATBOY盤は昨年(2004年)末処分済み。問題は(なんども手放した原因である)音質問題〜いえいえ、少々のことなら気にしないが、あまりに酷いものばかり出会ったので。クリップスさんもまことに不運であります。EVERESTは優秀録音で有名だったし、LP時代のほんわかとした記憶でも”それなりの音質”だった記憶有。 結論的に(p)(c)1994のこのボックスは、それなりのまともなものでしたね。もともと(他の優秀EVEREST録音に比して)まぁまぁそこそこフツウな音質水準だった記憶があったし、例えば「CDなのに音ゆれがあります」との指摘(確認すると第2番の冒頭〜原テープの劣化か?)もあったが、日常楽しむのになんらの問題なし。(もちろん左右反転もなし。当たり前じゃ) いうまでもなくBeethoven は圧倒的人気(日本だけではなく全世界的に)でして、交響曲の新時代を切り開いた、圧倒的スケールと迫力を備えた「英雄」!〜フルトヴェングラーで!、穏和で明るい交響曲の印象一変!劇的第4番〜カルロス・クライバーで!、舞踏の聖化!最終楽章の熱狂に身もココロも焦がし尽くせ!第7番〜これはトスカニーニか?やっぱりクライバーで!いえいえフルトヴェングラーでしょ、トドメは・・・みたいな嗜好はあまりなくて(敬意は有)、すっきりバランス感覚溢れた、穏和な演奏が好き・・・というのがワタシの主張。これは数年前とほとんど変わっておりません。 だから嗜好的にはクリュイタンス、シューリヒト、(全集揃えていないが)ケンペ、モントゥー辺りが縄張りとなります。(ハノーヴァー・バンド、ジンマンは別な意味合いでの鮮度を感じる)そして、クリップスへ。心身共に良好であれば、爆演系もタマに悪くはないが、金管打楽器大爆裂、異形なる旋律節回しアクセント強調、汗水飛び散った大熱狂演奏、というのはちょっとご遠慮申し上げたいのが正直なところ。 屋上屋を重ね(るような演奏をし)なくても、Beethoven は充分硬派の音楽でしょ。「要所要所のツボをしっかり押さえていただければ、過不足ない迫力・説得力が生まれる」〜これが結論です。どれも似たようなコメントだし、基本、以前となんら変わらないが、いちおう蛇足ながら追加。再聴と言うことで。 「英雄」〜優しく軽快な流れの良さ、トゥッティで音を濁らせない、必要以上に低音を強調しない、バランス感覚溢れた演奏。上品で強面にならないオーケストラの響き、ホルンの絡み合いの美しさ、刺激的にならないトランペットの歌。慰安に充ちた「葬送行進曲」、怒濤の機関車発進!ではない、あくまで控えめで美しい「スケルツォ」、大仰にならない最終楽章壮大なる変奏曲は、優雅でていねいな表現でした。木管が美しいですね。つまり結論的に「大曲」に仕上げずに、等身大の親しい「英雄」的演奏でした。 全9曲中、第2番と並んで(数少ない)お気に入りの第8番ヘ長調は、革新的哲学的名作だと思います。リリカルで淡々粛々と仕上げた演奏、過不足なく、リキみなく、しかも弱くはない。メリハリもちゃんとあります。第2楽章こそ新時代の機軸でして、指揮者はこれにどんな色を付けたら良いんだ!的懊悩に至るかも・・・もちろんクリップスは自然体(ほとんどなにもしない?)です。優雅なメヌエットも、あるがままの表現か(カラヤンのしっとりねっとり演奏が記憶に深いが)、終楽章もあわてず騒がず、急がず、楽しげなる表情でした。リズムがいきいき。(正直、この作品では少々音質に不満有。ここまでEVC 9013)
第4番 変ロ長調は、カルロス・クライバーの出現以来、燃えるような激しい演奏が主流ですか?クリップスは穏健派だけど、第1楽章、序奏(アダージョ)〜一気アレグロ・ヴィヴァーチェでハジけるでしょ、この対比相当テンション高いと思います。浮き立つような喜ばしさ一杯。煽ったり、リキんだりしないけど、華やかなんです。第2楽章アダージョの穏和で粛々とした(これも)明るく楽しげな表情。第3楽章スケルツォのノリノリもエエ感じだけれど、乱暴にはならないんです。 フィナーレはアクロバティックなテンポを誇示したがるけど、適度なバランス感覚が大切です。ここに良き美しき見本有。今回聴いた中では、第4番の完成度は出色でしたね。 さて、純個人的に苦手の第7番イ長調へ。おそらくワタシの標準は、中学生時代に聴いたクリュイタンスなのでしょう。かっちりていねいで、優しく透明な響きが望ましい。5年ほど前は「京料理か。薄味の微妙な味付けが繊細です。澄んだ真水のようなダシですが、よ〜く味わうと滋味深い。臭みも濁りもなし」という(似非)哲学的な、ワケわからんことを言っております。 ようはするに「英雄」と同じように、「トゥッティで音を濁らせない、必要以上に低音を強調しない、バランス感覚溢れた演奏」ということです。この作品も、熱狂爆裂演奏が市場に多い(時にそれも悪くないだろうが)が、こんな優しい、冷静かつ暖かい演奏こそクリップスの個性でしょう。第1楽章は大人しすぎて、ノリが足りませんか?第2楽章「アンダンテ」はこども時代大好きな楽章だったのに、ここ最近ほんまに縁遠くなって・・・嗚呼、この静謐さから、やがてチカラが全身に漲(みなぎ)るような、精神の高揚がやってまいりました。 スケルツォは控えめであり、繊細。終楽章は一発ぶちカマしたくなる部分だけれど、ここの抑制が利いております。あくまで気品を失わない・・・って、少々大人しすぎますか。ワタシにはちょうどよろしいようで。(以上EVC 9012) (2005年5月27日)
Beethoven
交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」 クリップス/ロンドン交響楽団 FAT BOY(EVEREST録音) FATCD420/2 1960年録音 500円で購入 毎年、春とともに何故かMY Beethoven ブームがやってくる・・・・・・。(なんて言ってる間に夏)コルトーのフランクを久々に聴いて「!」と思ったのもつかの間、深い眠りに入ってしまい、コメントは先送り。で、結局ワン・パターンのべーさんに心委ねる阿呆なワタシ。クリップスとワタシとの、昔からの深い関係(勝手にそう思っている)は、「第7/8番」を参照のこと。 「贅沢三昧〜Beethoven 編」にも書いたように、交響曲のCDはけっこう沢山(ほぼ無意味に、無定見に)所有。はっきり言って、調べないともう枚数はわからないし、忘れているものもあるはず。その中でも、やはりこのクリップスの演奏は、とくべつな個性だと思うのです。そりゃフルトヴェングラーやクナ辺りも「特別」ですよ。そういう「コ〜い系」個性じゃなくて、「お上品系」個性というか「非リキみ系」個性というか、ズバリいま流行の「癒やし系」か。 ずらり9曲・名曲揃いのなかでも屈指の説得力を持つ「英雄」。(題名がなんとも凄い)たいてい、どんな演奏を聴いてもいろいろと発見がある。(ま、この曲に限らずBeeやんのはどれも)すべての音に入魂の入れ込み演奏、ゴージャスにオーケストラの豊満な響きを楽しませてくれるもの、逆に贅肉はすべてそぎ落として、骨格が透けて見えるようなの(ギーレン/シンシナティ響の演奏!)とか、素朴で古雅な味わい系、等々、いろいろ、様々有。 冒頭の二つの和音から、スッと肩の力が抜けて、(やる気を抜いているわけじゃないけど)音楽が本来持っている魅力に、いつのまにか巻き込まれてしまう不思議。ノリ。LSOは響きが濁らない。フレージングが上品。「葬送行進曲」も、主題提示がさりげないというか、なんの工夫もないように見えて、変奏が繰り返されてうちに、なにか大きな流れに知らず知らずに身を任せてしまうような〜「クリップスのCDを聴いている」のを忘れてしまうような〜快感。 スケルツォの軽妙ともいえる流れの良さ、中庸でありながら、ひとつひとつのフレーズを、ていねいに透明に表現してくれる終楽章のワザ。にじみ出る歓喜の歌。自然体は最後まで崩れない。 第4番もさりげない。嬉しげで、明るく、弾むような第1楽章。フルートとファゴットが、明るく美しいこと。低音が軽い・・・・というか、わざと重厚さを避けているようなかんじ。アダージョは、この人の個性がいつも良いほうに出て文句なし。終楽章は、(この楽章に限らないけれど)よけいな旋律のふくらましも、なにもないのになんと充足感の深いこと。LSOの色気ある響きは、この時期特有でしょうか。 結論としては、「第7・8番」となんら変わらないワン・パターン。これでいいんです。いつも馴染みのガンコ親父Beeやんですが、厳つい顔が、いつになく穏やかで機嫌がいい。こんな演奏だったら、棚からCDを出すのに気持ちが萎えることはない。(Beethoven って、聴くのに根性固める必要がある・・・・こともある) このFAT BOY盤はやや海賊(勝手にCD化)臭くて、音の劣化が目立ちました。EVERESTの正規盤全集が安く出ないものでしょうか。どこかの中古屋さんで2,000円くらいが望み。見つけたら、すぐ買うんですけどねぇ。ムリか。 (2000年7月20日更新)
Beethoven 交響曲第7/8番(クリップス/ロンドン交響楽団)
交響曲第7番イ長調 作品92 ヨーゼフ・クリップス/ロンドン交響楽団 FAT BOY(EVEREST録音) FATCD420/4 1960年録音 400円で購入 え〜、「安物買いの銭失い」を一席。(どうぞ嗤ってやってください) あれは1970年頃だったでしょうか、親父がちょうど現在のワタシくらいの年齢の時、職場にセールスかなんか来たんでしょう「クリップスのBeethoven 交響曲全集」のパンフを持ってきました。当時のワタシはクリップスなんか知らなかったし、反抗期でもあったので「いらねぇよ」と一言。 その罰があたって、その後、社会人になるとすっかりクリップスのファンになってしまい、LPでは数枚購入。CD化されて(BESCOL)9番を除く全集を購入(これは音質が気に入らず友人に売却)、さらに別な会社でCD化された全集を購入(ナントカ・クラシックという黒い箱入り)したものの、「ブーン」というノイズが気になって(いっそう音質悪し)また売却、再びBESCOLのセットものを格安で見つけて購入、でも、やっぱり音質が気にくわなくて売却。 LPはもっと良好な音質だったんですよ。EVERESTの正規CD化はきっと音の状態は良いと思うのですが、ワタシが見かけたものは@1,000では買えなかったのでパス。で、ことし(1999年)になって、このFATBOY盤を見つけて買いました。(2枚だけ) 音質はまあまあ良好ですが、このCDは残念ながら左右逆収録。「左右逆CD」は数枚手元にありますが、「右前方の第2ヴァイオリンが活躍している。低弦は左奥の対向配置か」と思ったら、たいてい「左右逆」なんですね。珍しいとも、価値があるとも思いません。ディスクマンで聴いていると不自然でやりきれない。 ま、最初からEVERESTの正規CDを買っていれば、ずいぶん安くついた計算になる・・・・・・真似をしないように。 1999年前半の「Beeやん中毒」をようやく脱したのに、猛暑が過ぎ秋風の気配が漂うとまたまたビョーキ復活か・・・・・・でも、ほんとうに名曲だなぁ。 第7番はシェルヘンのノリノリ激辛演奏も素敵だし、クリュイタンスの洗練された明快な響きも好き。ERMITGEにビーチャムのライヴがあって、これも上品で暖かくて、なんともいえない。 シェルヘンが「本場タイ料理」なら、クリップスは京料理か。薄味の微妙な味付けが繊細です。澄んだ真水のようなダシですが、よ〜く味わうと滋味深い。臭みも濁りもなし。 力みがなく素直で自然体、それでいて説得力もある。じつに優しく、きめ細かい演奏ぶり。ヤワ過ぎで物足りなく思うくらいでしょ?力強さも足りないし、響きの濁りなんてありえません。クリップスの録音って、たいていこんな感じだから確信犯ですね。いわゆるその、ウィーン風(素人のワタシが考える)の柔らかさ。 1960年前後の録音のはずで、ちょうどモントゥー時代のLSOでしょ?アンサンブルは最高で、クリップス(このひともLSOの指揮者だったことがある)の指揮にピタリとハマったのか、極上の美しさ。この管楽器の洗練具合は滅多に出会えません。情熱的な高まりはないけれど冷たさはなくて、どこをとっても抵抗なく聴けます。遅からず、早からず、適正なテンポ。 第8番は、クナッパーツブッシュの超鈍速演奏の毒気に当てられて以来、どんな演奏をを聴いても物足りなく思うように・・・・。この曲は、リリカルで感情移入の難かしい曲。(クナの行き方もひとつの道・・・濃〜い味付けで)もともとワインガルトナーとか、ハイティンク/LPOで覚えた曲ですが、そういう穏健で、オーソドックスな演奏にこそこの曲本来の味わいがあるのかもしれません。 ここでのクリップスは第7番のコメントと寸分違わず。「嗚呼、第8番って、こんな優しい味わいだったな」と、思い出させてくれる音楽です。オーケストラと指揮者の力量が正直に出てしまうのでバカにできない。ていねいな仕上げに満足できます。 これはこれで確立した個性、ここ最近絶滅してしまった音楽です。
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