Brahms 交響曲2番ニ長調/Beethoven 交響曲第8番ヘ長調
(ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルハーモニー)


ERMITAGE ERM157/2006年売却済DOCUMENTS 223602 CD10 10枚組1,206円(通販ポイント値引き適用後)にて再購入
Beethoven

交響曲第8番ヘ長調 作品93

Brahms

交響曲第2番ニ長調 作品73

ハンス・クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィルハーモニー

ERMITAGE ERM157 1956年録音 アスコーナ・ライヴ 890円で購入/2006年売却済
DOCUMENTS 223602 CD10 10枚組1,206円(通販ポイント値引き適用後)にて再購入

 廉価盤化が怒濤のように進んだ21世紀、以前から定期的にCD処分は行っていたけれど、二束三文〜2006年よりオークションにて、望ましい相場で処分できることを知りました。このCDも激安ボックス再発を知って、単品処分したもの。300円だったかな?6枚は処分したはずだからナント購入分黒字!・・・って、人生カネだけじゃないのは当たり前。在庫を整理して聴くべき音源の精査をしようという趣旨であります。それにしても湯水の如くCDを購(あがな)い過ぎた・・・音楽を大切に聴かなくなることを反省。

 意匠を替えても音源の価値は変わりません。以下の文書は既に6年前だけれど、コメントに付け足すものはありません。ゆったりと素朴、悠然とスケール大きなBeethoven 。アンサンブルを整えることの無意味さ、空しさを思い知らされました。白眉は第3楽章「メヌエット」途中の”ゼネラル・パウゼ”後、おもむろに始まる優雅なホルン重奏でしょう。ミスタッチなんのその!味の濃さ、限りなし。そして仰け反るような超・鈍足なる終楽章にダメ押しのショックが連なる・・・21世紀には絶滅した音楽であります。

 これはBeethoven ではなく、クナッパーツブッシュを聴くべきCDです。それにしても凄い。終楽章の三連符のアクセントなんて、どーやったらあんな感じに重く仕上がるの?まさに爆演の極北也。

 Brahms のほうも印象変わらず、前曲に比べ異形なるテンポの揺れや、デフォルメは少ないと思います。アンサンブルのラフさは変わらないが、諄々とした流れの良さと、素朴な響きが作品に相応しい。ぐずぐず、ゆるゆる始まって、やがて熱を帯びて爽快に盛り上げていく手法は見事であります。味はたっぷり濃い口。第1楽章もホルンが印象的。音のひっくり返り、なんのその!

 第2楽章「アダージョ」の慈愛に充ちた表情、第3楽章スケルツォはデリケートで優しく、リズムの刻みは明確であります。

 終楽章、ものものしく、静かに様子を伺うようにスタート〜じっくりを腰を落ち着けたテンポから大爆発!重戦車の疾走だから、辺りを揺るがせて安易に走り過ぎない。呼吸あくまで深く、表面を磨かない不器用なるサウンド。ティンパニのアクセントは強烈です。しかし、これはあくまでBrahms の則(のり)を越えませんね。不器用で巨魁なるスケールを持った、魅力的な演奏だと思います。

 モノラル時代だけれど、音に広がりを付加して聴きやすい音質に仕上がっております。コンピレーションも優れた一枚でしょう。

(2007年12月7日)

 わずか3年前だけれど、自分の書いた文書を見るのは恥ずかしいもんです。じゃ、いまのはどうなんだ?と問われると、あまり成長がないのも事実で、根がいい加減なほうだから、とにかく再聴してコメントの付けなおし。勢いでこんなサイトを開いちゃったから、開き直りです。

 苦手なBeethoven ながら第8番は哲学的であり、革新的な傑作であることは間違いありません。3年前の自らの文書を省みると「ずっしりと重々しい大曲に変貌」とのことだけれど、これはワタシの前提がワインガルトナーとかハイティンク(LPO)、クリップス辺りにある(上品でバランス感覚有)からであって、いまならもう少し感想も異なります。

 まず、録音状態から。乾き気味で、奥行き残響も足りないが、分離は明快でごまかしはきかないはず。良い録音とは言い難いが、妙に鮮度がよろしい。アンサンブルは雑というか、もとよりぴったりと縦線を合わせようとする気もなくて、それにテンポがどんどん遅くなったり、思わぬゼネラル・パウゼもあって、オーケストラはたいへんでしょうなぁ。

 激遅テンポで始められる第1楽章。なにが「アレグロ・ヴィヴァーチェ」だ?ひとつひとつの音に貫禄と重量が加わるが、この重鈍な爺さんはえらくイキイキとしていて、しかも素朴で飾らない感じが好ましい。速い遅いの問題ではなくて、表面をなでただけのやる気なし演奏では困る、ということですよ。

 この曲の白眉、第2楽章こそ「哲学的」とでも呼びたい破格の現代音楽(当時の)。この一見単純(シンプル)な、旋律なき旋律からいかに深い意味を語らせるか?がポイント。クナは冗談のようでもあり、大真面目のようでもあり、なにやら苦行の中から真実の光が見えてくるような〜引きずる重いリズム。

 メヌエットも遅く、重苦しい。カラヤンのこの楽章も遅いですよね。でも、それは終楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」との対比を狙ったものでした。クナはひたすら遅いだけ。この重苦しさに意味などあるのでしょうか。「諸君、これは優雅な舞曲なんだよ」なんて言いたそうで、こんなリズムで踊れる奴なんかいるか、っていうの。

 終楽章は、もうどうにでもしてくれ、とでも言いたげな、確信犯的な超鈍足演奏でした。(だからメヌエットとの対比など考えられていない)「仰け反りっぱなし」とは3年前のワタシだけれど、その通り。中毒になりそうな演奏で、お勧めしません。(ワタシは好きですが)青少年は将来を誤るかも。この曲をこの演奏で覚えた方は、なにを聴いても薄味と感じることでしょう。

 Brahms の第2番には、違和感は少ないと思います。3年前は気にならなかった音質は、最初のうち少々気になりました。細部を整えないこと、あちこちでミスタッチが目に付くこと、そんなことを気になさる方にはお勧めしかねます。でも、この息深い旋律が良く歌うこと、悠然と大河が流れゆくようなスケール感は抜群でしょう。オーケストラの素朴な味わいがBrahms にはピタリとはまります。

 第1楽章は、じっくり噛みしめるような味わい深く、しかもここぞというところのキメも明快。第2楽章「アダージョ」のデリケートで、静かに語るような自然な息遣い。迫り来る哀しみ。第3楽章「アレグレット・グラツィオーソ」は意外と軽くスタートするが、テンポががっくり落ちたり、逆にスピードに乗ったりと変化が楽しめます。雄弁な「間」、旋律が膨らんで大きく深呼吸するかのような節回しが美しい。そう、この曲がこんなに美しいと感じたのも久々でした。

 終楽章。やはりこの爺さん、ものすごく元気でした。ヨロヨロと始めやがったな、なんて油断していると、一気に爆発して怒濤のガブリ寄り。(琴風が懐かしい)抜いたところでテンポを緩めるのもニクい効果。このオーケストラ、特別に際だったようなパートもないが、さきほど心許なかったホルンに思いっきり強奏させてみたり、ティンパニのビックリするような一撃を楽しませてくれました。

 Beethoven のほうはかなり異形だったが、こちらBrahms は「いかにも」という貫禄です。味わい深く、ゴツゴツしているが、満足度は極めて高い。終楽章のフレージングはどこも明快です。ラストの極限ルバート、続くアッチェランドもここまで決まれば文句ない。(音の状態は気にならなくなりました)

(2001年10月19日)↓ 自戒の意味も込めて、1998年このサイト開設当時の稚拙な文書もそのままに。


 最初に。ワタシは評論家のUさんのよう「クナ礼賛」でもないし、万難を排して「クナのCDは全部集める」つもりもありません。このCDも、たまたま博多のHMVを覗いたら890円で売っていたので買ったもの。そして・・・・・わがステレオから流れ出してきた音楽や如何に!

 ベートーヴェンの8番って「小味な交響曲」でしたよね。結局、最後まで仰け反りっぱなし。(こうだからERMITAGEはうかつには聴けない。)ずっしりと重々しい大曲に変貌していて、最終楽章に至っては鈍牛のようなスローテンポで、とんでもないテンポの揺れがもの凄い効果を生み出しています。(30分以上かかる)

 楽しめること限りなく、これはこれで名演、と言い切ってしまいましょう。いや、いままで聴いたうちのベスト・ワンかな〜というのも誤解を生みそう。音がまばら、というのでしょうか、アンサンブルの密度が薄いような・・・違うなぁ、とくにかく聴いたことないような重く、粗野な第8番。巧まざるユーモアさえ感じさせて、なんともいえない。観客の拍手が少ないのもやや納得。

 ブラームスの第2番。外面のアンサンブルを飾ることを一切拒否したような、ゴツゴツとした素朴な響き。深く、ずしりとしたリズム。ときどき、とんでもなくテンポを落としてしまって、仰天する。寡黙なお説教のようであり、背中で語るようでもある。

 思わぬ声部の突出も、あながち録音のせいとは云えない個性。ミュンヘン・フィルとの相性も最高で、洗練とはほど遠く、ものすごい迫力とスケール、しかも暖かくて、こんなに味わい深い演奏とはそう出会えない。いつもいつも聴きすぎて食傷気味のBrahms だけど、別の曲を聴くような妙な新鮮さ。説得力。

 「遅けりゃいいのか」「ヘロヘロのアンサンブルはクナだからって許せるのか」〜そうです、ハイ、と答えるしかない。ホルンがひっくり返ろうと、アンサンブルがあちこちズレようが、引きずろうが、音楽は鳴っている!(って、なんじゃこれ)もう、大笑いしながら(?)聴いて、あとはスッキリ。最高です。豪快。

 このCD録音がいいじゃないですか。年代的にモノラル録音でしょうが、なんとなく音の広がりも感じて聴きやすい音質。最新録音のようにはいきませんが、自然。(1998年頃原文執筆)


比較対象盤

この演奏とならば、どんなものでも「比較対象」となりうる。というか、別の曲にきこえます。
だから逆にオーソドックスにBeethoven の第8番だったらクリップス/LSO〜粋で軽快で、柔らかくて、オーケストラの音色が清潔な色気もあって・・・・、お勧め。

Brahms の第2番は、クライバー/ウィーン・フィルでしょう。こちらも飾らないが、自然児の若々しい勢いがタップリ。(2000年8月12日更新)


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written by wabisuke hayashi