Debussy 海/カンマ/遊戯
(エルネスト・ブール/南西ドイツ放送交響楽団)
Debussy
交響的素描「海」(1968年)
バレエ音楽「カンマ」(Charles Koechlin編/1987年)
舞踊詩「遊戯」(1984年)
エルネスト・ブール/南西ドイツ放送交響楽団
AUVIDIS E7800
この4枚組CD入手は1990年代前半、ぼちぼちLPを諦めてCDを買いだした頃のもの。CD4枚6,400円(税抜/中古)は廉価盤一筋だった自分にとって、PHILPSのMozart全集(ピアノ三重奏曲四重奏曲)と並んで、もっとも一枚あたり単価の高い買い物、棚中在庫現役であります。だからどーなの?と云われても思い出は深いもの。あまり熱心には聴いていなくて、四半世紀経ってしまって、こうして現役で再生できることに感謝しなくては。入手困難に至っているようです。(もう一セット20世紀音楽を入手してある)
Ernest Bour(1913ー2001)は往年の仏蘭西人指揮者、ストラスブール(歌劇場)〜バーデンバーデン(南西ドイツ放送交響楽団/1964ー1979)イメージとしては現代音楽を得意として、一時ダイソーの100円CDにも出現したMozartの交響曲集録音もありました。Debussy辺りは十八番(おはこ)なレパートリー、先日Ravel録音を取り上げておりました。年代バラバラでも質は揃って、残響豊かな音質は放送用録音でしょうか。ライヴのようなノイズや拍手はありません。
著名な「海」。曖昧模糊とした雰囲気はピエール・ブーレーズにて否定されました。21世紀、そんな論議も無意味なほど、こちら元祖・怜悧なゲンダイオンガク風演奏だったはずが、硬質サウンドのまま雰囲気たっぷりな明晰緻密演奏に鳴り響きました。「海の夜明けから真昼まで」は明快であり、クールそのもの微妙なニュアンスに充ちて時代が半世紀前の表現に追いついたということか(7:59)。「波の戯れ」は木管群金管楽器の上手さ、細部の彫琢に驚かされ、ブルー系流麗な弦の美しさにオーケストラの実力を見せつけます(6:07)。「風と海の対話」は迫りくる怪しい風のようす、次々と変わる風景、優秀なオーケストラを駆使して流麗に、金管炸裂して全曲を締め括って、完成度の高いもの。(7:30)
「カンマ」は作曲者の生前に演奏されなかったバレエ音楽とのこと。前奏曲(Prelude)/第1場(Tableau 1)/第2場(Tableau 2)/第3場(Tableau 3)からなる18:50。不気味な開始であり優雅、美しい瞬間連続、やや掴みどころのない旋律風情が続いて、演奏機会が少ないものちょっと頷ける感じ。作曲者の指示を受けたCharles Koechlinの管弦楽はピアノも入って、最終盤華やかな打楽器も参入して激しく昂揚いたしました。金管の軽妙な技巧はみごとなもの。この作品は自分にとって未だ掌中に入っておりません。
「遊戯」は18:30。これもピエール・ブレーズにて目覚めた作品也。例の「春の祭典」騒動と同時期の成立だそう。極めて前衛的な作品風情、自在な流れは従来の理解を超えて、作品全貌をつかむのにやや苦労する神秘的なもの。ここでもエルネスト・ブールの緻密な仕上げとニュアンスに感心して、所謂仏蘭西風情っぽいけど、本国仏蘭西のオーケストラでは実現できぬものでしょう。南西ドイツ放送交響楽団って、硬質に色気のない音、そんなイメージを一掃するクール・ブルー系のサウンドに溢れます。ま、硬質には間違いないけれど、隠しきれぬ”色気”が感じられました。 (2017年11月26日)
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