Ravel 左手のためのピアノ協奏曲ニ長調/ピアノ協奏曲ト長調
(ダニエル・ワイエンベルク(p)/
エルネスト・ブール/シャンゼリゼ劇場管弦楽団)


Gran Premio al Disco Ravel

左手のためのピアノ協奏曲ニ長調
ピアノ協奏曲ト長調

ダニエル・ワイエンベルク(p)/エルネスト・ブール/シャンゼリゼ劇場管弦楽団

ネットよりLP音源入手 1957年モノラル録音

 マルグリット・ロン門下のDaniel Wayenberg(1929-)はパリ生まれのヴェテランだそう。手持ち在庫を探索すると偶然発見、「Classical Clarinet」(ヘンク・デ・グラーフ(cl))Brilliantの2枚組、伴奏ピアノがダニエル・ワイエンベルクでした。これはぎりぎりステレオ録音に間に合わなかった(らしい)音源、シャンゼリゼ劇場管弦楽団というのは昨今話題の古楽器団体に非ず、フランス国立放送管弦楽団の変名みたい。

 BBSにて読者より「海外より違法音源入手はアカンやないか」と指摘され反省、このところ昔懐かしいパブリック・ドメイン音源(時代的にその辺りが自分の音楽原点)を見直しているところ。現在のスピーカーに変更したのがたしか2013年6月頃?ここ4年ほど歴史的音源をあまり聴いた記憶もなくて、これはフリッツ・ライナー/NBC交響楽団(1952年)と組み合わせた自主CDに収録して、久々の拝聴です。これがライナー/NBCの驚異的音質鮮度に仰け反って、こちらRavelのピアノ協奏曲はちょっと音質が落ちる・・・そんな記憶雲散霧消、意外なほど鮮明な音質をたっぷり堪能いたしました。歴史的音源+激安CDR=自主CD侮るべからず。

 「左手」って凄い作品ですよね。そう思って聴かぬと片手のみとは俄に気付かぬほどゴージャス、多彩なピアノ。難曲なんでしょうねぇ、きっと。コントラバス、チェロ、コントラファゴットによる怪しい低音で開始される「Lento」から華やかに盛り上がるオーケストラに割って入るソロのカデンツァ、最高っす。仏蘭西特有の管楽器のエッチなヴィヴラートに乗って、しっとりていねいなピアノが絡み合います。ラプソディっクなオーケストラの爆発、行進曲風にノリノリジャジィなリズム感もノリノリでっせ。

 途中、ピッコロに導かれる「おもちゃの行進曲」みたいなところがあるでしょ?ここ大好き。シンプルな旋律が繰り返されてアツく盛り上がっていくところも最高。ラスト、テンポを上げて冒頭の主題回帰〜長大なるカデンツァ(素晴らしい効果!)を経、堂々と締め括って、とても重厚”大きな”美しい作品でした。

 ピアノ協奏曲ト長調は「左手」と同時期の作品なんですってね。こちらはとても重厚”大きな”作品に非ず、ユーモラス軽快なテイスト。「のだめカンタービレ」で有名になったかな?冒頭の鞭とかトランペットの達者なソロとか、ブルースの風情たっぷりな”新しい”弾むような「Allegramente(アレグラメンテ「明るく、楽しげに」)であります。

 第2楽章「Adagio assai」は陶酔の叙情的なサラバンド。フクザツなポリリズムなんだそうで、ド・シロウトはひたすら静謐小粋な音楽やなぁ、そんな感心ばかり(どこがポリリズムやねん?)。ここはSatie(ジムノペディ)風か。第3楽章「Presto」はトランペット、小太鼓先頭に賑々しくも愉しいノリノリの華やかさ、最高。ここではStravinskyやらSatieの「パラード」の風情溢れて、Ravelならでは色彩豊かな世界が繰り広げられました。最高!

 ワイエンベルクは技巧文句なし、若手のように上滑りすることもなし、やや重さとまったりとした味わいがあります。現代音楽硬派な音楽を得意とするエルネスト・ブール(Ernest Bour, 1913ー2001)は南西ドイツ放送交響楽団就任前、Ravelには必須の緻密な音楽を作り出しております。

(2017年9月23日)

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written by wabisuke hayashi