Bruckner 交響曲第5番 変ロ長調
(ヨッフム/シュターツカペレ・ドレスデン)


Bruckner  交響曲第5番 変ロ長調(ヨッフム/シュターツカペレ・ドレスデン) Bruckner

交響曲第5番 変ロ長調(1878年版)  

ヨッフム/シュターツカペレ・ドレスデン

EMI 5 73905 2  73910 2   1980年録音 9枚組3,890円にて購入したウチの一枚(紙パック入り)*国内盤全集処分しての出戻り買い(第5番以降の終楽章が次のCDに押し出されていたため)〜が情けない

 ワタシ、Bruckner道場に一から入門しなおし必要です・・・と殊勝なことを言っていたのが2004年始め。正直なところ、かつてコメントしたBrucknerはすべて削除したいほど(ほんま!)恥ずかしく、混乱したままであります。あれほど思い悩み、すべて売り払ったティントナー全集を(性懲りもなく)再購入(昨年2005年7月)したり、更にはこの定評あるヨッフム全集がBRILLIANTから発売されたり(いっそうの廉価状況は喜ばしいが、少々”なんだかなぁ”みたいな感想もある)時代は動いております。

 ワタシはこの(なが〜い)交響曲第5番が大好きです。LP時代のクナッパーツブッシュ(1956年録音。悪名高きシャルク改訂版〜再評価の機運有)にも、CD時代のフルトヴェングラー(1951年)にも、文句なく感動いたしました。しかし、ワタシは版の問題はほぼわからない(1878年版って、作曲年だから原典版?)し、クナッパーツブッシュを特別に嗜好して収集しているわけでもない。先に書いたように、自らのティントナーの評価では今なお混迷を極めているし、たとえばブロムシュテットの第7番だってコメント混乱したままでして・・・市井の音楽好きとして原点に還らなくては。

 大切なのはやはり、ナマ体験なんだろうと思います。ワタシは第7番(加藤完二/岡山交響楽団)を2000年に、第8番(保科 洋/岡山大学交響楽団)を2003年に拝聴し、極めつけは2004年4月の第8番(ハイティンク/シュターツカペレ・ドレスデン)経験でしょう。正直、これ以降CDからしばらく遠ざかったものです。(ケンペ、そしてティントナー再購入辺りが再開だったのか)

 で、閑話休題(それはさておき)この、ヨッフム/ドレスデンの第5番をずいぶんと久々取り出して・・・涙が出るほど感動いたしました。やれ「EMIの録音は中低音が薄い」(ここではそんなことはない/万全ではないにせよ)とか、「ヨッフムは煽り過ぎで、貫禄が足りない」とか文句言い放題だったが、なんじゃこりゃ?シュターツカペレ・ドレスデンのブルー系の涼やかな響きが、奥行き深く、爽やかに響き渡ってひたすら気持ちよろしい。テンポの激動が表現方法として異なっても、あのハイティンク・ナマ体験を思い出せます。(同じオーケストラだから当たり前か)嗚呼、エエ音やなぁ、このオーケストラ・・・

 ・・・以上ここまで書いて、原稿放置数年(!)経過。ティントナー盤にも再度立ち戻ることが出来ました。録音がやや乾き気味、粒の粗さが感じられるにせよ、怒濤の感動に印象の変化なし、ということです。(全集中では良好な水準の音か)ヨッフムは基本”煽る”人だけれど、”立ちはだかる巨魁なる壁”を連想させる第1楽章には、”煽り感”少ないと思いますよ。ラスト落ち着きのないアッチェランドはあるけれど、オーケストラの響きの魅力(さわさわとした涼やかな・・・)には抗しがたい。

 第2楽章「アダージョ」は(例の如しの)コシのない弱音(収録)のせいか、様子わかりにくく開始されるが、やがて鈍く輝く弦が断固たるリズムを刻んで視界が開け、駄目押しの金管合流・・・これが、そびえ立つマッターホルン的荘厳な偉容を誇って、気品と威厳が漂う音色。鋭利に空気を切り裂くような、刺激的煌びやかな音ではないんです。(但し、弱音部分で弦が”弱く”感じるのは録音故か)

 第3楽章「スケルツォ」はリキみなく、やかましくヒステリックにならず、のびのびと疾走したり、テンポが揺れて気持ちがよろしい。エエリズム感ですね。金管の深み、弦の渋さ、木管の素朴な暖かさが混じり合って、やはりこの楽章はBruckner作品の白眉であります。余裕たっぷりの厚みのあるサウンドに満足。

 最終楽章。巨魁壮大荘厳な建築物のような作品が、涼やか雄弁なる金管と弦で存分に響き渡ります。旋律の煽り、疾走は時にヒステリックに感じて反発を感じるものだけれど、この断固として自信に充ちた爆発力推進力は効果的であって、興奮させられました。このオーケストラのブルー系の響きはほんまに素晴らしい。

 ここ最近、穏健素朴な演奏(例えばハイティンク、ケンペなど)を好んで聴いていたけれど、こちらこそ王道か?少々響きが濁るような気もするが、これは録音故か?1958年(バイエルン放送交響楽団)、1964年(コンセルトヘボウ管弦楽団)、そして1986年(コンセルトヘボウ管弦楽団)・・・どれも驚くほどの感銘をいただいた記憶があるが、再聴必要です。

 Brucknerは聴き手の体調やら精神状況によって、ガラリ印象を変えると思います。とくにヨッフムのEMI全集は、煽り過ぎ、元気良過ぎのテンションに耐えられなかったり、録音の質に疑念を感じたり・・・でも、本日時点では大丈夫でした。座右に常備すべき全集と確信します。

(2007年2月2日)

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written by wabisuke hayashi