Bach 管弦楽組曲第1〜3番
(ユーディ・メニューイン/バース音楽祭管弦楽団)


EMI 4243 4 83335 2 0 Bach

管弦楽組曲第1番ハ長調BWV1066
管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067
管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068

ユーディ・メニューイン/バース音楽祭管弦楽団/エレイン・シェファー(fl)

EMI 4243 4 83335 2 0 1960年録音

 いまでも高い評価を得ているカール・リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団とほぼ同時期の録音、LP時代銀色に輝くレーベル、気品漂う学究的ジャケット・デザイン、もの凄くご立派!厳しい重厚集中力アンサンブル、優秀なる音質・・・若いころは襟を糺して拝聴したものです。ここ10年ほど聴いていないかな?ブランデンブルク協奏曲も同じく、あまりに重く、堅苦しい、息が詰まるよう。バロック音楽の真髄はリズム、もともとは舞曲なんだから、もっと軽快軽妙柔軟に、愉しく奏しても良いじゃないの。

 1980年頃、ディジタル時代突入と前後して、古楽器による演奏が主流となりました。コレギウム・アウレウム(1969年)辺りが嚆矢かも。軽快軽妙素朴、そして快速!そちらのスタイルのほうがずっと好き。その後の古楽器隆盛は御存知の通り〜閑話休題(それはさておき)

 ユーディ・メニューイン(1916 - 1999)は、その高潔な人柄、教育者としての成果はともかく、ヴァイオリニストとしても、指揮者としても(エラソーな上から目線ご勘弁)いまいちな印象でした。以前はけっこう聴いたんですけど(Mozart とか、Beethoven )全部CD処分済。これは久々の拝聴となりました。なんというか、とてもフツウな演奏は妙に新鮮な手応え有、音楽の美食飽食に厭きて、日常生活に戻った感じ。子供の頃から馴染みの旋律が諄々と胸に染みます。

 1960年のEMI録音は、やや低音の甘いそれなりの音質。バース音楽祭の弦は表情豊かに整っているけれど、驚くほどの艶やかさを誇っているわけでもなし。誠実であり、親密、立派な構えの演奏じゃないんです。第1番ハ長調BWV1066のフランス風序曲はあまりに堂々朗々と演っちゃうと、逃げ出したくなる・・・第3番も同様。あまり急いたテンポでもなく、緩急緩はいかにも(かつての)常識的保守的穏健な設定。クーラントはそっと優しく優雅、ガヴォットは快活清潔であり、フォルラーヌもふたたび優雅な風情が柔らかい。ガヴォットも同様にリズムを強調せず、ブーレの弦はあまり美しくないなぁ、メニューインが弾き振りしているのか。

 管楽器は名手揃って、木管は安心できます。ラスト、パスピエもそっと優しく抑制が利いております。木管の入り、そっとテンポを落とすところも悪くない。管弦楽組曲ではこの第1番ハ長調が屈託がなくて、一番好き。

 著名な第2番ロ短調BWV1067は、言うまでもなくフルート協奏曲〜エレイン・シェファーって指揮者エフレム・クルツの奥さんでしたっけ?かつて、若きマゼールのかなり濃厚演奏を好んだものです。ここでも意外な集中力とアンサンブルの充実ぶり、テンポは(最後迄)中庸、やや重々しい開始なのは時代なのでしょうか。現代の古楽器なら、もっとスキップするように弾みますよね。ふくよか、清潔な音色のフルートであり、弦の響きは厚く豊かに響きます。続くロンドもそっとデリケート、サラバンドにはウェットな歌がありました。ブーレはあまり急がない。ポロネーズは足取りしっかり、ちょっと重いかも。メヌエットもほとんど様子は変わらず、バディネリは粛々とみごとなソロが締め括ります(繰り返しなし)。通奏低音にファゴット?入っているかも。

 第3番ニ長調BWV1068は、トランペットに+ティンパニ(カッコ良い!)を加え、立派な偉容を誇る作品!かと思ったら、ピノックを聴いたら、必ずしもそうでもないんですね。序曲は期待通りの朗々としたスケール、聴きどころは売れ筋旋律「アリア」でして、これがサラリとムーディ、一般に見られる現代楽器より速めのテンポはあっさり仕立て。エエ感じですよ。ガヴォットも馴染みの堂々たるトランペット炸裂、ブーレも雰囲気に変わりはなし。

 ラスト、ジーグも朗々堂々路線変わりません。リヒターに比べ、やや軽量なテイストで仕上げた保守本流演奏也。

(2012年12月8日)


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written by wabisuke hayashi