Bach 管弦楽組曲第2/3番(ロリン・マゼール/ベルリン放送交響楽団)


PHILIPS   DMP216 Bach

管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067
ロジェ・ブールダン(fl)

管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068
モーリス・アンドレ(tp)/ギュンター・パッシン(ob)

Handel

組曲「水上の音楽」(12曲)

ロリン・マゼール/ベルリン放送交響楽団

PHILIPS DMP216 1965年録音  970円で購入。

 2003年再聴。演奏スタイルの流行り廃れはめまぐるしい。「譜読み」についてはまったくのシロウトなのでようワカランが、Bach のリズムの取り方は昨今ではまるで違いますね。ルバートの有無は理解できないことはないが、アクセントの付け方によっては印象一変。でも、Bach って、どうやっても〜編曲しても〜基本的な造形が崩れない。

 だいたい現代楽器・フル・オーケストラでこういうレパートリーは消えたんじゃないかな。クレンペラー、カラヤン辺りでラストか。ああレヴァインがシカゴ響と、ブランデンブルク協奏曲第5番を演っていましたね。せいぜいMahler 編の「管弦楽組曲」をたまに耳にするくらいか。

 コレ、結論的にまったく新鮮!当時のベルリン放響(室内楽編成)は充実していて、ソロも滅茶苦茶上手い。イギリスのヴェテラン・ブールダンと名手アンドレは客演だろうが、ギュンター・パッシンは正真正銘のこの団体の主席です。(ワタシはこの人のオーボエが一番好き!「水上の音楽」でも、胸に浸みるような透明な音色を聴かせてくださいます)弦の有機的な響きを支えているのはコンマス豊田耕児さんのはず。

 ま、かなり勝手やって、自由自在に細部の表情を付けていること。強引です。マゼール当時35歳の若手バリバリ。かなり濃厚ではあるが、表現(おもしろく聴かせよう!と)への意欲が感じられます。メンゲルベルクのような老練ではなくて、もっと自由で勢いを感じますね。これは嬉しい。聴き手を存分に楽しませて下さる演奏。

 リズムが重くなっていないこと、第2番の詠嘆の表情、第3番における晴れやかな歓喜が明快に表現され、わかりやすい。有名なる「アリア」は、これほど「いかにも!」と決まっていて美しいのも滅多に経験できない。(楽譜どうなっているんですか?ここでは低弦がピツィカート。最近の古楽器系録音はそうなっていませんね)

 LP時代には録音の鮮明さに驚いたものだけれど、いま聴くとフツウのちゃんとした水準程度か。いつもの中低音豊かなPHILIPS録音に間違いはない。「水上の音楽」は、耳目を驚かすような奇異な表現は見あたらず、ひとつひとつオーソドックスに、イキイキと演奏が続きました。

 やっぱり第1/4番併せて全曲が欲しいね。LP時代、ムリムリ全4曲一枚に詰め込んだ凄いものを見掛けたこともありました。(2003年9月5日)


 まだ石油ショック〜狂乱物価(若い人は知らんでしょ。1974年)の前でしたが、1970年頃、コロムビア1000シリーズをきっかけに廉価盤LPが次々と出現しました。だいたい、国内盤は当時異様に高かったんですよね。2000円〜2300円。かといって輸入盤も当時は円が安くて、アルヒーフなんか宝物のように高価でした。

 当時、日本フォノグラムが各社対抗上、トドメのように出したのが「グロリア・シリーズ」〜@900円でした。記憶によると、1枚目にベイヌム/コンセルトヘボウのブラームス交響曲第4番(いまだに最高の名演と確信)、2枚目にこのマゼールのBach を購入したはず。

 当時若手の筆頭だったマゼールは、ギラギラするような個性と,問題提起に満ちた録音を続けておりました。録音当時は、ベルリン放響(いまのドイツ響)のシェフでした。(コンマスはなんと我等が豊田さん)

 いまとなってはリズムも重いし、ものすごく立派すぎる演奏に感じました。但し、アンサンブルの充実ぶりは尋常ではない。アンドレのトランペットは客演でしょうが、フルートもオーボエもすばらしい技量。(ブールダンとパッシンは当時のLPからの記憶による)有名な「アリア」の弦の透明で美しいこと。(当時の評価で「ウィーン・フィルのよう」というものもあったくらい)

   これはこれで、当時主流だった巨匠性を前面に出す演奏とは一線を画す、凝縮された演奏だったはず。テンポはかなり恣意的で、早すぎたり、異様に遅かったりが交互に出てきます。「不自然さ」と「若さの勢い」が渾然一体となって、説得力のある、これはこれで感動的な演奏。(1980年代にウィーン・フィルとの演奏会で、第2番をFM放送で聴きました。わりと常識的なテンポ設定でした。)最近の古楽器による演奏と比べると、別の音楽を聴くかのよう。

 できれば残りの第1・4番も手に入れたいもの。

 「水上の音楽」はCD化の余白サービス。
 記憶によれば「王宮の花火」と併せて「ドイツでもっとも売れたレコード」だったはず。(昔の話しです)12曲からなる組曲で、こちらのほうはその後、アーノンクールらの個性的な録音がたくさん出たせいか、とくに特別な印象は持ちませんでした。曲自体もあまり好きではない。

 音の状態は、LP時代目の覚めるような良い音だったはずが、少々劣化している。時の流れは仕方がないでしょ、けっして悪い音ではありません。

 これと同時期の録音として、マゼールはロ短調ミサ曲、ブランデンブルク協奏曲(これもLPで持っていたなぁ)、などもあったはず。CDは出ているのでしょうか、格安で出現するのを待ちましょう。(1998年)


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written by wabisuke hayashi