Wagner 「ヴァルキューレの騎行」
〜管弦楽名曲集(オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団)



Wagner「ヴァルキューレの騎行」〜管弦楽名曲集(オーマンディ) Wagner

「タンホイザー」序曲、行進曲
「ローエングリン」第3幕前奏曲
「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第1幕前奏曲
「トリスタンとイゾルデ」〜「前奏曲と愛の死」
「ジークフリート」〜「森のささやき」
「ヴァルキューレ」〜「ヴァルキューレの騎行」

オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

SONY  SRCR 1512 1959年録音 中古250円

 吉田秀和さんの本だったか、Wagnerの管弦楽ばかり集めた演奏会のことを「オペラのさわりを寄せ集めたような」とヨロシからぬ意味合いで言及されていた書籍があったと思います。どうなんでしょう。少なくともレコードの世界では、フルトヴェングラー、トスカニーニ、クナッパーツブッシュの時代から「ニーベルンクの指環」管弦楽抜粋みたいなものはポピュラーだし、演奏会でも時々ありますよね。(テンシュテット/ロンドン・フィルの1988年ラスト来日公演を連想します)

 オーマンディは歌劇場の出身ではないけれど、フィラデルフィアではストコフスキー以来のWagner管弦楽録音の録音伝統が存在します。ワタシは「アメリカのオケでWagnerかよ!」みたいな先入観ない訳じゃないが、考えてみればセル/クリーヴランド管(1968年)でワタシはこれらの作品に馴染んだ(中学生の時)わけだし、先日、ワルター/コロンビア響(1959年)でも、ショルティ/シカゴ響でも楽しんだし、ああ、そういえばライナー/シカゴ響というもっと凄いCDも持っていたじゃない・・・

 収録された作品が、おいしいところばかり・・・有名どころばかりだけど、コンピレーションとして出色の配慮だと思います。勇壮で元気よろしくノリノリで始まって、「トリスタン」と「森のささやき」あたりが静かなんですね。そして、ラスト「いかにも」的「ヴァルキューレの騎行」大爆発で締め。よくもまぁ、オケの威力を誇示する作品ばかり集めたこと。長調の作品ばかりですね。(「ヴァルキューレの騎行」は違ったか)

 結論。これほどゆったりと、豊かな気持ちでスカっとしたWagnerは滅多にありません。LP時代、あの刺激的な響き(このCD収録作品じゃないが)はなんだったんでしょう。1959年とは俄に信じがたい鮮明な録音。マスタリングの問題か、高音もキンキンせず余裕と厚みある「フィラデルフィア・サウンド」が楽しめます。弦はシルクのように艶やかな響き、余裕を持って鳴り響く華やかな金管。集中力あるアンサンブルの妙。燃え上がるような集中力。文句ないテクニック。

 「陰影に乏しい」「どれを演奏しても同じ」〜これは一理あるかも知れませんね。(どれを演奏しても同じ・・・に素晴らしい、と付け加えたい)すべて過不足なく、朗々と美しく歌われて、ウキウキするような躍動が溢れます。(少々騒がしいくらいか)「精神性ドラマ性に乏しい」〜これはいかがでしょうか。たしかにオーマンディはオペラ畑の出身じゃないけれど、これはこれ、ストレート系の爽やかな魅力だと思います。わずかばかりのテンポの揺れ、ルバートやらアッチェランドはそう効果的とは思えませんが。ま、ちょっと明るすぎ、騒がしすぎではあるけれど。

 「タンホイザー」2曲、「ローエングリン」第3幕前奏曲は、いかにも元気良く明るい作品じゃないですか。これはオーマンディの個性にピタリ!と予測が付きますね。「マイスタージンガー」は、もっと独逸の素朴な民衆の味わいが欲しいから、ちょっと方向が違うかな?と想像していたけど、意外なほどスケールが大きくて余裕の味わいが快い。

 問題はこのCD山場である「トリスタン」でして、曲想的にうんと官能的だし、それこそ陰影が欲しい作品でしょ。これは、もう極上のムード音楽でした。オケの色彩で聴かせる方向。「愛の死」ではそうとうに煽った表現になっていて少々やりすぎか、とも思いましたが。「森のささやき」は繊細な自然描写が絶妙であり、トランペットの雄叫びはどこまでも爽やか。「ヴァルキューレの騎行」に至っては、この朗々たる金管/木管の大爆発はオーマンディ/フィラデルフィア管のために存在する・・・(きっと、スタインバーグの「ツァラ」みたいに読者からクソミソに言われるんだろうなぁ・・・2004年8月6日)


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written by wabisuke hayashi