Tchaikovsky 交響曲第5番ホ短調 作品64
(クルツ/シュターツカペレ・ドレスデン)


Tchaikovsky 交響曲第5番ホ短調 作品64(クルツ/シュターツカペレ・ドレスデン) Tchaikovsky

交響曲第5番ホ短調 作品64

ジークフリート・クルツ/シュターツカペレ・ドレスデン

Ars Vivendi MRC 012  1978年録音 中古250円にて購入

 いえね、正直Tchaikovskyの交響曲は少々苦手で、これといって好みのタイプみたいな演奏はないんです。日本じゃ(いえいえ欧米でも)凄い人気ですよね。戦時中の独逸で敵国の作曲家であるTchaikovskyを演奏禁止にしようとしたが、猛反発でダメだった、という話しもあるらしい。さすがにこどもの頃から馴染みの作品故、細部まで旋律は暗記しております。(こどもの記憶力って驚異的!)で、二年ほど前、広島BOOK・OFFでこのCD発見、即購入。

 ああ、図書館で借りたクリップス/ウィーン・フィル(1958年)の演奏が素敵だったな。「第1楽章冒頭のクラリネットから音色の深みに度肝を抜かれ、甘やかで優しい節回しに痺れっぱなし。第2楽章のホルンも然り」「洗練され、歌心に溢れて『クサみ』(ロシア風)皆無。充実しきった最終楽章の力強さも存分だけれど、押しつけがましさ、五月蠅さもない」と。閑話休題。ジークフリート・クルツって誰やねん?1930年ドレスデン生まれ。旧東独逸で活躍したオペラ畑専門の人ですか?

 どんな演奏かというと、冷静沈着、かっちりと細部まで真面目一方に、ていねいに固めてみました、的演奏で、「憂愁の作曲家Tchaikovsky」ではなくて「優秀な作曲家」といったところか。詠嘆にテンポを揺らし、旋律を思いっきり歌う〜世界とはかなり縁が薄くて、いえ、我々は着実に、慎重にやっていきますから、風演奏です。立派です。冷静です。独逸的、と言っては元も子もないか。

 オーケストラがとても美しい。これぞいつも馴染みのシュターツカペレ・ドレスデンでしょう。ブルー系のひんやり洗練された、深く地味な弦の響き。金管が突出しない。バランス良く溶け合う各パート。誰が聴いても(ワタシでも)気付くが、第2楽章のホルンが痺れるほどセクシーに、若干のヴィヴラートを伴いながら(控えめに)歌います。ペーター・ダムに違いない。いえいえ、名手勢揃いの頃でしょ?ヨハネス・ワルター(fl)、そして目立たないが的確で端正なリズムを刻むペーター・ゾンダーマン(tim)。ほんまはあんまりメンバーのことはよう知らんが、オーボエ、クラリネットだって著名な名人なんでしょ?

 ああ美しい。だけれど、例えば第3楽章ワルツに甘さはない。最終楽章は、毅然とした姿勢を崩さぬままにフィナーレの熱気を加速させ(テンポではない)ます。先に書いたようにワタシはこの作品に「もっとロシア風じゃないと!」みたいな、自分の好みはないんです。しかし、クルツの表現が自分の嗜好に合っているかというと、そんなことはない。粛々と正確で、そして少々堅苦しい。

 でも、ドレスデンのオーケストラの美しさには何の疑念もありません。これがBrucknerだったらね、もっと楽しめるんだろうけど、Tchaikovskyってもっと感傷的で、甘さがあっても良いんじゃないか、と思います。これは彼らの個性を刻印した、存在感のある一枚に間違いなし。録音はそれなりの水準でした。(このCDを聴いた翌日、岡大響演奏会でこの作品を聴き、筆舌に尽くしがたいほど感動したことを付け加えておきます。2004年8月18日)


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written by wabisuke hayashi