Brahms 交響曲全集(オトマール・スウィトナー/シュターツカペレ・ベルリン)


Berlin Classics BC2137-2 Brahms

交響曲第1番ハ短調 作品68
交響曲第2番ニ長調 作品73
交響曲第3番ヘ長調 作品90
交響曲第4番ホ短調 作品98

オトマール・スウィトナー/シュターツカペレ・ベルリン

Berlin Classics BC2137-2 1984年〜86年録音

 N響への客演で日本のファンにもお馴染みなスウィトナーは、いったいどこに行ってしまったのでしょう。最近、とんと噂を聞きません。このCDは贅沢にも4曲4枚に収められたもので、きっとお店の値付け間違いでしょう、1,490円でした。近所のレンタル・ビデオ兼CDを売っているお店で買いました。

 Brahms の交響曲は何種類か持っていますが、「これぞBrahms 」という音だと思います。(スタインバーグ/PSOとは対照的。しかもこちらのほうが安かった!)
 弦や木管を主体とした渋い音色。金属的にならない金管楽器。オーケストラの響きを聴くだけで、このCDは価値がある。

 演奏そのものは全体にオーソドックスではありますが、第1番はテンポ早めで勢いもあり、かなり熱気に満ちた劇的なもの。ティンパニの強烈なショック、時にテンポの揺れ動きも凄い。オーケストラの音色が美しい。木管の夢見るような透明な響き。弦の細かいニュアンス。

 第2番は適正なテンポによる自然体の表現で、威圧感はどこにもない。オーボエ(脳髄に共鳴する音色)やフルートの渋い響きが、抑えた弦に乗って諄々と歌います。
 じつは、聴かせどころの歌は、テンポを少し落としているんですね。ホルンの深い響きは涙が出そうに美しい。
 なんと控えめな喜びの表現。思わせぶりな「間」も決まっている。そして最終楽章における畳みかけるようなテンポ・アップが、抑えに抑えたあとの対比による高揚の劇的効果。ラストのアッチェランドも熱い。

 4曲の中でひときわまとめにくい第3番は、息深く雄大なテンポで開始されます。
 第2楽章アンダンテの、控えめな表現と対比されて効果的でしょう。ひとつの旋律が歌われる度、低音の方から力が加わってくるのがわかります。

 有名な第3楽章は、囁くような表現でサラリと流しています。(クサく歌うよりこのほうが味わいが深い。ただしオーケストラの質による)最終楽章は低く抑えて開始して、ティンパニの一撃で爆発させるのは第1番と同じ手口。表現が少々重くて、いまひとつ勢いに乗り切れないでしょうか。最後は、また静かにテンポを落としながら終わります。

 第4番は、すなおにしっとりと開始されます。テンポも意外と早め。流れがよくて、すぐに音楽の中に入り込めました。なんの虚飾も力みもないのに、どんどん勢いがついてくるマジック。弦の歌の深さ。ここでも脳髄に浸みるオーボエの透明な響き。金管のいぶし銀の爆発。
 第2楽章の冒頭のホルンは、アルペンに響く角笛のよう。この楽章は、途方に暮れたような木管と、中間部の弦による幻想的な深呼吸の対比が聴きもの。サラリと力まず弦が入ってきて、自然体です。ものすごく細かいニュアンス。
 第3楽章は、うるさくなっちゃいけない。スウィトナーは、いままで抑えていたものを一気に吐き出すような迫力です。
 最終楽章は、オーケストラの力をすべて出し切ったような力演で、弦のうねりが押し寄せます。静かな部分の抑制は充分に美しく、フルートのソロが胸を打つ。やがて金管のいっせい攻撃から、緊張感が高まって少しずつテンポが早まります。ティンパニの打鍵は迫力を増し、燃えるような高揚のままフィナーレへ。

 ふだん他のCDでは聴けない(たまたま私のもっているCDだけ?)繰り返しもあって、2曲分がCD1枚に収まらない長さになっています。それにしても、なんのフィル・アップもない贅沢さ。(3番は38:49で1枚・・・もったいない)4曲続けて聴いても疲れない演奏です。

 ベルリンの壁崩壊前夜の頃の録音で、ある意味で戦前からのドイツの伝統を残しているのでしょうか。その後、バレボイムをシェフとして迎えたこのオーケストラの音はどう変わったのでしょうか。わたしはCDでも聴いたことはありません。

 自然で奥行きのある優秀録音。Berlin Classicsが、かなり意欲的に旧東ドイツの音源をCD化してくれているのは幸いなことです。


トーマス・ザンデルリンク/フィルハーモニア管弦楽団のBrahms 交響曲全集

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written by wabisuke hayashi