Brahms 交響曲第1番ハ短調
(ウィリアム・スタインバーグ/ピッツバーグ交響楽団)


Brahms

交響曲第1番ハ短調 作品68

ウィリアム・スタインバーグ/ピッツバーグ交響楽団

1961年 米COMMAND録音

 1995年はWindows95ブーム、たしかインターネットの民生開放も同じ年だったっけ。やがてホームページ作成(自分でタグ打ちをするもの)ブームがやってきて、それは数年で時代はブログ(ウェブ・ログ=簡易ホームページ、あらかじめ書式がつくってあるもの)へ、更にツイッターとかインスタグラムへと遷りました。旧態依然としたホームページ【♪ KechiKechi Classics ♪】はほとんど化石状態、たしか1998年夏開始、初年のヒット数はたしか1,500程度、それでも時代だったのか、けっこうたくさん濃いメールをいただいた記憶も夢のよう。その最初の記事のひとつがこのBrahmsだったはず。やがて幾星霜、ほぼ20年経過。

 音質芳しくない(やたらと金属的、一部左右逆)CD2枚分はやがて処分しました。21世紀はCD価格暴落、種々新しい録音を聴けるようになって、更に時代はネットからデータで音楽を聴ける時代へ。これは昨年2016年6月ネット(youtube)よりデータを落としたもの。.mp4/192kbpsでもけっこうフツウに聴けますよ。音源出目が異なるのか、それともこちらのオーディオ環境の変化なのか、ピッツバーグ交響楽団の金属的硬質重量級サウンドは馴染みでも、それに違和感を覚えることもほとんどなし。落ち着きのない速めのテンポに素っ気なくも飾りのない表現・・・のはずが、アツい推進力、馴染みの名曲は堂々としていつになく新鮮に響きました。

 古色蒼然とした独墺系地味渋サウンドを求めるのならちょいとアメリカンが過ぎるキンキラサウンド、でも表現は正統派だと思いますよ。

 二管編成なのにやたらと立派に響くハ短調交響曲。第1楽章「Un poco sostenuto - Allegro」重量感たっぷりの序奏を経、提示部の語り口も前のめりのアツいスケールに溢れて、但し、提示部繰り返しがないのは残念至極。オーケストラは馬力があるなぁ、記憶よりずっと入念な色付けはあって、テンポの揺れも自然なメリハリとなっております。(13:56)第2楽章「Andante sostenuto」これも記憶とまったく違う。さらりとしてニュアンス豊かな寂寥感たっぷり。緩徐楽章でもしっかりテンションの高さ、昂揚を感じさせるもの。後半戦のヴァイオリン・ソロは素敵ですよね。(10:19)

 第3楽章「Un poco allegretto e grazioso」は。ほっとするような「間奏曲」。メヌエットとかスケルツォを置かないのがBrahmsなりの新基軸だったのか。ここの金管はほんまに”アメリカン”、鋭く、明るく、朗々として各パート分離良く存在感を主張しております。(4:38)物々しい終楽章「Adagio - Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegro」の出足、この切迫感、集中力の素晴らしいこと!やがてホルンの嚠喨(りゅうりょう)と響き渡るコラールには少々違和感というか、まさに”アメリカン”な明るい響きに少々面食らいました。やがて弦による「喜びの歌」風旋律が諄々と変奏され、テンポアップ(やや粗いほど)テンション上がり続けます。表現に持って回ったところはないにせよ、けっこうテンポは動いてますね。オーケストラの響きは鋭く硬質に分厚く、重量感たっぷり、勢いも充分。朗々と歌って上手いオーケストラですよね。(16:42)

 鬱蒼とした響きをBrahmsに求めるなら、これは少々サウンドが明る過ぎ。それでもこれは表現的には王道、そして個性たっぷりな聴き応え充分なサウンドでした。20年前は「貧しいから安くて、あんまり音質も期待できなくて知名度もなくて・・・」そんなことを思っていたけど、William Steinberg(1899ー1978)は巨匠世代の立派な指揮者でした。

(2017年5月21日)

Brahms 交響曲全集
(ウィリアム・スタインバーグ/ピッツバーグ交響楽団)


MCA MCAD2-9817A MCAD2-9817B Brahms

交響曲第1番ハ短調 作品68
交響曲第3番ヘ長調 作品90

MCA MCAD2-9817A

交響曲第2番ニ長調 作品73
交響曲第4番ホ短調 作品98

MCA MCAD2-9817B

ウィリアム・スタインバーグ/ピッツバーグ交響楽団

1960年前後のステレオ録音 2枚2,000円で購入

 MCAのダブルデッカー・シリーズのなかで最初に購入したCD。COMMAND CLASSICSの録音。LP時代はカラヤン/ベルリン・フィル(旧)の全集を聴いていたので、エラい違いように驚いたものです。

 アメリカ的に明るく、馬力のあるオーケストラの音色。いわゆる先入観としてある「Brahms 」には無縁のサウンド。

 ホルンの朗々として馬鹿明るい音色など、かなり違和感有。軽い音ではありませんが、重厚というのにも縁がないオーケストラの響き。演奏自体はストレートで飾り気がなく、アンサンブルの細部を整えるより、勢いを重視するいつものスタインバーグのスタイル。(よく聴くとアンサンブルは悪くない。個々の演奏家が荒々しい音色なだけ)

 歌い口の工夫はないけど、早めのテンポで緊張感は持続します。「ノリ」は充分。第2番の終楽章における、息せき切った切迫感の勢い。しっとりとした、甘い旋律が有名な第3番の第3楽章なども、じつにそっけなくてあっという間に終わってしまう。どの曲も、あれよあれよという間に過ぎ去ってしまう。

 第4番は、ヴァンガードにも同時期の録音が存在するくらいですから得意の曲らしく、4曲の中では一番勢いのある演奏と評価できます。第1楽章から燃えるような意気込み。最終楽章の堂々たるルバートは、スケールも大きい。ま、聴きどころはこれくらいか。(・・・・と、乱暴に。第1番もキャピトルの録音がありました)

 ワタシ個人は充分楽しんで聴いてますが、録音があまりに金属的で損をしていると思います。肌理も粗い。そうとう聴き疲れする音質。音量をそう上げなくても「騒がしい」印象。たしかこのCOMMANDレーベルは、録音を売りものにしていたはずなんですけどね。(のち、他レーベルの録音でも同じ印象だったので、本当にこういう音なのでしょう)

 「Brahms ・サウンドは渋く重厚」といった先入観を打ち破る、アメリカのBrahms 。「Brahms は重苦しくていかんわ」という人にお勧め。元気は良いんですよ。演奏は好き好き、個性それぞれで、こういうのがあっても良いじゃないですか。ナマ演奏だと、きっと凄い迫力。

 とにかくCD2枚2,000円で全集ですからね、文句言っちゃいけませんよ。(それだったらカイルベルトのほうがいいか。ほかにも激安全集が次々出てきましたね)

 最近、あまりレコード屋さんの店頭で見かけませんが、安かったら試しに買ってみて下さい。きっと国内盤では再発はされないでしょう。

 え〜、情報をいただきました。このCDの第2番第3・4楽章は左右が入れ違っているのがマニアックであると。音が金属的なのは、トランペットがピストン式だからという詳細情報も。また、ドイツ風の良い演奏であるとのご意見もいただきました。


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