Shostakovich 交響曲第4番ハ短調
(ラディスラフ・スロヴァーク/スロヴァキア放送交響楽団)


NAXOS 8.550625 Shostakovich

交響曲第4番ハ短調 作品43

ラディスラフ・スロヴァーク/スロヴァキア放送交響楽団(ブラティスラヴァ)

NAXOS 8.550625 1988年録音

 Ladislav Slovak(1909ー1999)は往年のブラティスラヴァ出身の指揮者、このオーケストラは録音当時チェコ・スロヴァキア分裂前、CSR交響楽団とか云う名前でNAXOSに数多く録音を残しました。1990年頃は駅売海賊盤CD1,000円也が激安だった頃、@1,000だったこのShostakovich交響曲全集は衝撃の登場でしたよ。音楽はまず聴いてなんぼ、旧ソヴィエットの歴史的名盤は音質がよろしくないものが多かったし、値段も高かった!やがて、種々新しい全集録音が出現して、やがてルドルフ・バルシャイ激安全集にスロヴァーク全集は止めを刺されて・・・NAXOSも次世代のヴァシリー・ペトレンコ全集が出たから、これは主にNMLにて聴くしかない現状でしょう。

 政治的な意味合いも雲散霧消して、次世代次々世代は華々しいオーケストレーションの精華として、こだわりなく表現して、聴手も第5番を聴いて「露西亜革命万歳!」とは思わんでしょう。自分は長く苦手系としてShotakovichは敬遠気味、それでも徐々に拝聴機会は増えてようやく、遅れ馳せラディスラフ・スロヴァークと向き合う時期に至りました。作曲は1936年、初演は1961年という”悲運の交響曲”〜経緯はWikiを参照のこと。21世紀平成も終わりに至っても、この作品は重苦しく、晦渋な作品と感じます。巡り巡ってカッコ良い!と感じるように至った、4管編成134名が必要な大作とのこと。

 第1楽章「Allegretto poco Moderato」冒頭から衝撃的な輝かしく+重苦く呻くような響き、途方に暮れていながら力強い歩み。静寂と大音響が複雑に絡み合って、金管+打楽器の切れ味迫力は善戦してると思いますよ、ブラティスラヴァのオーケストラも。いやぁ、破壊的な響きっすね、この楽章。ファゴットのソロに導かれる静謐な場面も神妙に美しいけれど、弱音に説得力が落ちるのが技量の結果でしょう。バイエルン放送交響楽団(ヤンソンス)とかシカゴ交響楽団、コンセルトヘボウ管弦楽団(ハイティンク)辺り聴いた耳にはオーケストラの響きにやや不満(薄さ)を覚えんでもないけど、これだけ聴けばかなり立派、第2部展開部の「Presto」はモウレツな快速パッセージにオーケストラの技量が問われて、スロヴァークの統率に不満もない・・・と云いつつ、先日アンドリース・ネルソンス(ボストン交響楽団2018年)をちょろりと聴いたらオーケストラの上手いこと!語り口のわかりやすいこと。(28:18)

 第2楽章「Moderato con moto」は途方に暮れた寂しい主題の出足。これってスケルツォ(の成れの果て)なんですね。第1楽章も第2楽章も著名な交響曲第5番ニ短調に雰囲気似てますよ、どことなく。但し、あちらのほうがずっとわかりやすく大衆受け、こちらは重苦しく晦渋な空気充ちております。ここも静謐と大爆発を繰り返す複雑なフーガ、弱音部分が”弱く”行方不明に感じがち。木管も神妙過ぎて、もっと色気があってもよいではないか。大爆発にはいっそうの力強さを求めたいところ。(8:43)

 第3楽章「Largo - Allegro」低音管楽器による静謐深刻な出足(序奏)は葬送行進曲。やがて弦が参入して金管も合流して徐々に盛り上がっていくところ、なかなかカッコ良い音楽でっせ。ここも弱音部分が”弱”い(テンションが下がる)印象有(あとの弦も)。やがてリズムが変わってテンポアップ、前2楽章とは打って変わってノーテンキにユーモラスにシニカルに疾走する流れはいかにもShostakovich、途中ワルツ風リズムに変わって一筋縄ではいかぬ楽章です。ここを理想的に仕上げるのは至難の業なのか。

 やがて2台のティンパニが呼び水となって、トランペットのファンファーレ登場!決然とした不協和音がカッコ良い!第5番だったらそのまま”苦難から勝利へ”みたいになるんだけど、やがて静謐に収まって、断末魔のようなトランペットを最後に静かに死に絶える・・・ (27:57)

 語り口の上手さとかオーケストラの色気と迫力とか、いろいろ不満はあるけれど、音質もよろしいし、仕上げもていねい。まず、音楽はちゃんと聴くことが基本、というのは自戒です。

(2018年9月2日)
昔とても恥ずかしいコメント記録は以下の通り

Shostakovich 交響曲第5ニ短調/第9番 変ホ長調(2002年に言及)
Shostakovich 交響曲第8番ハ短調(2000−2002年に言及)


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written by wabisuke hayashi