Schubert 交響曲第9番ハ長調は別録音?
(ペーター・マーク/フィルハーモニア・フンガリカ)


Schubert 交響曲全集

ペーター・マーク/フィルハーモニア・フンガリカ(1969年)

CONCERTO ROYALE 206241-360  3枚組1,390円 ■CONCERTO ROYALE 206241-360 3枚組1,390円にて購入

交響曲第1番ニ長調/第2番 変ロ長調
交響曲第3番ニ長調/第4番ハ短調*
交響曲第8番ロ短調「未完成」/交響曲第9番ハ長調(第1/2楽章のみ)*

QUADROMANIA 222165-444  4枚組924円 ■QUADROMANIA 222165-444 4枚組924円にて購入

交響曲第3番ニ長調/第4番ハ短調*
交響曲第5番 変ロ長調/第6番ハ長調
交響曲第9番ハ長調全曲*/序曲 変ロ長調D470
(以上1969年)
アルペジョーネ・ソナタ(シュタインベルク編)
ニューバウアー(va)/ヘレッド/イスラエル・フィル(1998年)
ピアノ五重奏曲イ長調 作品114D935「鱒」
オハラ(p)/ロイヤル・フィルハーモニック・アンサンブル(1995年)
*はダブり

 これは2001年81歳にて亡くなった、往年の巨匠(但し、存在としては地味であった)の遺産です。米VOX原盤だけれど、正規ライセンスかどうかは怪しい・・・つまり実質海賊盤である可能性もあるとのこと。千度書き飽きた”ダブり買い”の話題ではなく、2001年に発売されたCONCERTO ROYALE盤を(昨年2004年)購入したら、肝心の第9番が第1/2楽章しか収録されない!という大乱暴編集であったのに驚いたものです。で、追って(ダブり買いで散々残苦労した)QUADROMANIAではあるが、4枚組924円(東京・新橋・キムラヤにて)という価格に免じて、思い切って追加購入したもの。

 これで全集(+α)いちおう揃いました。ワタシはSchubert の交響曲を(も、と言うべきか)少々苦手としていて、全集はハノーヴァー・バンド盤しか所有しておりません。今回も全面コメントするほど馴染んでも、聴き込んでもおりません。少々気付いたことのみ・・・自分のサイトを検索すると

第4番「悲劇的」はともかく、第3番ニ長調は馴染んでいななくて、これはSchubert の疾風怒濤作品なのかな?〜手探り状態で聴きました。このオーケストラ、ドラティのHaydnなどで有名だけれど独逸系の田舎の音(つまりちょっとカタくて重くて、洗練されない)がして、意外ときっちりとしたアンサンブルなのか、それともマークの棒の成果なのでしょうか?
 というコメント(音楽日誌)が発見されました。
ワタシ数多い苦手作品のひとつ〜Schubert 交響曲第9番ハ長調をペーター・マーク/フィルハーモニア・フンガリカ(1969年)を。但し、手持ちCONCERTO ROYALE盤(三枚組)はトンデモ収録盤で第1/2楽章しか収録されない。・・・ヘロ演奏だったらそれでも許すが、自然体に快く揺れる歌心に溢れ久々爽快!Schubert (交響曲)ってほんまに難しい。第3/4番ダブり覚悟で購入するか・・・悩むところ。ちなみに「未完成」もココロ擽る名演奏です。
 ああ、こんなことも書いてますね。んで結論的にダブり覚悟で購入したわけですな。すっかり忘れておりました。で、久々、馴染みの「未完成」から。

 この美しい名曲がほんまに難物でして、フツウに演ればそこそこ、どんなものでも楽しめるが、演奏者の個性を刻印しながら感動させるのはけっこう難しい。アーノンクール/ウィーン交響楽団盤にはかなり失望しました。マークは素朴さに溢れ洗練されない。木管を目立たせて明るく歌います。リズムがハズむように軽快であり、アンサンブルはやや洗練されないが、弦の性格付けは細かい。金管は飾らず、明るく、伸びやかに響きました。こんな楽しげな「未完成」も珍しいかも。でも、録音のせいか大音量で響きが濁るんです。

 で、じつはこれからが本題でして、このダブり買いの要因となった交響曲第9番ハ長調「ザ・グレート」・・・これが大問題。「CONCERTO ROYALE盤」は先行第2楽章のみの収録(非常識な!)、ようやくQUADROMANIA盤でようやく全曲聴けました・・・って、全然演奏が違うじゃない、コレ。ま、音質が異なる(QUADROMANIA盤のほうがずっと良好)のは、マスタリングが別である可能性がないでもない。でも、演奏が全然違う。誰もすぐわかりまっせ。別な録音です。マーク自身の別テイクなのか、それとも全然異なる録音が紛れ込んだのか?別テイクなら、2楽章分しか収録されなかったワケにも関連するのかも知れない。

 第1楽章、ホルンの茫洋としたソロから始まる序奏がありますよね。そして徐々にテンポ・アップして主部に突入する。問題は”テンポ・アップ”でして、QUADROMANIA盤では、(最初っから遅いテンポなのに)むしろタメを作っていっそうテンポ落として〜まるで弓を引き絞るように〜そして、一気に走り出すんです。あとは軽快に、颯爽と快い流れが続きます。しかし、CONCERTO ROYALE盤(以下CR盤)には主部突入前にテンポ・アップがちゃんと存在する。アンサンブルの精度・集中力も少々落ちるような気がするのは、音質問題印象かも知れませんが。つまりQUADROMANIA盤のほうがずっとよろしい。

 表記をそのまま信じると第1楽章 14:57(CR盤)/14:41(QUADROMANIA盤)、第2楽章14:16(CR盤)/14:41(QUADROMANIA盤)となって「誤差」とは言い難い差もあります。(ちなみに同じくダブり収録の交響曲第3/4番のタイム表示には有意の差異は認められない)第2楽章は、リズムが洗練され、表情が刻々と変化して繊細、メリハリがあって、決然と美しいのがQUADROMANIA盤。CR盤は素朴な響き(残響も少ない)で、田舎臭い(正直もの凄くヘタなオーケストラに聞こえる)味わいか。こちらはテンポの動きがやや唐突に感じられたりしますね。まるで別物であります。

 残りの2楽章分はQUADROMANIA盤しかありません。第3楽章スケルツォはあわてず、余裕の表情が優雅であり、リキみが感じられない。重くない。中間部のワルツは歌に溢れて聴きどころでした。終楽章も涼しい顔をして颯爽と軽快、強面ではない。テンポは中庸であって、抑制は利いているが、噛みしめるようなにこやかな味わいがあって、無用に走らないが、流れはとても良いと思います。爽やかなんです。「フィルハーニア・フンガリカって、こんな粋なサウンドでしたか?」というくらい、素直で奥行きがあることにも驚かされます。

 ラスト、華やかにアッチェランドして全曲を締めくくりました。序曲 変ロ長調も優雅で、よく歌う、キモチの良いもの。

(2005年10月21日)


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written by wabisuke hayashi