Sibelius 交響詩「フィンランディア」/交響詩「エン・サガ」/「トゥオネラの白鳥」/
「カレリア」組曲(マルコム・サージェント/ウィーン・フィル)


SERAPHIM EAC30057 EMI ASD541 Sibelius

交響詩「フィンランディア」作品26
交響詩「エン・サガ」作品9
4つの伝説曲 作品22より「トゥオネラの白鳥」*
「カレリア」組曲 作品11 「間奏曲」「バラード」*「行進曲風に」

マルコム・サージェント/ウィーン・フィルハーモニー/*ギュンター・ローレンツ(コール・アングレ)

EMI 1961年録音

 三度目の更新、前回拝聴は4年前でした。Malcolm Sargent(1895ー1967英国)は生前絶大な人気を誇ったそう、これは珍しいウィーン・フィルとの録音となります。20年ほど前のコメントにあるように、中学校の音楽室にあったのがEMIの赤盤LP、これは青春の刷り込みです。その後、ヘルベルト・カラヤン/ベルリン・フィルの「フィンランディア」(1964年)に出会って、若かった自分はスタイリッシュな表現、ティンパニの圧巻アクセントがカッコ良くて、”サージェントってちょっともっさりしているかも”〜そんな不埒な感慨に至ったものです。この4作品がオリジナルのLP収録。

 艱難辛苦抑圧から解放の賛歌へ交響詩「フィンランディア」はSibeliusの一番人気でしょう。久々の拝聴は音質まずまず、思ったより鮮度を維持して、冒頭の金管には厚みがあってウィーン・フィルは魅惑の響きでした。この辺りは4年前と寸分たがわぬ印象、弦の泣き木管の詠嘆もウィーン・フィルの魅力爆発、トランペットの呼応は息子が小さい頃「水戸黄門のテーマ」(嗚呼、人生に涙あり)と呼んでおりました。颯爽とメリハリあるカラヤンに比べ、主部への切り替えは穏健に「賛歌」の木管+弦も誠実な歌に充ちておりました。(8:48)

 交響詩「エン・サガ」は前回拝聴のコンピレーションからは外れていたもの。やや暗鬱な曲想が支配して難解?往年の巨匠がレパートリーとして、最近はやや人気がないかも知れません。20ほど前の感想は「ヨロヨロしている」〜ロリン・マゼールはウィーン・フィル交響曲全集時に録音していないから、フルトヴェングラー1950年ライヴ以来のレパートリー、オーケストラが作品に慣れていなかったかも知れません。弦楽のディヴィジ(分かれて演奏すること)が曇った心情を反映させているようで、なかなか効果的。ヨロヨロしてはいないけれど、颯爽とした足取りに非ず、ラストへ向けてテンポ・アップしてアツく盛り上げていくところはやや重い感じ。金管の迫力はなかなかでした。(18:34)

 三途の川に浮かぶ「トゥオネラの白鳥」。Cor anglais(仏)とは English horn(英)のこと、Dvora'kの交響曲第9番ホ短調「新世界より」の第2楽章「Largo」「家路」のソロで有名、オーボエより低音が出るんだそう。ウィーン・フィル往年の名手が繊細な弦によって表現される水の動きに浮かんで切々と絶品!やがて遠方よりホルンが木霊して、暗鬱なチェロが呼応するデリケートな名曲。20年ほど前よりヴェリ・ベストな演奏との確信有。(9:06)

 「カレリア」組曲はローティーン多感な時期に中学校の音楽室にて出会って、一発で惚れた作品でした。牧歌的に暖かい「間奏曲」はホルンの響きが魅力(3:14)「バラード」切々とした木管から練り上げられた弦がたっぷり歌って、Sibeliusのもっとも美しい作品旋律のひとつでしょう。後半にコール・アングレによる吟遊詩人の歌が寂しげに登場、Sibeliusはこの楽器が好きだったのですね。(7:17)ラスト軽快リズミカルな「行進曲風に」。 ウキウキのりのりのリズム感が愉しげ。(4:16)オリジナルの劇音楽「カレリア」(Kalevi Aho編)も一度聴いてみたいものです。(その後、2017年2月に聴いていたことを発見!情けない)

(2021年3月13日)

EMI7243 5 85785 2 2 Sibelius

「カレリア」序曲 作品10

アレクサンダー・ギブソン/スコティシュ・ナショナル管弦楽団(1966年)

「カレリア」組曲 作品11「間奏曲」「バラード」「行進曲風に」/4つの伝説曲 作品22より「トゥオネラの白鳥」
交響詩「フィンランディア」作品26

マルコム・サージェント/ウィーン・フィルハーモニー(1961年)

交響的幻想曲「ポヒョラの娘」作品49

マルコム・サージェント/BBC交響楽団(1958年)

交響詩「吟遊詩人」作品64/組曲「歴史的情景」第1番 作品25-3「Festivo」

アレクサンダー・ギブソン/スコティシュ・ナショナル管弦楽団(1966年)

初めての口づけ 作品37-1/春はいそぎ過ぎゆく 作品13-4/逢引きからもどった娘 作品37-5/黒いばら 作品36-1

シーヴ・ヴェンベルイ(s)/ジェフリー・パーソンズ(p)(1973年)

EMI7243 5 85785 2 2 2枚目

 中学生時代に出会ったマルコム・サージェント(Sir Harold Malcolm Watts Sargent, 1895ー1967)のSibelius、最近 劇音楽「カレリア」全曲(オスモ・ヴァンスカ/ラハティ交響楽団)を聴いてこの音源を思い出しました。以下のCDは処分済、その後類似の2枚組を入手しておりました。「エン・サガ」が抜けております。 これは既にパブリック・ドメインだからネットから拝聴可能。もうずいぶんと聴いていないな、昔馴染みの音源は改めて確認すると音質水準、往年の演奏スタイルにショックを受けることも時々あるから、ちょいと不安でした。

 最初に「カレリア」序曲 を配置したのは「組曲」の流れ、全曲を意識してのことでしょう。これが雄弁であり、憧憬と期待に充ちて清涼なサウンドを満喫できます。「間奏曲」の旋律も頻出します。グラスゴーのオーケストラは1959年から25年率いた母国の指揮者ギブソン(1926-1995)の薫陶によって、立派に鳴り響きました。このオーケストラは時に響きの薄さを感じさせなくもないけど、ここでは充分な響きと貫禄有。

 そして組曲の方「間奏曲」始まりました。遠い記憶ではリズムが重い?それは払拭されて、ウィーン・フィルの厚み、ウィンナ・ホルンのコクのある響きが鳴り響きます。「バラード」のしっとり練り上げられた弦は文句なし、少年時代の感銘がちょぴり蘇りましたよ。このデリケートな詠嘆はSibeliusの作品中屈指の魅惑でしょう。音質は危惧するほどの劣化に非ず、それなり満足できるもの。「アラ・マルチア」のリズム感というか、縦線のズレも気になっていたはずだけど、ウキウキとした躍動に不足なし、全体にまったりとした厚み、タメも佳きアクセント、半生記を経てこの小さな名曲との出会いを噛み締めておりました。

 「トゥオネラの白鳥」って三途の川に浮かぶ白鳥なんだそう。胸を締め付けるようなイングリッシュ・ホルンのジミな響き、旋律はもちろん、低音にくぐもって静かに鳴るのは大太鼓?そして遠くに鳴るホルン、弦のウェットな響きの深いこと!「フィンランディア」はウィーン・フィルの充実した金管を堪能すべきもの。(幾種もある)カラヤンの演奏はティンパニの劇的アクセントに愕然とした記憶有、それに比べると少々リズムのキレやら反応が鈍い(主部)と云っちゃ失礼か(オーケストラが作品に慣れていない?)厚みのある金管はたっぷりと鳴り響いて「フィンランディア賛歌」の木管と弦も誠実に歌われて泣かせますよ。

 「ポヒョラの娘」はオーケストラがBBC交響楽団に替わって、こちら手兵でしょう。たしかLP時代は交響曲第1番ホ短調のフィル・アップだったはず。音質良好。ウィーン・フィルに比べるとずいぶんと甘さも油脂分も控えめ、清涼な響きとなりました。指揮者との反応はよろしい感じ。例の如しやや難解な(旋律エピソードそのものは美しいもの)構成が見えにくい作品であります。冷涼な幻想風情はたっぷりと響いて、劇的であります。躍動感推進力もたっぷり、これは客演であるウィーン・フィルと異なる個性でしょう。

 交響詩「吟遊詩人」は知名度ぐっと落ちて、アレクサンダー・ギブソン再登場。ハープが可憐につぶやく叙情的な(泣ける)静謐作品であり、しっとりかつ清潔な語り口はみごとなもの。後半はハープが華麗に響いて、金管が呼応して盛り上がって・・・やはり内省的な風情に立ち戻る7:42也。「Festivo」はワクワクするような高揚感に溢れて、前曲と好対照、金管も晴れやかに軽快リズミカル(カスタネットも入る)素敵な作品でした。(7:04)

 あとは短い歌曲が4曲、シーヴ・ヴェンベルイ(s)って芬蘭土の方?言葉はわからなくても題名と旋律のみで暖かい、切ない情感が伝わりました。しっとりとした声質です。

(2017年2月4日)

EMI(ENCORE) CDE7677872 Sibelius

交響詩「フィンランディア」作品26
交響詩「エン・サガ」作品9
4つの伝説曲 作品22より「トゥオネラの白鳥」 * ギュンター・ローレンツ(コール・アングレ)
「カレリア」組曲 作品11

マルコム・サージェント/ウィーン・フィルハーモニー(1961年録音)

交響的幻想曲「ポヒョラの娘」作品49

マルコム・サージェント/BBC交響楽団(1958年録音)

EMI(ENCORE) CDE7677872  個人輸入で$1.99


 2003年。デフレ経済も極まって廉価盤の爛熟期を迎えています。苦労して廉価盤を探した数年前がウソのよう。逆に急速に「ありがたみ〜音楽媒体に対する畏敬の念」が薄れがちになる。つまり、音楽をていねいに聴かなくなることを自戒しなくては・・・と思う今日この頃です。

 スランプのワタシは原点に帰らなくては〜この録音、「ポヒョラ」を除く4曲収録の「赤盤」LPは中学の音楽室にありました。なんやらもっさりした演奏だった記憶があるが、Sibelius は好きになりました。社会人になってから廉価盤LPで買い直したはず。そしてCDへ。前回2001年更新時には「どこでも買える」なんて書いたけれど、今はいかがでしょうか。

 印象はいつまでも変わらず、好きです、ワタシ、この演奏。はっきり言ってユルい。現代風、颯爽としたリズム感のある演奏ではない。アンサンブルもそう緻密とは言いがたい・・・・でもね、なんでしょ?この、包み込むような清涼なる雰囲気。聴いていてホッとするような味わい。

 ウィーン・フィルの金管の魅力爆発です。「フィンランディア」冒頭から、ぽってりとした厚みに圧倒され、ふっくらとした木管がそれを受けて、天下の弦が泣きます。ティンパニが、なんとなく間が抜けているように聞こえなくもないが、これはワタシの誤解でしょう。なんやらコクのある逸品。やや重いようだけれど、Sibelius との違和感はない。

 ま、あとは2年前の印象となんら変わらず。「エン・サガ」も「カレリア」も、ヨロヨロしているようではあるが、ワタシはこの演奏でこの曲の美しさを知りました。「トゥオネラ」は文句なし。BBC響との「ポヒョラ」もツボにはまっていて、ウィーン・フィルに負けないできあがりとなっておりました。

 EMI録音にしちゃ、ずいぶんと奥行きもあるし、上出来の音質でした。機会があればぜひお試し下さい。(2003年3月14日)

 


 往年のイギリス紳士、サージェント(1895〜1967)による得意のシベリウス。しかも珍しくウィーン・フィルとの録音。LP時代からお気に入りでした。BBC響との「ポヒョラの娘」も、交響曲第1番とともに「セラフィム1000シリーズ」で出ていました。イギリスにはシベリウス演奏の伝統が脈々と流れていて、EMIにも信じられないくらい多くの音源が残されているはず。

 ・・・・・というような理由で、たいへんお安い価格でどんどんCD化されて欲しいもの。

 有名な「フィンランディア」。(2000年末発行の「リーダーズ・チョイス」ではナント人気No.2!の演奏)冒頭からウィーン・フィルの充実しきった金管の、その暖かさ、深さ、弦のため息のような旋律も、魅力充分。カラヤンのような芝居っけはないし、ややリズムがユルい感じはあるが、満足度は高くてシミジミ。

 「エン・サガ」は、少々難解でまとめにくい曲でしょうか。あちこちリズムのよろけはあります。上品な佇まいは崩れていなくて、リキみもないのは好感を持てました。幻想的な味わいは充分、ウィーン・フィルの木管も金管もほんとうに美しい。荒涼たる雰囲気もタップリ。

 「トゥオネラの白鳥」は、コール・アングレの心に染みるような音色が印象的。(チェロのソロも痺れるほど)終始弱音で支え続ける弦の繊細さは出色。今まで聴いたうちではベストの演奏のひとつでしょう。文句なし。

 「カレリア」は、インテルメッツォのにぎにぎしい元気良さ(ホルンの深く、美しいこと!)、バラードにおける練り上げられた弦の切なさも絶好調。行進曲は、リズムが野暮ったいけれど華やかなオーケストラの音色が生かされて、楽しさいっぱいでした。

 シベリウスには独特の涼やかな響きが必要でしょう。ウィーン・フィルにはちょっと濃すぎるかな、と思っていました。ところがサージェントの技量なのでしょうか、いつもの奥深い響きそのままに、爽やかさも充分。録音も自然で、この時期のEMIとしては、音に腰もあって出色です。

 「ポヒョラの娘」はBBC響へと変わっています。華やかさはないけれど、指揮者との相性はこちらの方が上でしょう。木管の色気には負けるが、ウィーン・フィルより反応が早く、軽快。燃えるような情熱と、荒涼とした北欧の自然が表現されます。音の状態も録音年からは想像できないほどで、意外と明快。(1998年〜2001年改訂)


シベリウス管弦楽曲集(スカーマーホーン)〜NAXOS


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi