Vaughan Williams 交響曲第2番「ロンドン交響曲」
(ヘンリー・ウッド/クイーンズホール管弦楽団1936年録音)


HISTORY 204555-308/40枚組3,100円にて処分済(購入金額の半額です) Vaughan Williams

交響曲第2番「ロンドン交響曲」(1936年録音)

Schubert /Liszt編

さすらい人幻想曲

クリフォード・カーゾン(p)(1936年録音)

Elgar

威風堂々第1番/4番 

ヘンリー・ウッド/クイーンズ・ホール管弦楽団(1940年録音)

HISTORY 204555-308 The 20th Century Maestros40枚組(5,990円税抜/購入)のウチの一枚

 この原稿がサイト更新された時、既にCDはどこかの音楽ファンの手元に渡っております。「History(Docments)の黄昏」(BBS書き込み)とは上手い表現であって、21世紀とともに登場した激安歴史的録音ボックスが、その後のCD価格相場を破壊してしまいました。そして、「オールド・ファンには申し訳ないが、”一通り聴いた”といった手応えあって、狭い収納スペースから全国に順次送り出しております(金額の多寡によらず) 」(ワタシの返答)と。著作隣接権切れとディジタル機器の大衆化によって、現在ならこの価格相場の訳も理解できます。

 歴史的録音を一律に否定するつもりは全然ないが、例えば先日購入した「バイロイト33枚ボックス」は、ここ8〜10年苦戦した(ほぼ同作品)劣悪音質歴史的録音Wagnerボックス(計2種29枚)を処分した金額で入手できました。ド・シロウトには、良い音質状態のほうがわかりやすいに決まっている。

 サー・ヘンリー・ウッド(Sir Henry (Joseph) Wood, 1869年〜1944年)は英国戦前の名指揮者であって、彼の録音が聴かれる機会は少ないと思います。

 Vaunghan Williamsは淡彩であり、やや難解なる作品が多いような気がする(じつは激しい不協和音作品も有)けれど、ツボを発見できれば「グリーンスリーヴス」同様の感銘を保証して下さいます。既にオウェイン・アーウェル・ヒューズ/フィルハーモニア管弦楽団(1988年)盤をサイトに掲載しているが、このヘンリー・ウッド盤は、音質的、アンサンブル的にも、少々緻密さが不足がちながら、ワタシの「ロンドン交響曲」開眼の一枚也。一般に英国音楽はメリハリ少なく、穏健静謐な旋律が全体像をつかみにくくしていると思います。この太古歴史的録音は、劇的雄弁骨太表現にて(録音技術的制約もあったのでしょう)弱音を押さえすぎず、旋律サウンドがとてもわかりやすい。しかも、静謐な部分での説得力抜群。

 一部カットがあるとのことだけれど、たしかこの作品の初録音であって、清明なる心情と、思わぬユーモアの対比が初めて理解できましたね。年代を考えると音の状態は良好だし、クイーンズホール管弦楽団には浪漫の色濃い残り香があります。使用楽器も現代とは少々違うのかも。物憂い夜明けの情景にビッグ・ベンの鐘が静か(ここではかなり大きな音〜まるでピアノのよう)に鳴り渡る第1楽章。一気に都会の喧噪へ移行して、快活かつ剽軽な空気が流れる。この辺りは絶妙、元気で濃い太字表現となります。

 第2楽章「レント」はまるで日本の旋律のような歌(節回し)があり、鈴が効果的に使用されます。感極まる懐かしい旋律は「タリス幻想曲」を連想させます。静謐な楽章は、太古録音ではどうしても繊細さを失いがちになるが、ウッドの表現はわかりやすい。第3楽章「スケルツォ」(夜想曲の副題を持つ)は細かい音型がリズムに乗って不安げに走り続けます。中間部では、やはり日本の童謡のような剽軽な旋律も顔を出すが、流れはあくまで自然。そして力感に溢れ、浪漫の色濃い表情も出現。

 終楽章「アンダンテ・コン・モト」には堂々たる(どこか物々しい”後期浪漫”の)貫禄の足取りがあります。テンポは揺れ動くが、表現として恣意的な、前時代的感覚ではない。存分に盛り上がって、やがてビッグ・ベンの鐘が回帰(なんか変な音?)して、ロンドンの夜は霧に包まれる・・・

 Liszt編の「さすらい人幻想曲」は、けっこう録音もあるんだけれど、せっかくのSchubert の含羞が”ピアニストのヴィルトゥオーゾ”に置き換わってしまう、トンデモ編曲版です。原曲はともかく、クリフォード・カーゾンの凛々しい個性に似合っているか少々疑問、というか、作品そのものがすっかり変貌してしまって大時代っぽい。カーゾンのソロは(例の如し)知的な姿勢を崩さないが、これは音質も少々落ちます。原曲の矜持は感じ取れるかな?第2楽章「アダージョ」表題となった「さすらい人」の旋律は暗く、深い表現でした。

 ラスト「威風堂々第1番/4番」は、このCDを締め括るアンコール。最近では聴けない、やや遅めのテンポからアツく揺れ、濃〜い、賑々しい演奏であります。なんせ”プロムス”を50年ほど担当した人ですから。

(2009年3月13日)

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