Vaughan Williams 南極交響曲(交響曲第7番)/オーボエ協奏曲イ短調/
バス・チューバ協奏曲ヘ短調(ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団)


EMI CMS 5 66543 2 Vaughan Williams

オーボエ協奏曲イ短調
イヴリン・ロスウェル(ob)/ロンドン交響楽団(1955年)

バス・チューバ協奏曲ヘ短調
フィリップ・カテリネット(tub)/ロンドン交響楽団(1954年)

南極交響曲(交響曲第7番)
マーガレット・リッチー(s)/ローレンス・コリングウッド(or)(1953年)

ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団/合唱団

EMI CMS 5 66543 2 オークションでまとめてなんぼ!的入札。とにかく安かった(2枚組)

 ノンビリとした週末の朝は早朝覚醒、昨日拝聴分は「音楽日誌」に執筆、さて週一回の【♪ KechiKechi Classics ♪】はなにを更新しましょうと逡巡しておりました。ここしばらくCDプレーヤー(中古DVDプレーヤー流用)稼働しておらず、久々棚中よりMahler 交響曲第5番 嬰ヘ短調〜ジョン・バルビローリ/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(1969年)取り出して、クリアな音質、オーケストラの清潔、明るい響き、あくまで横流れにゆったり、まったり、しっとりとした歌に酔い痴れたものです。

 そうだ!ジョン・バルビローリ(1899-1970)を聴こう。好き嫌い、作品に似合っている?それは別として、残されたどの録音も彼の強烈濃厚な個性横溢、それは時代の産物だったんでしょうか。この英国音楽2枚組(モノラル)の2枚目も言及済、5年前、一枚目のコメントはあまりに素っ気なさ過ぎた記憶もありました。相変わらず独墺系(+露西亜)偏重人気な日本、英国音楽のブームはやってきませんね。British Composerという(今は亡き)EMIのシリーズはデザインが秀逸。

 イヴリン・ロスウェル(1911-2008)は最近まで存命だったのですね。オーボエ協奏曲イ短調はほの暗く、甘く遣る瀬ない旋律が自在に歌います。5年前のワタシは”切ない寂寥と自然風景を感じさせる”と書いてありますね。(言い過ぎが許されれば)日本の演歌に一脈通じるような哀愁漂います。3楽章全20分ほどの短い作品は、時にユーモラス(第2楽章「Minuet and Musette」)表情豊かに纏綿としたオーボエによって陰影深く表現されました。夫君による入念な味付けに支えられ、終楽章「Scherzo」は流麗華やかな技巧によって骨太に、名残惜しく締め括られます。

 神経質さを感じさせぬ、暖かくも大きく歌うオーボエ。音質も良好です。我らがヴォルフガングを別格に、これはオーボ協奏曲名曲中の名曲也。

 チューバ協奏曲ヘ短調はこの楽器(知られている)唯一無二の作品でしょう。愉しげユーモラスなリズムと旋律、大昔の時代劇映画風音楽みたい。演奏はいかにもタイヘンそうな13分ほど、第1楽章「Prelude: Allegro moderato」のリズムは「魔法使いの弟子」みたいなノリノリ、カデンツァも間違いなく超絶技巧でしょう。第2楽章「Romanza: Andante sostenuto」甘美なロマンツェはチューバのファルセット・ヴォイスなんです。懐かしく、安寧な甘い愛の詩でっせ。第3楽章「Finale: Rondo all tedesca: Allegro」は勇壮な、カッコよい劇的音楽、巨漢力士の華麗なるダンスみたい。

 Symphony No. 7 "Sinfonia antartica"は元は映画音楽。これもかなり音質良好、オーケストラの弱さを感じさせぬ仕上げであります。台詞朗読収録されず。「世界最悪の旅―スコット南極探検隊」読んでみてくださいよ、悲惨で泣けますから。子供の頃より刷り込みである上品なアンドレ・プレヴィン(1968年)に比べ、こちらかなり劇的。第1楽章「Prelude: Andante maestoso」に於ける雪女風女声ヴォカリーズ、冷たいダイヤモンドダストを散りばめたサウンドに抗う、人間の激しい葛藤が聴き取れます。第2楽章「Scherzo: Moderato」リズミカル、ユーモラスなスケルツォ楽章もキラキラ雄弁、激しく大きな表現はアツいもの。

 第3楽章「Landscape: Lento」は静謐、荒涼とした白く無情な情景が広がります。やがてオルガンによる審判のような荘厳な嘆きは、なにか事件でも起こったのでしょうか。スコット隊の絶望の進行、重い足取りを表現しているのか。この中間楽章が全曲の白眉なんでしょう、ここの高揚が十数年、ずっと記憶に残りました。第4楽章「Intermezzo: Andante sostenuto-Allegretto-Pesante-Tempo primo tranquillo」は、ほんつかの間の安寧なのか。

 終楽章「Epilogue: Alla marcia, moderato (non troppo allegro) - Andante maestoso」。決然劇的な開始はバルビローリの真骨頂でしょう。燃えるように絶望的な嘆きを表現して、オーケストラは爆発します。ウィンド・マシーンも、雪女の妖しい呼び声も再登場して第1楽章主題回帰、これはスコット隊への哀しい追悼でしょう。元が映画音楽だから素直に情景を連想すればよいのでしょう。旋律風情はわかりやすいけど、独墺系かっちりとした構成の交響曲を期待すると、掴みどころなく難解かも。RVWの懐かしい民謡風旋律は大好きです。

(2015年9月12日)

 すべてモノラル録音の2枚組(1枚目)。いきなり夫人(当時のハレ管首席)によるオーボエ協奏曲で開始されます。剽軽軽妙、端正であり、しっとり気品漂う素敵なソロ。暖かく、明るい音色。バルビローリは慈しむようにていねい、しっとり包み込むような伴奏を付けております。オーボエ協奏曲というとMozart の印象が強くて、こんな切ない寂寥と自然風景を感じさせるのも貴重な魅力でしょう。チューバ協奏曲ヘ短調はほとんど唯一無二、この巨大なる楽器の著名なる協奏曲であります。フィリップ・カテリネットは当時ロンドン交響楽団の首席であって、指揮者ソロとも初演メンバーによる録音記録となります。

 ユーモラスであり、よく歌って、楽しげな旋律連続!ま、超絶技巧なんでしょうね。初演が1954年だから、その直後の録音か。第2楽章「ロマンツェ」は繊細で懐かしい。チューバはファルセットで存分に歌うんです。

 南極交響曲のオリジナルは「南極のスコット」の映画音楽であり、おそらくこれは初演と同時期、同じメンバーによる録音と類推します。ナレーションはなし(各楽章に挟むのは作曲者の意図に反するそう/格調高い雰囲気は出ます)。淡彩で情感の起伏の少ない(大自然の情景のみ?)、しかもメリハリある構成が曖昧なる作品であって、独墺系交響曲に慣れている日本人には人気出ないでしょうね。さらさらと無定見な幻想曲であり、散文的であり、つかみ所がない・・・が、子供の頃から聴き慣れているワタシには、まさにツボ。ウィンド・マシーン、オルガン(カッコ良い!)、女声の効果も決まっております。バルビローリはまったりと自信に溢れたアンサンブルであって、作品に対する誇りというか確信に充ちて、充実したサウンドに至っております。

 ハレ管って、御大バルビローリの指揮、作品を得ると凄い演奏に至るマジックが発生しております。音質はモノラルながら、意外と聴きやすいもの。

(2010年10月10日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi