Chopin 即興曲集/舟唄/練習曲/ボレロ/子守唄/
タランテラ/ アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ
(アルトゥール・ルービンシュタイン(p))


RCA GD60822 11枚組 Chopin

即興曲 第1番 変イ長調 作品29/第2番 嬰ヘ長調 作品36/第3番 変ト長調 作品51
第4番 幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66
舟歌 嬰ヘ長調 作品60
3つの新練習曲(モシェレスのメトードのための)
ボレロ 作品19
子守歌 変ニ長調 作品57
タランテラ 変イ長調 作品43
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22

アルトゥール・ルービンシュタイン(p)

RCA GD60822 1962-65年録音

 Arthur Rubinstein(1887ー1982波蘭)は長命を保って、偉大なる名声と膨大なる録音を残してくださいました。これは駅売海賊盤以来の愛聴盤。その後正規盤をまとめて入手、やがてCDはほとんどすべて処分してデータ拝聴する時代がやってきております。協奏曲は別にして、Chopinの独奏曲はこれが出会い、ほとんど刷り込みだから作品演奏含めて一番好き。種々多様にあちこち聴いても、この暖かい優しいタッチに戻ってしまうヴェリ・ベスト。音質含め、絶品。

 即興曲 第1番 変イ長調は浮き立つような気まぐれに洒脱、ほのかに哀しい(4:14)第2番 嬰ヘ長調はゆったりと優雅に夢見るような躊躇いがちの風情に、中間部にはしっかり歩みも感じられました。後半目まぐるしい音形にも優雅を失わぬもの。(6:01)第3番 変ト長調は快活な表情明るく、微妙にデリケートな陰りも味わいあるもの(4:50)著名な幻想即興曲は劇的なパッセージ連続が力みなく流麗かつマイルドに、微妙なタメと揺れが懐かしいもの。(5:17)

 舟歌 嬰ヘ長調 作品60は切なく、甘く、不安に船が揺れるようなリズム感が全体を支配する優雅な作品。自然に劇性を増していく幅の広い絶品表現に酔いしれます。(9:28)3つの新練習曲はヘ短調ー変イ長調ー変ニ長調からなる短い作品。つぶやいているうちに終わってしまう、儚い、静かな作品でした。(5:46)ボレロと云えばRavelを連想するけれど、厳格なリズムに支配されぬ自在に劇的なもの。イ短調の主部はボレロだけど、夜想曲風情も出現、全体を支配する調性も不明に気まぐれ・・・とはWikiからの引用です。自分はマズルカのリズムを感じ取りました。こんな作品を熟達の表現にまとめ上げるのがルービンシュタインの技量なのでしょう。(8:22)

 子守歌は微睡むように優しい繰り返し絶品。(4:35)タランテラとはナポリの舞曲らしい。ほの暗く快活なリズムが一気に駆け抜けました。(3:16)

 そしてラストはアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ。若かった自分はこの作品との出会いに心ときめきました。ルービンシュタインに出会ったから、やがてフルードリ・グルダやアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリを聴いても違和感が拭えない。ルービンシュタイン自身による管弦楽伴奏版を聴いても、それは蛇足に感じたものです。清流が静々と流れいくような「アンダンテ・スピアナート」は懐かしく、心情が微妙に揺らぐような陰りも絶品。後半快活なポロネーズへの経過部分は名残惜しく、優しく柔らかく振り返るような風情絶品!そして大ポロネーズの優美な大きさ、まったりとしたリズムの揺れは快感、洒脱な大団円ぶり、これは技術的に上手いだけでは説明のつかぬ世界なのでしょう。(15:01)

(2022年7月2日更新)

ECHO INDUSTRY(RCAの海賊コピー盤) ECC-625 1962-65年録音

 「安物買いの銭失い」というか、アルトゥール・ルービンシュタインのChopin 正規盤は@500ほどでボックス購入可能になりました。ワタシは1990年代前半、そのほとんどを海賊盤(当時はそれでも存分に安かった)で購入したものです。価格もこなれてきたし、再購入する価値はあると思うが、生来の貧乏性のためその勇気が出ません。まだ使えるもの、少々機能的に不便があっても、それを捨て去って新たに買う〜そんなことはできない育ちなんです。道義的にはごめんなさい。10年以上お世話になってきたし。

 この一枚〜ワタシのChopin 開眼の絶対的存在なんです。ルービンシュタインのChopin など「気の抜けたサイダー」とか、厳しいご批判も存在するが、いろいろ聴いてみて、やはりこれが一番座りがよろしい。甘く切なく、胸が騒ぎます。「幻想即興曲」ってChopin の代表作、というか、中学生時代の同級生でピアノが上手な女の子(イメージとしては髪が長い)が、腕自慢で休み時間なんかに弾いていましたね。(20数年ぶりに高校のクラス会したら、彼女は〜中学高校と同級生だった〜エレクトーンの先生になっていました)そんな、誤った先入観を呼び起こして下さる幸せ。

 柔らかく、まったりと弾いてくださって余裕です。粋なんです。鋭く劇的に、不安をかき立てるような演奏も有、なんだろうけど、そんなんじゃない。ワタシは「Chopin って、そんな優しいもの」と思います。ボレロのハズむようなリズムも自然体でした。子守歌のデリケートな歌も絶品。夢心地。どんどん音が小さくなって、眠りに落ちちゃう。舟歌だって、ゆったり静かな波に揺られるような陶酔が、そして切ない物語もありました。

 「アンダンテ・スピアナート」って、大好きです。きっとChopin の中では一番お気に入り。管弦楽伴奏版もあるけど、無伴奏で完全に充足された世界が実現されていて、前半の囁くようなデリカシーと、後半ポロネーズの躍動がココロを晴れやかに照らします。一番好きな旋律は、そのつなぎ部分ですね。ちょっと寂しげな表情が静謐で消えゆくよう。

 コレ、たくさん聴いていないけど、(ふだんはお気に入りの)グルダでも少々不満があったし、若手ナウタ君なら「キミは若いから、次回また挑戦してね」みたいな味わいで、ルービンシュタインとは比べられません。ポロネーズのリズムがタメを伴って揺れ、時にそっと抜きながら、諄々訥々と曲は進みます。リキみなど、どこにもなし。そして、切ない。

 ああ、これは至福の一枚だ。ちょっとぼんやりとした録音ではあるけど、聴き疲れしません。

(2004年8月13日)


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written by wabisuke hayashi