R.Strauss 交響詩「ドン・キホーテ」/Scho"nberg チェロ協奏曲ニ長調
(小澤征爾/ボストン交響楽団/ヨー・ヨー・マ(vc))


SONY 88697553562 R.Strauss

交響詩「ドン・キホーテ」
大管弦楽のための騎士的な性格の主題による幻想的変奏曲

Scho"nberg

チェロ協奏曲ニ長調

小澤征爾/ボストン交響楽団/ヨー・ヨー・マ(vc)

SONY 88697553562 1984年

 Scho"nbergはバロック作品を元にして、妙にぎくしゃくして大柄、わかりやすい作品なんです。ところが「ドン・キホーテ」って、幾度聴いてもけっこう掴みどころのない、ムツかしい作品と感じます。ま、ハデハデしい響きに惑わされつつ一般にR.Straussの作品って難解じゃないか、日常聴いて愉しめるようになるまで(自分の場合)聴き馴染む時間が必要でした。安かったから、といった理由で最初に自作自演を揃えたのも大間違い、こういった近代管弦楽の精華は良好な音質、そして力量のあるオケで聴くべきなんでしょう。開眼はカラヤン/ベルリン・フィルというのも少々安易だったのか、いかにもド・シロウトに相応しいというべきか。

 ゲルハルト・マルクソン/アイルランド・ナショナル管弦楽団(1997年)は音質良好、誠実、アレクサンドル・ルーディンのソロも見事だったけれど、やはりオケが弱い、すっかり贅沢病極まって、そんな不遜なことを感じるように。当時小澤征爾49歳、ヨー・ヨー・マ29歳の記録、日本が世界に誇る巨匠に特別な思い入れはないけれど、偶然入手した音源に敬意を評して拝聴いたしましょう。

 内容を見ると(カッコ良く栄光に充ちた)「英雄の生涯」の裏返し逆バージョン、情けない、カッコ悪いオトコの妄想カンチガイな一生を長大な変奏曲で表現しておるのですね。チェロ(=ドン・キホーテ)は大活躍!意外なほどオケに溶け込んで突出しません(ヴィオラ・ソロ=従者サンチョ・パンザのクレジットなし)。もともとの作品の造りがそうらしいし、小澤の表現指向もそうなのでしょう。細部分離の良さ、打楽器金管の切れ味、音質極上。

 序奏〜ラ・マンチャの妄想は6分を超えここが全曲中一番長い、神妙かつ牧歌的風情に充ちて、小澤の仕上げはていねい精緻を極めて、冷静クール。これが全編を貫く風情となって、この先いっそう暗く神妙に、推進力を失った録音が増えると思うのです。ここでは洗練されクリア、軽妙だけど厚みのある美しいオケ、情感の起伏は抑制されております。ドン・キホーテの主題はチェロ・ソロにて提示、ヨー・ヨー・マはデリカシーに充ちて軽快、純な音色であります。第1変奏にて地面に叩きつけられるオケの響きも鮮やか、第2変奏”羊の群れ”(金管楽器のフラッター)重層的な響きも浮き立って、もの凄く華やか、切れ味たっぷりに鳴り渡ります。この辺り、雄弁でっせ。あちこち、金管の存在感ははっとするほど鮮烈。

 第3変奏、チェロ(ドン・キホーテ)とヴィオラ(サンチョ・パンザ)の言い合い(騎士と従者の会話)は真剣な暗鬱かつ美声(ここも難解な部分と感じる)、風雲急を告げる第4変奏「貴婦人の救出」には緊迫感有(ここの管楽器+打楽器の存在はクリアそのもの)、第5変奏「ド真夏の夜の目覚め」第6変奏「魅惑のドルネシア」は纏綿たるチェロ・ソロ(ここの繊細さは特筆すべき)、星空のような甘美壮大なロマンスであります。第7変奏「魔法の馬の滑空」は剽軽な女達のからかいに始まって、ウィンド・マシンも登場してシリアス、壮大なるスケールを誇りました。

 第8変奏「王子の救出」に於ける弦+チェロのピチカートの鮮烈(水滴を表しているとか)、第9変奏「僧侶への攻撃」は猛々しく勢い有。第10変奏「騎士との決闘」に破れ、黄昏れの色濃い音楽は敗北の帰郷を表しているのだそう。終曲。死の床にあるドン・キホーテは懐かしく冒頭の主題を回想して、静謐に冒頭に戻って幕。この辺り、音量が落ちてもテンションが下がらないのは一流の証明でしょう。

 音質+小澤の細部こだわってクリアな表現、都会的に洗練されたヨー・ヨー・マのチェロ、オケの技量の高さ(とくに金管のキレ)も相まって、神経質過ぎるほどの完成度、これはヴェリ・ベストかも。(現役CDじゃないらしいけど)

 Scho"nbergのチェロ協奏曲は、Matthias Georg Monn(1717-1750)のチェンバロ協奏曲ニ長調からの自由な編曲なんだそう(原曲聴く機会なし)。ジャクリーヌ・デュ・プレによる録音(ト短調1968年)は別作品だったんですね。バロック後期〜古典派初期。明朗わかりやすい作風は、やたらと大仰にわかりやすく怪しく、若きヨーヨー・マは朗々のびのびと演奏しておりました。

(2015年1月11日)


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written by wabisuke hayashi