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R.Strauss 交響詩「ドン・キホーテ」作品35との出会い


 ワタシはR.Straussが少々苦手・・・というか、いやでも嫌いでもなくて、この長大なる変奏曲はようワカらん!というのが正直なところ。でもね、世評高い音楽は真正面から聴くこと、目覚めるべきはこちらのほうなのは明々白々。極東亜細亜の島国、コンクリート建築物の一部屋で音楽の缶詰を細々と楽しんでいるワタシ。だから機会があれば(CDが安かったら)、ナマはもちろん(そういえば聴いたことないなぁ)CDでも聴く機会を否定しません。

 ワタシは、なんとか「ドン・キホーテ」を楽しみたい!だから、聴く機会を増やしたい。CDが格安で眼前に出現したら(いちおう)購入しちゃう。なんやかんやで棚を検索したら合計10種類出てきました。自分所有のCDを披瀝して自慢する(嗚呼、恥ずかしい!)趣味はないが、知らぬうちに貯まるもんですな。集めるつもりなど微塵もないけど、安いCDに出会ったり、セットものに含まれていたり・・・で。全部ちゃんと聴いたわけでもないし、演奏の印象記憶がないものもあります。この際、少しまとめておきましょう。(優劣を付けたり、☆の数を競うなどという大それた考えはありません。個性の違いを楽しみたいだけ)


 ライナー/シカゴ響/ヤニグロ(vc)(1959年)LP時代は
●ライナー/シカゴ響/ヤニグロ(vc)(1959年)を聴いていたっけ?「LP時代の在庫はCDで回復したい!」という基本的姿勢からCDを購入(RCA BVCC-1033)したのは数年前でしたっけ。(価格失念@800だったか?)

 これはカンロクというか、スケール大きく自信が盤石であって、ヤニグロのチェロも知的で雄弁。オケの強烈な集中力と力量はたいしたものだけれど、強面であり、落ち着いた味わいはあって、威圧感もややありました。おっかない頑固親父的代表的演奏。音質はこの時代では出色の水準だけれど、さすがに細部の濁りはあります。(国内盤だし、オリジナルの音源はどんなものかはわからない)これがワタシの標準となります。


 この度、
ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団/グロッセンバッハー(vc)(ARTENOVA 74321 98496 2 2000年) @580●ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団/グロッセンバッハー(vc)(ARTENOVA 74321 98496 2 2000年) このCDでようやく、遅ればせながら、ちょっとだけ目覚めました。何種類も聴かないとわからんアホなのか、と言われそうだけれど、おそらくその通り。

 まず録音が極上に鮮明で繊細、細部まで作品の様子がよくわかる(ような気がする)。雄弁ではなくて、静謐なオケの響きが透明、リズムにキレがあってわかりやすい。なるほど!(「音楽日誌」より)親密でそっと囁くような演奏が好きなんです。それと録音だな、コレけっこう重要なポイントです。トーンハレ管はメカニカルな技巧前面!というオケではないが、優秀な技量と涼やかなブルー系のサウンドも魅力的。

 威圧感はほとんど皆無で、響きが濁らない。いわゆる後期浪漫派としての厚ぼったい表現とは無縁で、ソロはあくまでオケの一員としての立場を崩さない。つまり、キリリとしても雄弁ではない。スリムすぎ、サッパリしすぎで嫌う方もいらっしゃるのでは?


マルクソン/アイルランド・ナショナル交響楽団/ルーディン(vc)(NAXOS 8.554175 1997年) @500●マルクソン/アイルランド・ナショナル交響楽団/ルーディン(vc)(NAXOS 8.554175 1997年)
(かつて「ちょろ聴き」にて執筆)「脱力系R.S.指向」であるマルクソンは、どこにもリキみがなくて、淡々と進めていくのは「英雄の生涯」と同じ路線か。録音が自然なる奥行きと艶があって、一つの売り物ではある。響きにアクやクセがないのは特筆すべき個性であって、随所に美しさを感じるが、どうも全体としてオケもソロも大人しい。最期まで集中しきれないのは、ワタシの根性なしか?じゃ、個性バリバリにエグい演奏が好きか?と問われると悩んでしまうが。/追加。じょじょにその清冽なる世界に近づいている自覚有。

 方向としてはジンマン盤に似ているが、オケが弱いというか個性不足だし、マルクソンの指揮ぶりもリズム感が少々足りない感じ。でも、これも後期浪漫派ではない、すっきり穏健派の表現で好みです。静かで美しい。これならワタシでも楽しめます。


ビーチャム/ニューヨーク・フィル/ウォーレンシュタイン(vc)10枚組2,280円で購入●ビーチャム/ニューヨーク・フィル/ウォーレンシュタイン(vc)(HISTORY 205228-303 1932年)
 だいたいこの時代の作品は、良好な録音状態が必須条件だと思います。で、この太古録音はずいぶんと状況苦しそうだけれど、意外や意外、ワリと聴きやすい。音質もそれなり(ノイズ取りすぎで乾いているが)だし、ビーチャムの表現がふっくらというか、リキみとか雄弁方向とは違うものを狙っているようで、まったり安心できますね。オケの響きも暖かくて、豊満・骨太。。キリリと厳しいライナーとはうって変わって、全編に余裕を感じました。これは好きな演奏です。現代風ではないが、ノスタルジーを感じさせて、懐かしい。現代に生き残る価値有。ウォーレンシュタイン(後、ロサンゼルス・フィルの指揮者となる)のソロもたいへん立派です。


オーマンディ/フィラデルフィア管/フォイアマン(vc)(HISTORY 205238-303 1940年 10枚組2,190円で購入)●オーマンディ/フィラデルフィア管/フォイアマン(vc)(HISTORY 205238-303 1940年)
 ならば、いかにもこの作品に適正のありそうなオーマンディならば、いっそう期待できるのではないか?との予測空しく、音質が冴えません。でも、数回集中して確認すると、先ほどのニューヨーク・フィルより、色気も潤いもあるサウンドに気付かされます。つまりオケが上手い。ま、オーマンディもオーソドックスで素直な表現する人ですからね、勇壮押しつけがましい節回しとは無縁。語り口上手く、フォイアマンのソロも上品で切々とした歌を感じることは可能だけれど、やはり音質がねぇ・・・。万人にはお勧めできず。


ミュンシュ/ボストン交響楽団/ピアティゴルスキー(vc)(RCA 09026-61485-2 1953年 @250)●ミュンシュ/ボストン交響楽団/ピアティゴルスキー(vc)(RCA 09026-61485-2 1953年)
この当時のRCAは凄い専属を抱えておりましたね。(こんなCDが@250だからBOOK・OFF漁りは止められない)モノラル末期だけれど、音質はずいぶんと改善されていて、上記二種とは水準の格が異なります。意外と切々と歌って、予想通り情熱的でイキイキとしたフレージングが頻出します。雄弁だけれど、重々しさとかカンロクみたいなものではなくて、もっと本能で歌っている!といった印象か。アツいでっせ。ウキウキするような賑々しさがあって、ジンマンらの”静謐派”とは世界が異なります。こちら”体育会系”か。

 ピアティゴルスキーには情熱的な”泣き”があって、指揮・ソロともかなり個性的な演奏です。オケの技量も極上。テンポの揺れも相当ある。ネアカな爆発もあって、ワタシは好きな演奏です。ダークホース的推薦演奏。


コンドラシン/モスクワ・フィル/ロストロポーヴィチ(vc)(YEDANGCLASSICS YCC-0015 1964年) 10枚組3,490円で購入●コンドラシン/モスクワ・フィル/ロストロポーヴィチ(vc)(YEDANGCLASSICS YCC-0015 1964年)
 10年ほど前か?EMIから出た「ロストロポーヴィチ・ソヴィエット・レコーディングス」に含まれていた音源。ライヴみたいでモノラル収録、しかも音質は少々荒れます。ワタシはカラヤンとの録音は聴いていないが、時に彼のチェロがナマナマしすぎるというか、少々お下品で楽しめません。それこそ威圧感があって、うるさく感じることも有。コンドラシンも期待だけれど、音質故かやたらと露西亜風豪快な金管ばかり耳について、響きも濁って残念賞。


カラヤン/ベルリン・フィル/フルニエ(vc)(DG録音 海賊盤FIC-170 1965年) @960!●カラヤン/ベルリン・フィル/フルニエ(vc)(DG録音 海賊盤FIC-170 1965年)
 カラヤンは3回くらい録音していましたか?これ以外聴いたことはありません。これは恐るべき完成度でして、自然な奥行きと広がりある録音、セクシーかつ正確、磨き上げられたアンサンブル、フルニエのチェロが得も言われぬ気品有。カラヤンのクサい芝居横溢か?と思いきや、サラリと流した表現(これも、まぁクサいと言えばクサいが)の序奏から、カタのチカラが抜けてまったりエエ感じでした。

 フルニエは先のロストロポーヴィチとは好対照の、抑制の利いた静かな美しさがありました。各変奏はカラヤンらしい入念な味付けと描き分けがされており、そこに誠実なチェロが絡みます。全体としてあまりに表情付けが手慣れているから、そこを嫌う方もいるかも知れないが、このオケ、水も滴るような美音の魅力は尋常じゃありませんな。意外にも大推薦しましょう。


メータ/ロサンゼルス・フィル/レハー(vc)(LONDON 430 143-2 1973年) @750●メータ/ロサンゼルス・フィル/レハー(vc)(LONDON 430 143-2 1973年)
 「ドン・キホーテ」のソロは、オケの主席と思われます。力量充分。とくにチェロ。この曲、(R.シュトラウスはあまり好きではないが、とくに)お気に入りではありませんが、こんなに細部まで明快に、わかりやすく聴かせてくれたのは初めてのような気もします。この曲に限らずR.シュトラウスは、雄弁に朗々と歌い上げるほど、押しつけがましくなりがち。親密で、ふくよかで、明るく、希望に満ちた楽しさ。てらいもなくカッコウ付けているところが、良いじゃないんですか。(2000年のコメント)〜内容ないなぁ・・・ということで再聴しましょう。

 ・・・なるほどねぇ、こうして比較するとオケの響きにイマイチ魅力がない、というか、メータはていねいにアンサンブルを仕上げているけど、味付けがまだ若い(具材に味が染みていない)感じ。爽やかさはありますよ。録音の分離の良さ、金管の華やかさ、低音の強調など、不自然っぽいが、それに助けられた好印象もある。表現としては意外とフツウ、というかオーソドックス。ソロは、いかにもオケの主席風、あまり個性を突出させないもの。雄弁でもない。いろいろ比較すると、様子が分かって楽しいもんです。


ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン/トルトゥリエ(vc)(EMI 5 73614 2-9 1973年) 9枚組@3,760●ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン/トルトゥリエ(vc)(EMI 5 73614 2-9 1973年)
 全集を購入した後、実質上放置していて気にはなっていた録音。悪い録音ではないが、EMI特有の音録りの思想にはどうも賛同できない。中低音が薄い(ように聞こえます。つまり軽量に響いちゃう)。トルトゥリエのチェロは朗々と高尚で立派、雄弁ですよね。(コンドラシン・ライヴ盤に聴く)ロストロポーヴィチより完成度高く、バランスもよろしい。

 ケンペは旋律をえぐったり、煽ったりしない人なので”穏健派”に見られがちだけれど、語り口はけっこうアツく、変化に富んで浪漫派だと思います。けっこう燃えて、説得力有。先のメータ盤みたいに英DECCA系の華麗なる録音だと、もっと印象一変!のはず。ドレスデンの落ち着いた、地味渋系サウンドは、聴き手が集中しないとなかなか理解できません。ぼんやり聴いていると、「よく整ったアンサンブル」程度の感想に思えちゃう。

 カラヤン盤の微に入り細に渡る表現(かなりスタイリッシュな)に反発を覚える方には、誠実入念のこちらがお薦めでしょう。こちらのほうを世間の標準とすると、ジンマン盤はずいぶん素っ気ないというか、スッキリこだわりもムダもないから、物足りなく思えるかも知れません。おそらく”永く座右に置くべき”随一のCDでしょうか。

(2005年3月17日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi