R.Strauss 交響詩「ドン・キホーテ」作品35との出会いワタシはR.Straussが少々苦手・・・というか、いやでも嫌いでもなくて、この長大なる変奏曲はようワカらん!というのが正直なところ。でもね、世評高い音楽は真正面から聴くこと、目覚めるべきはこちらのほうなのは明々白々。極東亜細亜の島国、コンクリート建築物の一部屋で音楽の缶詰を細々と楽しんでいるワタシ。だから機会があれば(CDが安かったら)、ナマはもちろん(そういえば聴いたことないなぁ)CDでも聴く機会を否定しません。 ワタシは、なんとか「ドン・キホーテ」を楽しみたい!だから、聴く機会を増やしたい。CDが格安で眼前に出現したら(いちおう)購入しちゃう。なんやかんやで棚を検索したら合計10種類出てきました。自分所有のCDを披瀝して自慢する(嗚呼、恥ずかしい!)趣味はないが、知らぬうちに貯まるもんですな。集めるつもりなど微塵もないけど、安いCDに出会ったり、セットものに含まれていたり・・・で。全部ちゃんと聴いたわけでもないし、演奏の印象記憶がないものもあります。この際、少しまとめておきましょう。(優劣を付けたり、☆の数を競うなどという大それた考えはありません。個性の違いを楽しみたいだけ)
LP時代は これはカンロクというか、スケール大きく自信が盤石であって、ヤニグロのチェロも知的で雄弁。オーケストラの強烈な集中力と力量はたいしたものだけれど、強面であり、落ち着いた味わいはあって、威圧感もややありました。おっかない頑固親父的代表的演奏。音質はこの時代では出色の水準だけれど、さすがに細部の濁りはあります。(国内盤だし、オリジナルの音源はどんなものかはわからない)これがワタシの標準となります。
この度、 まず録音が極上に鮮明で繊細、細部まで作品の様子がよくわかる(ような気がする)。雄弁ではなくて、静謐なオーケストラの響きが透明、リズムにキレがあってわかりやすい。なるほど!(「音楽日誌」より)親密でそっと囁くような演奏が好きなんです。それと録音だな、コレけっこう重要なポイントです。トーンハレ管はメカニカルな技巧前面!というオーケストラではないが、優秀な技量と涼やかなブルー系のサウンドも魅力的。 威圧感はほとんど皆無で、響きが濁らない。いわゆる後期浪漫派としての厚ぼったい表現とは無縁で、ソロはあくまでオーケストラの一員としての立場を崩さない。つまり、キリリとしても雄弁ではない。スリムすぎ、サッパリしすぎで嫌う方もいらっしゃるのでは?
●マルクソン/アイルランド・ナショナル交響楽団/ルーディン(vc)(NAXOS 8.554175 1997年) 方向としてはジンマン盤に似ているが、オーケストラが弱いというか個性不足だし、マルクソンの指揮ぶりもリズム感が少々足りない感じ。でも、これも後期浪漫派ではない、すっきり穏健派の表現で好みです。静かで美しい。これならワタシでも楽しめます。
●ビーチャム/ニューヨーク・フィル/ウォーレンシュタイン(vc)(HISTORY 205228-303 1932年)
●オーマンディ/フィラデルフィア管/フォイアマン(vc)(HISTORY 205238-303 1940年)
●ミュンシュ/ボストン交響楽団/ピアティゴルスキー(vc)(RCA 09026-61485-2 1953年) ピアティゴルスキーには情熱的な”泣き”があって、指揮・ソロともかなり個性的な演奏です。オーケストラの技量も極上。テンポの揺れも相当ある。ネアカな爆発もあって、ワタシは好きな演奏です。ダークホース的推薦演奏。
●コンドラシン/モスクワ・フィル/ロストロポーヴィチ(vc)(YedangClassics YCC-0015 1964年) 10年ほど前か?EMIから出た「ロストロポーヴィチ・ソヴィエット・レコーディングス」に含まれていた音源。ライヴみたいでモノラル収録、しかも音質は少々荒れます。ワタシはカラヤンとの録音は聴いていないが、時に彼のチェロがナマナマしすぎるというか、少々お下品で楽しめません。それこそ威圧感があって、うるさく感じることも有。コンドラシンも期待だけれど、音質故かやたらと露西亜風豪快な金管ばかり耳について、響きも濁って残念賞。
●カラヤン/ベルリン・フィル/フルニエ(vc)(DG録音 海賊盤FIC-170 1965年) フルニエは先のロストロポーヴィチとは好対照の、抑制の利いた静かな美しさがありました。各変奏はカラヤンらしい入念な味付けと描き分けがされており、そこに誠実なチェロが絡みます。全体としてあまりに表情付けが手慣れているから、そこを嫌う方もいるかも知れないが、このオーケストラ、水も滴るような美音の魅力は尋常じゃありませんな。意外にも大推薦しましょう。
●メータ/ロサンゼルス・フィル/レハー(vc)(LONDON 430 143-2 1973年) ・・・なるほどねぇ、こうして比較するとオーケストラの響きにイマイチ魅力がない、というか、メータはていねいにアンサンブルを仕上げているけど、味付けがまだ若い(具材に味が染みていない)感じ。爽やかさはありますよ。録音の分離の良さ、金管の華やかさ、低音の強調など、不自然っぽいが、それに助けられた好印象もある。表現としては意外とフツウ、というかオーソドックス。ソロは、いかにもオーケストラの主席風、あまり個性を突出させないもの。雄弁でもない。いろいろ比較すると、様子が分かって楽しいもんです。
●ケンペ/シュターツカペレ・ドレスデン/トルトゥリエ(vc)(EMI 5 73614 2-9 1973年) ケンペは旋律をえぐったり、煽ったりしない人なので”穏健派”に見られがちだけれど、語り口はけっこうアツく、変化に富んで浪漫派だと思います。けっこう燃えて、説得力有。先のメータ盤みたいに英DECCA系の華麗なる録音だと、もっと印象一変!のはず。ドレスデンの落ち着いた、地味渋系サウンドは、聴き手が集中しないとなかなか理解できません。ぼんやり聴いていると、「よく整ったアンサンブル」程度の感想に思えちゃう。 カラヤン盤の微に入り細に渡る表現(かなりスタイリッシュな)に反発を覚える方には、誠実入念のこちらがお薦めでしょう。こちらのほうを世間の標準とすると、ジンマン盤はずいぶん素っ気ないというか、スッキリこだわりもムダもないから、物足りなく思えるかも知れません。おそらく”永く座右に置くべき”随一のCDでしょうか。 (2005年3月17日)
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