R.Strauss 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」「ドン・キホーテ」
(ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィル)


LONDON 430 143-2
R.Strauss

交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」(1968年録音)
交響詩「ドン・キホーテ」(1973年録音)

ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィルハーモニー/フリシナ(v)/レハー(vc)/フリンカ(va)

LONDON 430 143-2  中古で600円にて購入

 1960年代から70年代、メータは若手の代表として人気ありましたねぇ。有名どころはほとんど録音していたはず。チャイコフスキーの全集とか、ドヴォルザークとか出ていたはずで、人気凋落の現在、ぜひ廉価盤CDでどんどん出して欲しいもの。1970年頃のベストセラーといえば、イ・ムジチの「四季」、クライバーンの「チャイ・コン」、カラヤン/ベルリン・フィルの「運命」「未完成」と並んで、メータ/ロス・フィルの「ツァラ」「英雄の生涯」が常連でした。

 ま、ニューヨークに行った辺りから出てくる録音に魅力と人気がなくなって、現在に至っております。オペラが得意なようだし、ウィーン・フィルの定期にも登場するから、ワタシごとき市井のド・シロウトが云々するようなことではないのでしょう。手元には「復活」(ウィーン・フィルとの最初の録音)と、このCDくらいしかありません。(そういえばMozart の交響曲第40番、デビュー録音といわれるブレンデルとの「皇帝」もありました。)

 で、肝心の演奏なんですが、これがなかなか凄い。まず、録音が文句なしの輝かしさで、やや人工的ではあるが、ここまでの鮮度、奥行きならじつに気持ちがよい。1936年生まれだから、当時30歳そこそこでしょう?そのころの小澤とは雲泥の違いがある。若々しい勢い、迫力はもちろんだけれど、アンサンブルや雄弁な旋律の歌は堂に入ったもので、完成度がかなり高いんです。

 なんか、売れている歌手が出す曲出す曲ヒットしていくような、勢いを感じさせる熱気ムンムン。明るくて、なにも恐れないような、ノリがひしひしと伝わってくる思い。

 だいたいロス・フィルというのは、いまでこそ超一流の仲間入りをしているけれど、当時「馬力はあるが、相当粗っぽい」という評価だったはず。1960年前後の、ウォーレンシュテインやラインスドルフとの録音を聴いてもそう思います。ところがねぇ、この演奏を聴くと、オーケストラの艶やかな響きといい、カッチリとした清潔なフレージングといい、超一流のオーケストラにまちがいない。「録音のマジック」では説明の付かないテンションの高さ。

 「ツァラ」は、録音がものを言う。いくら作曲者の自作自演が貴重でも、優秀録音は気持ちよろしいに決まっている曲なんです。冒頭のオルガンの重低音から、輝かしい金管の爆発、オルガンの残響〜効果抜群。堂々と腰を割って、どこをとっても演出上手で、それが鼻に付かない。爽やか。スケールも大きい。繊細な呼吸もある。

 こう言っちゃなんだけど、そう深い内容のある音楽とは思えないので、気持ちよくていねいに演奏してくれれば、満足度は高い、と言っちゃファンに叱られますか(?)ライナーの演奏も嫌いじゃないが、こちらにはあの威圧感がない。

 「ドン・キホーテ」のソロは、オーケストラの主席と思われます。力量充分。とくにチェロ。この曲(R.シュトラウスはあまり好きではないけれど、とくに)お気に入りではありませんが、こんなに細部まで明快に、わかりやすく聴かせてくれたのは初めてのような気もします。この曲に限らずR.シュトラウスは、雄弁に朗々と歌い上げるほど、押しつけがましくなりがち。親密で、ふくよかで、明るく、希望に満ちた楽しさ。てらいもなくカッコウ付けているところが、良いじゃないんですか。

* 後、再聴。・・・なるほどねぇ、こうして比較するとオーケストラの響きにイマイチ魅力がない、というか、メータはていねいにアンサンブルを仕上げているけど、味付けがまだ若い(具材に味が染みていない)感じ。爽やかさはありますよ。録音の分離の良さ、金管の華やかさ、低音の強調など、不自然っぽいが、それに助けられた好印象もある。表現としては意外とフツウ、というかオーソドックス。ソロは、いかにもオーケストラの主席風、あまり個性を突出させないもの。雄弁でもない。いろいろ比較すると、様子が分かって楽しいもんです。(2005年)

 ニューヨーク・フィルとの再録音は聴いておりません。最近の録音は、もっと聴く気がしない。昔の録音の再登場を激安で希望します。


おまけ

Beethoven ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」

ブレンデル(p)/ウィーン交響楽団/メータ  VOXBOX CDX3 3502 1961年の録音 3枚組2,000円ほどで購入

 これ、メータのデビュー録音です。ブレンデルも当時デビューしたての新人。(最近、国内盤が出ているが@1,200くらいだから、輸入盤を探して下さい)LP時代も所有していて、ちゃんとVOXレーベルでした。(ウィーン・プロ・ムジカ管の表記)メータ当時25歳。

 久々に聴いたけど、これは最高の一枚ですね。ブレンデルがリリカルで繊細で、派手ではないが、味わい深い。雄弁な「皇帝」ではないが、軽快で若々しくてとても好感が持てます。ここ一番のキメ、もちゃんと準備してます。録音はやや薄手だけれど、LP時代に比べれば信じられないほど改善されていて、鑑賞に問題ないはず。

 メータは、とくにどうのという個性を発揮しているわけではないが、合わせ上手で立派なもの。若いのに。

(2000年11月17日更新)


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written by wabisuke hayashi