R.Strauss アルプス交響曲 作品64
(カール・シューリヒト/シュトゥットガルト南ドイツ放送交響楽団)


Tre'sor  FTS0107-3 R.Strauss

アルプス交響曲 作品64

カール・シューリヒト/シュトゥットガルト南ドイツ放送交響楽団

Tre'sor FTS0107-3  1955年録音 3枚組1,990円で購入したウチの一枚

 7年前の文書(↓)は読むに耐えぬ赤面の至りであって、言及あったルドルフ・ケンペ/ロイヤル・フィル(1966年)の爽快演奏に感激した余韻醒めやらぬまま、深く反省をしての再聴であります。「Tre'sor」(トレゾア?って読むのか)は(怪しげレーベルだし)あっという間に消えたが、入手しておいてよかったですよ。全45:30、トラック分けなし、一度聴き出したら最後までちゃんと聴けよ!という(手抜きリスナー=ワシへの試練として)有り難い、潔い仕様の一枚となります。

 ケンペ盤が49分だから3分半ほど短いだけだけれど、体感的にはずいぶんと快速であります。語り口はさっぱりとして、涼風がさらさらと通り過ぎるような勢いと、クールなノリがありました。1955年、当然モノラルのライヴ(?)だけれど、音質的な不満はほとんどありません。一見素っ気ないが、じつは細部入念なるニュアンスいっぱい配慮溢れていることを発見できます。この作品は、楽器編成が大きく、バンダ(別働隊)が遠くで鳴るのも(実演だと)視覚的にも楽しい〜と感じられるようになりました。(かつては苦手な作曲家であったが!)

 自然描写に優れ、次々とエピソードが連続して旋律変幻自在に登場する名作〜いくらでも煽って、纏綿濃厚に演奏できそうな作品だけれど、(数少ない)CD聴取経験では意外と正攻法が多い(・・・ような?)。シューリヒトは旋律をふくらませたり、詠嘆に歌ったり、そんな姿勢は存在しなくて、ほとんどイン・テンポで素っ気ないほど雄弁からほど遠い。もちろん爆演に非ず。細部クリアで、流れがとてもよろしい。ムリのない表現は見通しよく、音楽の姿がとても分かりやすい。冒頭「夜」「日の出」から雰囲気充分であり、「雷雨と嵐」には迫力に不足はない。「日没」の切なさに感慨しきり。

 シュトゥットガルトのオーケストラは、清涼で正確優秀なるアンサンブルを誇っております。ライヴですよね(拍手は収録されず)放送録音かな?このオーケストラは(もちろん録音で)暑苦しくも野暮ったいサウンドとは無縁な印象です。クリアな音質で聴くべき作品だろうが、この歴史的(←収録時期的に)録音でも充分堪能できました。以前のワタシ↓は「もう少しフィル・アップしてくれんか」とケチ臭いことを言っておるが、”全45:30、トラック分けなし、一度聴き出したら最後までちゃんと聴けよ!”的集中のためには、これのみ潔く収録で満足いたしましょう。

(2009年4月24日)

 初めて「クラシック音楽」とやらを聴いたのは、10歳位の時?それはいつのことからか〜「ああ、この類の音楽は苦手」なんて贅沢言うようになったのは。R.Straussは、どれを聴いても茫洋とスケールが大きくて、つかみどころがなくて、カッコ付けすぎで・・・・って、ずいぶんとあちこち(少なくとも管弦楽は、ま、CDで)聴いているんですけどね。

 LP時代、ケンペ/ロイヤル・フィル(1966年)でこの曲聴いていました。(CDでも購入)でも、正直言って、コレどこが名曲なんだろう?ワタシって不感症?なんて、別に悩みもしなかったが、R.Straussってカラヤンで聴いても、ショルティでも、作曲者自身の録音を聴いても「?」状態が・・・・。

 やがて21世紀を迎え、中年太りに悩まされる濡れ落ち葉状態の今日この頃、シューリヒトがまとめてワリと安く出たので全部買ったら、「ツァラ」とこの曲が入ってましたね。いやはや、驚きました。1955年の放送録音らしくて、音質は意外と良好だけれど所詮モノラルですよ。でもね。

 なんやらちょっと「わかった」という気になりました。ああ、そうか、と。「自然をこれほど優れた手法で描写した作品はほかに類例を見ないと言われている」(「クラシック音楽鑑賞事典」講談社学術文庫より)って、コレなんの説明になっているんでしょ?ま、純粋にオーケストラの高い技量とか、爽快な金管や打楽器の爆発を楽しめばいいの?

 シューリヒトのバランス感覚が絶妙なんですよ。無用かつ乱暴な重量感がないこと。力強い全奏でも全体の響きが濁らないこと。かといって、金管の力感に不足がないこと。爽やかで、細部まで明快に鳴っていること。全体構成がじつに見通しヨロしいこと。弦の歌が自然なこと。これだけ揃えて、どうだっ!持ってけ。

 一聴サラリとしているが、これはシミジミ系ですかね。日没〜ラスト辺りの弦とホルンの絡みが味わい深い。全45:30。インデックスも何もなしは不親切なCD収録だけれど、一気に聴けます。この曲「初演から大成功だったが、専門家筋からは酷評された」とのこと。いいじゃないの、わかりやすい曲で。演奏もすっきりわかりやすいし。お安いCDとはいえ、もう一曲くらい収録して欲しかったが。(2002年11月8日)


 ちなみにケンペ/ロイヤル・フィル(RCA SRC-7 1,000円)も、久々聴きました。買った当時には気付かなかった発見がありましたね。これも明快で、RPOがいつになく芯のある響きを聴かせてくれました。


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written by wabisuke hayashi