Paganini ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調
(カペク/ミュンヘン交響楽団/チェルコフ(v))


PILZ CD160 161 Paganini 

ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調
カペク/ミュンヘン交響楽団/チェルコフ(v)

Tartini 

ヴァイオリン協奏曲ニ短調 D45
ドゥヴィエ/カメラータ・ロマーナ/ツヴィッカー(v)

PILZ CD160 161 録音年不明 680円(だったはず?)

 取り分けて特筆すべきこともないのですが、久々に棚奥からこのCDが登場したのでちょっとだけコメントしてきましょう。以下は1998年頃の文書かも知れません。演奏云々の前に、演奏者について。イヴァン・チェルコフ(IWAN CZERKOW)をネット検索すると、このPaganiniとBrahms しか登場しません。しかも、時にバックが「ドゥヴィエ/カメラータ・ロマーナ」(これは架空演奏家)になっていたり、Tartiniも「IWAN CZERKOW」の演奏である表記のCDも登場します。(明らかに別人演奏)エエ加減クレジットにはもう呆れました。

 ややオン・マイクだけれど、それなり鮮明な録音(バックは濁ります。それにしてもカタい音!)、ソロは舌を巻くほどみごとな技巧でして、鮮やかに大見得切って、バリバリたっぷりアツく弾いております。全30:36でカットもなし。立派です。今時当たり前か。アダージョあくまでクサく纏綿と歌い、終楽章の勢い余ってハズむようなリズムは、一流の演奏に間違いなし。朗々いきいきと根アカな音色が歌って文句なし。この作品、夏、猛暑にはなかなか似合っておりますね。

 Tartiniは名曲だし、下にクソミソ言うほど悪くないと思うけど、残響皆無のお粗末録音がすべてを台無しにしております。リズム感がよろしくないんです。やや時代遅れな緩さがあって、しかもグラマラスな豊かさ方面でもないから、手が付けられない。ゆっくりじっくり歌うなら、もっと美音であって欲しい、リズムのよろめきはなんとかならないか。第1楽章途中延々と続くヴァイオリン・ソロは(弾いている本人はともかく)聴き手にはかなりツラいものがりますね。

 グラーヴェ、プレストと、手探りで演奏している風でもあり、バックのアンサンブルがお粗末なのは、(おそらく)録音のせいとは言えない。もしかして、往年の巨匠が、晩年かなり技術的に厳しくなった時期に録音した・・・風でもあります。この作品を得意としたシゲティが1937年に録音したCD(バックはゲール/管弦楽団)が出てきました。音質も想像より聴きやすいものだったし、細部配慮の行き渡った表現・歌にいたく感動・・・残念ながら、ツヴィッカーさんを見直すことにはなりませんでした。

(2005年7月30日)

 


 グッリの第5番を聴いていたら、すっかりPaganiniにはまってしまって、代表作を探したらこのCDが出てきました。演奏家は全くの無名で揃えていますが、じつはこれがPILZのオール・スター・ライン・アップなんです。
 ミュンヘンにはたくさんオーケストラがあるようですが、ミュンヘン交響楽団は他のレーベルでも録音があるので、実在のはず。カペクというひとの指揮ぶりは、この際Paganiniですからどうでもいいでしょう。ま、それなりにちゃんとしております。30分だから全曲版。

 チェルコフはそうとうのテクニシャンで、この難曲を朗々と、またギリギリと力尽くでこなしていきます。録音のせいか少々高音は金属的ですが、ちょっとヤクザでクセのある低音辺りの音色も魅力的です。神経質そうな細かいヴィヴラートも決まっています。軽快で細かい音形の続く、第3楽章も気持ちよく聴けます。

 というわけで、無名の廉価盤だからといってバカにできないもんですよ。ま、グッリのような「一点の曇りもないイタリアの青空のよう」な音色とはいきません。
 あまり難しく考えるような曲でもないでしょう。ワン・パターン名旋律の魅力横溢。

 で、つぎのタルティーニが、なんの連関もなくフィル・アップされているのがいかにもPILZらしい。カメラータ・ロマーナもPILZの常連。ローマの団体なのか、はたまたルーマニア辺りの演奏家なのか、は不明です。
 (幽霊団体である可能性もあるそう。ドゥビエも実在するのかどうか・・・)

 ニ短調協奏曲はシゲティの演奏で有名な、哀愁漂う名曲です。

 オーケストラのアンサンブルはかなり雑で、響きも濁りがち。意外と難しいソロらしく、ツヴィッカーはやや苦戦してるふうが見えます。ときどきソロのリズムがヨロヨロとなってしまう。
 つまり技術的に巧くない。カデンツァは聴いていていたたまれないほど。(そこを耐えて聴くのが廉価盤道だ)

 バロック・スタイルとは無縁でありながら、かといって現代楽器の妙技でもない。どの楽章も変化に乏しく一本調子。22分間の苦行。ここまでくると逆に笑いたくなる気分。

 Paganiniは埃っぽい音で鮮度に少々欠け、金属的な録音です。タルティーニは、オンマイクで明るい音だけれど、残響と奥行きが足りません。

 ここまで説明して、あえてこのCDを買おうとする人は偉い!


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written by wabisuke hayashi