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想い出と記憶の音楽



 2004年5月東京に二日間出張となって、懸案(10年ほど来の)だった東京の中古屋さんを教えていただきました。「在庫確認だけで2時間掛かりますよ」なんて〜結果、ほんま2時間きっちり掛かりましたね。やはり人口が多く、経済活動が盛んな東京故、在庫が豊富で、しかも値付けが適正。逆にいうと「掘り出し物」は少ないかも。地方都市では「トンでもないものがバカ高で」売っていることもあるし、その逆(=超掘り出し物)も稀にはあるんです。

 ワタシは「日常使いの店」と感じました。「うん!」とは安くないが、それなりに安価で品揃えが豊富、買う側も売る側も正しい商売行為というか、両者が幸福になるような、そんな売り場でした。結果、ワタシは10枚購入、平均単価は@600(税込)くらいでしょうか。いつもの購入パターンと比べると意外と単価が高い!でも、嗚呼このCD探してた、これが欲しかった、という満足感とはちゃんと釣り合いましたよ。その中の一枚のお話です。


LONDON KICC 8455 Saint-Sae"ns

交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」(1962年)

Ravel

スペイン狂詩曲(1960年)

アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団/スゴン(or)

LONDON KICC 8455 中古@500にて購入

 英DECCAの録音は、作り過ぎと思われることもあるけれど、おおよそ、かなりの時代物でも良好なる音質で聴かせて下さいます。これも例外ではない。少年だったワタシは、このLP(+Honegger「パシフィック2-3-1」)にココロ震わせたものです。(おそらく大学入学時に一度処分済)やがて幾十年が無惨にも過ぎ去り、LP時代も含め様々な演奏を聴いたはずだが、あの感動は蘇りません。やはりアンセルメじゃないとダメ?

 中学生時代の友人に「クラシック好き」がいて、ワタシが買ってもらったアンセルメ盤(きっと当時2,000円。もちろんLP)をクソミソ言っておりました。どうして?彼の推薦盤はプレートル/パリ音楽院管盤(1963年)〜これは社会人になってからLPで購入したし、もしかしたらCDでも買ったことがあるかも(現在手許にはなし)。豊かな残響と勢いのある演奏だった記憶有。やがてオーマンディ盤(1962年/1980年)、やらマルティノン盤(1970年)、コミッシオーナ盤(1981年)なんかも購入して聴いたが、昔日の感激今何処?状態。

 ワタシはこの作品自体を好きじゃなくなっていたんですね、きっと。第2楽章第2部冒頭「ド・ミ・ソ」のオルガン和音がココロに染みてこない。・・・で、ある日、オツカれ気味草臥れ中年は、東京・新宿でアンセルメ盤と再開しました。数十年ぶりか。その気になれば、なんども買う機会はあったけどね。やっぱり買ってあげないと、こうして500円(税込)で目の前に登場したことだし。いったい、どんな演奏だったんだろう・・・

 結論的には記憶通り。しかし、細部には以前気付かなかったことが沢山〜リズムが甘い、というか、アンサンブルのキレもいまひとつ、ときに推進力が落ちる・・・ああ、このことを指していたんだね、中学生時代の友人は。縦線が微妙にズレたり、ずばりメカニック的にオケが弱い・・・録音がかなり鮮明だから、そのことは明白にわかります。世評などどーでもよろしいが、「名盤云々」(という書籍)に数回登場したコメントを見ても「アンサンブルの精緻なことも特筆」「至極豊かで精妙なアンサンブル」・・・ほんま?

 おそらくこれは違う意味だろうと思います。大音量で鳴っても、オケが重量感を伴わない。華やかである(管楽器群)こと、クールで旋律にしっとりとした歌がある(特に弦)こと、できあがったサウンドには馥郁たる香りがあって、味わい系なんです。それは、きっちりかっちり几帳面・真面目一方なるアンサンブルでは実現されない。微量栄養素が名水を作り出すようなものか。響きはたしかに清涼だが、あちこち、ここ彼処(かしこ)に「アンセルメ節」はたしかに存在して、それは「個性」と呼んで間違いないものでしょう。

 再度、結論的には記憶通り。少年だったワタシは、アンセルメの個性を丸ごと、優秀なる録音といっしょに味わっていたのでしょう。それは、後年出会う様々な「交響曲第3番ハ短調」では感じ取ることができないものでした。現在のワタシは、当時の感動を(かなりの比率で)反芻することに成功しました。(「スペイン狂詩曲」は別なCD LONDON 433 -11-2でダブり。但し、音質はビミョーに違うが。ああLP当時フィル・アップだった「パシフィック2-3-1」が聴きたい)


 このお店で過ごした約2時間〜店内では前半オーボエ・ソロの華やかで美しい音楽が、そして、そのあとDvora'k 交響曲9番「新世界より」が全曲流れました。鮮明な録音、テンション高い集中力、燃えるような高揚感の連続〜ああ、良い演奏だ、誰の指揮だろう・・・と終楽章最終盤に差し掛かった時点で、セレクトしたCDをレジに持っていきました。すると・・・

 バーンスタイン/ニューヨーク・フィル(1962年)でしたね。これ、ワタシが小学生の時に聴いていた(兄所有唯一のクラシック音楽の30cmLP)ものです。あのワクワクするような希望は、この演奏で実現されていたのか〜凡百の水準じゃない、なんて美しい、輝くような演奏なんだろう。録音だって誰が40年以上前の昔だ、なんて気付くだろうか・・・。(そのCDは買わなかったけれど)

 ノーミソのなかでは数十年間のタイム・スリップが始まっておりました。この中古屋さんの在庫は膨大で、かつてワタシが売り払ったCDと同じものがたくさんみつかります。すっかり失っていた、そのCDの想い出がひとつひとつ蘇ります。LP時代所有していて、CDで買い損ねていた(評判のよろしくない)Bruckner 交響曲第3番ニ短調〜シューリヒト/ウィーン・フィル(1965年録音。ノヴァーク版第3稿)をようやく購入。いやはや枯れきって、枯淡の域に達してますね。

 ああ、それと1992年に一斉廉価発売されたレーグナー/ベルリン放響(旧東)の一連のBruckner交響曲集、なぜか第4番のみ買い損ねていたんですね。無事、今回500円(税込)にて入手〜1986年発売の国内盤だけど「定価3,200円」(!)となっておりますね。いつも通り速いテンポによる、ひたすら燃えるようにテンション高く聴き手を挑発する音楽。

 ワタシは少年時代に佳き音楽と出会っていたこと、そして若い頃の想い出をいつまでも買い続けている、ということでしょうか。(2004年5月27日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi