Classic Press 2000年冬号〜グラモフォン・ジャパン休刊

(株)音楽出版社  2000年発行 1,800円

 1,800円というのは少々高めだが、充分な内容があって後悔させません。2000年ラストの3日間出張(移動時間が長い。なにせ四国一周なので)も退屈せずに過ごせました。

 じつは、表紙がNAXOSのMr.BRUCKNER〜ティントナーで、奥さん(3人目らしい)のターニャ・ティントナーさんからの寄稿が興味深い。ユダヤ人としてナチにはずいぶん苦しめられて母国オーストラリアを出、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、南アフリカなどで活躍していたそうです。どうも性格的にはそうとうヘンコツで、難しい人だったらしい。(菜食主義者でもあった)

 1993年、カナダのノヴァ・スコシア交響楽団の指揮者を辞したあと、仕事がなかなかみつからず香港に客演に行った際、NAXOSのハイマン社長に会ったのが縁で例のBRUCKNER録音が始まりました。

 日本で彼のCDが発売されたときに、学生さんが彼にファン・レターを送ったそうで、本当に喜んでいたらしい。(ワタシも、初めて彼の第5番を聴いたときには、あっと驚いたものです)日本という、東洋の端の若者から来た熱烈なお手紙は、彼を心の底から感動させたことでしょう。

 彼の死因は、てっきり事故による転落死かと思っていたら、皮膚ガンの悪化から来る病状に耐えきれず自殺した、というのが真相らしい。死のわずか5日前の演奏会も立派に務めたのですが、見当障害が出ていたというし、いずれにせよ彼の寿命は近かったのでしょうか。

 ハイマン社長との契約は、ブルックナーの管弦楽と、管弦楽を伴う合唱曲全曲、計CDで25枚にも及ぶものだったそう。交響曲を全曲録音してくれことは、せめてもの救いでしょうが、すべての録音を完了して欲しかった、と思わずにはいられません。交響曲第9番を再聴し、自分なりにティントナーを偲びました。


 以前からメールで情報をいただいておりましたが、グラモフォン・ジャパンが2001年1月号を持って休刊となりました。断腸の思い。実部数は一万に届かなかったというウワサもある。「大江健三郎が語る永遠の武満徹」は、ほんとうに立派な特集記事だし、ジョン・カールショウの「回想の環(リング)」が途中で終わってしまったのは悲しい。

 が、ワタシが発見したのは、じつは全然別なことで、「輸入盤リリース」の「HDC Classics」というレーベル。

 カヒッゼの名前も懐かしいが、ゴルコヴェンコ/サンクトペテルブルグ放送交響楽団の録音がたくさん出ていたことです。「1938年アゼルバイジャン生まれ。レニングラード音楽院に学び、20年以上に渡ってサンクトペテルブルグ放送交響楽団を率いており、アクの強い表現には定評がある。」とのこと。

 じつは、ワタシの得体の知れない中古CDで彼の録音を所有していましたが、失礼ながら「サンクトペテルブルグ放送交響楽団」というのも初耳だし、もしかして「デッチ上げウソ団体?」と半信半疑だったんですよ。この度、実在が確認されてほっと一安心。

 同じCDで「ティトフ」という指揮者もいましたが、このHDC Classicsに登場します。もしかして、ワタシの得体の知れない中古CDは、この音源経由かも知れません。ほか、旧ソヴィエト系マイナー・オケ勢揃いで、ぜひ聴いてみたい録音がいっぱい。@300くらいなら即買うのですが、そうはいかんでしょう。

Midnight Cruise(真夜中のクルーズ)

Sunday Morning〜光あふれる時〜

 短い間でしたが、グラモフォン・ジャパンの内容の素晴らしさはピカいちでした。楽しませていただきました。


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written by wabisuke hayashi