Mozart 交響曲第41番ハ長調/第29番イ長調
(エルネスト・ブール/バーデン・バーデン南西ドイツ放送交響楽団)


Mozart  交響曲第41番ハ長調/第29番イ長調(エルネスト・ブール/バーデン・バーデン南西ドイツ放送交響楽団)

Mozart

交響曲第41番ハ長調K.551
交響曲第29番イ長調K.201

エルネスト・ブール/バーデン・バーデン南西ドイツ放送交響楽団

CASCADE am@do clasiccs 01040「Mozart Pemium Edition 40枚組」2,980円にて購入(録音年不明/1970年前後か)

 エルネスト・ブールのMozart はあちこちのブログにて評価が高いようだけれど、如何なものでしょうか。ワタシは「安価で名曲をたっぷり楽しむ」という点で、「Mozart Pemium Edition 40枚組」を絶賛してきたし、それに含まれる交響曲集(CD5枚分)は凡百の演奏とは言い難い”粒揃い演奏”と評するに吝(やぶさ)かではありません。

 アンサンブルのテンションの高さ、余計な飾りが少ない表現は、作品の味わいを殺していないでしょう。若く、貧しい人々に福音となるべき、ヴォルフガングの素晴らしき世界をたっぷりと味わうには充分なる存在か。しかし、あくまで個人の嗜好として、なんどか繰り返し聴いてみて、この12曲の録音に少々不満が募りました。たまたまラスト40枚目の「第41/29番」を取り出したが、どれも印象としては似たような感触となります。

 南西ドイツ放送交響楽団の響きが金属的で、マイルドさに欠けます。録音のクセである可能性も高いが、他の新しいもの(別レーベル)を聴いてもやはり”金属的”と思うことがありました。(ワタシの安物オーディオとの相性もあるかも)同じ内容の繰り返しかも知れないが、響きに奥深い静謐さ、デリカシーが足りない。どうもがちゃがちゃと喧しい印象がつきまとって、透明さはもっと欲しいところ。

 第41番ハ長調K.551だったら、念頭にはコンセルトヘボウがあって、第3楽章「メヌエット」には天空より天女が舞い降りるはずなんです。終楽章の「フーガ」には圧巻の感銘がダメ押しに鳴り渡・・・らない。胸がすくようなスケールが広がらない。(終楽章に繰り返し有)

 第29番イ長調交響曲だって、名残惜しげに歩むべき第1楽章からずっと違和感有。正確で上手いが、”味わい”が足りない。オーケストラのカタく濁った響きが、やがてひりひりと耳にざわつきます。CD一枚分通すと、持病である頭痛、耳鳴りが出そうになるのはきっとワタシ個人の問題なのでしょう。Mozart って、もっと優雅で美しいものでしょ。あらゆる音楽に美点を、ましてや我らがヴォルフガングに、できうれば賞賛を以て音楽を語りたかったが、たった今現在、エルネスト・ブールの交響曲には(残念ながら)全面賛同できません。

 もともと「クアドロマニア」4枚を1,600円ほどで購入、それを600円ほどでオークション処分して(再)購入したボックス(ほかに聴きたいものもあったけれど)だけれど、人生、なかなか計算通りに行きませんな。時に、比較対照用として取り出すようにしましょう。

 ・・・と、ここまで書いて翌日、念のため再聴です。音楽の印象はその時の体調、精神的状況、オーディオとの相性によってコロリと変わる可能性、ないでもない。「響きが金属的で、マイルドさに欠ける。録音のクセである可能性も高い」〜まさにこれに尽きるのでしょう。夏場はトランジスタのアンプを使用しているが、真空管だったら、もっと柔らかくなるのでしょうか。それとワタシの嗜好が地味渋方面に寄ってしまって、いくつか手持ち在庫中取り出した演奏比較中では、ハンス・グラーフ/ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団(1988年)とハルトムート・ヘンヒェン/オランダ・フィル(BRILLIANT)の、抑制の利いた方向がもっともしっくりきました(音質も含め)。

 これがヤープ・テル・リンデン/アムステルダム・モーツァルト・アカデミー(2002年)による”古楽器”演奏だと、いっそう好ましい。やはり、これは嗜好問題なのでしょう。エルネスト・ブールはテンション高く、力強くMozart を表現しておりました。

written by wabisuke hayashi