Mozart 交響曲第41/39番(ヨーゼフ・クリップス/コンセルトヘボウ管弦楽団)Mozart
交響曲第41番ハ長調 K551「ジュピター」 ヨーゼフ・クリップス/コンセルトヘボウ管弦楽団 PHILIPS 422 974-2 1972年録音 1,000円で購入(と記憶) 新年といえばMozart 。それも「ジュピター」を聴きたい。この曲を聴くと希望が見えるんです。もしかして2000年はこの曲を聴いてなかったかも。で、棚を探したけど、整理が悪くてなかなか出てきません。(10種類以上はあるはず)みつけたのはこのCDで、なんと懐かしいこと。PHILIPSが1980年代に出してくれた廉価盤シリーズでした。 クリップスはコンセルトヘボウと第21番以降を録音していて、いまだったらBOXものでもっと安く手に入るはず。(マリナーと併せて全集で出ている)安さ狙いのワタシとしては、珍しく意識的に探し、集めたCDです。あれは1990年代の始め頃だったでしょうか。いまでもまとまった交響曲のセット(中後期のみだけれど)では、これは最高の演奏だと信じております。1974年に亡くなった、クリップス最晩年の録音。 まず、コンセルトヘボウ管の上質なこと。例えば、ワタシが14歳頃から聴いていたベイヌムのBrahms 交響曲第4番、1990年代に聴いたヨッフムとのBruckner、2000年に出会ったハイティンクのMahler (クリスマス・マチネ・コンサート)でも、上質で練り上げられた暖かい響きが魅了しました。メンゲルベルクにも痺れますが、彼の偉大な遺産の反動でしょうか、曲の味わいを素直に生かすような演奏が多いような気がします。(アーンクールは個性的演奏への回帰か) どこにもリキみがない。大きな岩を動かすのに、無駄なくツボを押さえたみたいなもので、弱さを感じさせるわけでもない。特異なテンポ設定や、揺れ、思わせぶりな間があるわけでもなく、自然体で淡々と進めていきます。まわりの景色を楽しむように〜あ、こんなところにも花が咲いている・・・〜静かな呼吸で歩んでいるよう。どのパートもほんとうに美しい。弦の響きは、甘さの中に少々大人の苦みがあるようであり、木管も金管も深々と柔らかい。 そっと演奏する部分があるでしょう?(例えば第2楽章アンダンテ)ただの小さな音じゃないんです。くすんだ、コクのある響き。わざとらしいニュアンスをつけているふうはないのですが、この味わいはただものではない。古楽器系の、溌剌とした演奏に比べると、いかにも旧態とした保守的なスタイルかも知れません。この豊満(ゴージャス、という意味ではない)さ、この陶酔は、かけがえがない。 メヌエットはむしろ淡々とした味わい。終楽章は、虚飾を捨て去った老人から「さ、みなさん、いっしょに歌いましょう」と誘われているようで、喜びが溢れました。ついぞ、低弦やティンパニの強奏は聴かれない。高らかに歌われる喜びは、みごとに肩の力が抜けています。 だからこそ、ラストのジュピター音型が効果的なんでしょう。胸に迫るものがあって、もう一度聴きたくなりました。精神的贅沢。 第39番も、同じ趣向の演奏で付け加えるべきものはありません。ひとつ蛇足ながら、メヌエットのバランス感覚(アーノンクールの激演も悪くないが)のみごとさ、セクシーで艶やかなクラリネット(伴奏のアルペジオもクラリネットなのでしょうか)と優しいバックの調和に感銘します。 先日、R.シュウォーツ/LSOのMahler 交響曲第5番(EVEREST)で、度肝を抜くような効果的なオーディオに驚きました。PHILIPSの録音は、年代にかかわらず中低音を重視した暖かい音色でもの。派手さはないが、ここでもオーケストラの美しさを充分感じさせて文句なし。
おまけ クリップスの「ジュピター」にはイスラエル・フィルとの1958年録音(DECCA)があって、このHPにも掲載しました。(書き替えが必要) 交響曲第41番ハ長調 K551「ジュピター」(BELART 461 363-2) HPを始めた当初で、珍しさ狙いと価格(300円)で掲載を決めたものでしょう。再聴してみると、この時期のDECCAにしばしば見られる洞穴で聴いているような、ボワンとした古臭い録音(ステレオ)が気になりました。 テンポはコンセルトヘボウ盤より少々早く、全体として熟成に少々不足して若い。(第1楽章提示部の繰り返しなし)ワタシはこのオーケストラをあまり評価していませんが、クリップスの細かい配慮のせいでしょうか、意外と繊細でわるくありません。(フルートなどの力量の差は歴然だけれど)力みのない表現はここでも変わりなく、メヌエット〜フィナーレでは華やいだ雰囲気も感じられました。(2001年1月6日更新)
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