Mahler 交響曲「大地の歌」(パウル・クレツキ/フィルハーモニア管弦楽団/
マレイ・ディッキー(t)/ディードリヒ・フィッシャー・ディースカウ(br))


TOCE16095 Mahler

交響曲「大地の歌」

パウル・クレツキ/フィルハーモニア管弦楽団
マレイ・ディッキー(t)/ディードリヒ・フィッシャー・ディースカウ(br)

EMI TOCE16095 1959年録音

 【♪ KechiKechi Classics ♪】 サイト開設当初から掲載していたCDはとうに処分済。ウィーン・フィルとの交響曲第1番(1961年)への別コメントもありました。Paul Kletzki(1900-1973)は往年の名指揮者、ダラス交響楽団(1958-1961)、スイス・ロマンド管弦楽団(1966-1973)のシェフを務め、チェコ・フィルとの立派なBeethoven交響曲全集(1965-68)も残しております。若い人はもう知らんかも。1960年前後、ちょいとハードな演目を担当してEMIに録音を残しておりました。(Mahlerの交響曲第9番とか「浄められた夜」など)

 Mahlerは20世紀後半〜21世紀に入って人気演目となって、現役世代が次々と録音しております。今更往年の録音を懐かしがっても・・・なんて思いつつ、偶然再生してみると・・・鮮明な、みごとな現役鮮度音質に感服。EMI録音はほかのメジャーなレーベルに比べワン・ランク下がるといった録音評価もあったっけ、そんな思い出話も今は昔、EMI、RCA、PHILIPSを始め、他小さなローカルレーベルもいろいろ消えてしまって残念至極、閑話休題(それはさておき)

 一般に言葉の壁は大きくて、Mahlerは例外的に声楽作品にもすんなり入り込める(他、BachMozartなど)・・・オリエンタルな旋律満載な「大地の歌」大好き!当時はEMIの専属オケであったフィルハーモニア管弦楽団の上手いこと!クール清潔なサウンド、切れ味、整ったアンサンブルにも感心いたしました。Murray Dickie(1924-1995)はイギリス出身のテナーらしい。フィッシャー・ディースカウは言わずもがなの声楽界の巨人(1925-2012)「大地の歌」の女声部分を説得力を以って担当できる唯一無二の存在でしょう。(二種あるジョナサン・ノット盤は未聴)

 第1楽章「大地の哀愁に寄せる酒の歌」はユリウス・パツァーク(t)の無頼な、退廃的な歌いぶり(ブルーノ・ワルター1952年)が刷り込み、それを念頭に置けばディッキーは妙に楽天的で腰が軽い感じ。なんせ人生斜(はす)に構えたようなシニカルな旋律ですし。冒頭のホルンから、圧巻の技量で輝かしいオケの爆発たっぷり堪能できました。

 第2楽章「秋に寂しき者」。題名通り寂寥の風情あふれる静かな、内省的な楽章。オリエンタルなオーボエ、フルートに乗って、例の如し軽妙に抑え気味なバリトンは抜群の説得力、ホルンが深く呼応して、そのニュアンスの絶妙なこと!憎らしいほど上手い。弦の詠嘆も清潔で美しいなぁ。第3楽章「青春について」は所謂五音音階、ド・シロウトが連想するところの東洋(というか中国)の旋律であります。ユーモラスで明るい木管の躍動+ディッキーの明るい声も旋律によう似合っております。

 第4楽章「美について」。「蓮の花を摘む乙女を描く甘美な部分と馬を駆ける若者の勇壮な部分が見事なコントラスト」(Wikiより)だから、女声が内容的に相応しいかも。バーンスタイン(1966年)は「馬を駆ける若者の勇壮な部分」大爆発!は凄かったなぁ。(←駅売海賊盤ですんまへん。コメントも微妙)クレツキもなかなかの迫力、テンポ・アップが効果的。バーンスタイン盤ではもうちょっと歌い崩していたディースカウも、ここではけっこう生真面目でした。

 第5楽章「春に酔える者」はやはりパツァークの記憶が印象深くて、ホンマに酔っているみたい。ここはヴァイオリン・ソロが歌に絡んで、明るくシアワセな音楽でしょう。ここも五音音階がいかにもオリエンタル。オケは溌剌としております。第6楽章「告別」は引き続きオーボエ、フルートがオリエンタルに遣る背ない旋律を清潔に歌って、この辺りほんまにオケが上手い。幅広い音域を誇るフィッシャー・ディースカウの説得力抜群、低音女声ならもっとウェットな情感溢れるところは、朗々と落ち着いて諦念、彼は高音の抜き方がお見事であります。この人は言語明晰、カスリーン・フェリアはようわかりませんでした(あくまで言語として)。

 とてもわかりやすい、クールな「大地の歌」。重くなったり響きが混沌に至らぬ清涼な演奏でした。この時期にこの完成度、久々に感銘を受けました。(2017年7月25日)


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written by wabisuke hayashi