Brahms 交響曲第2/4番
(カイルベルト/ベルリン・フィルハーモニー/ハンブルク州立フィルハーモニー)
Brahms
交響曲第2番ニ長調 作品73
ベルリン・フィルハーモニー(1962年)
交響曲第4番ホ短調 作品98
ハンブルク州立フィルハーモニー(1962年)
カイルベルト
TELDEC WPCS-6050 1,000円(税込)
数年前に(いつもながら)エエ加減なコメントしてました。Brahms の交響曲は枚数少ないし、CDの価格は安くなるばかりで入手機会は多いんです。例えば、2005年秋には(有名どころで)ヴァント(1982〜85年)、トスカニーニ(1951/52年)各々2枚組全集どちらも1,134円で購入〜はぁ、著名実力派の演奏とはこんなものなのね、と感慨に耽ったりしたものです。しかし、ワタシはいろいろ聴き過ぎたせいか、音楽の悦び、(廉価盤)CDのありがたみを軽視するにようになったのか、これらの作品に対して混迷を深めております。どんな演奏を聴いても”そこそこに良い”が、”集中できていない”という現実。
原点に戻らなくっちゃ。ワタシにとってのBrahms 交響曲の原点は交響曲第4番ホ短調〜ベイヌム/コンセルトヘボウ管弦楽団(1958年)であり、4曲揃いであればこのカイルベルトとなります。前者は多感なる中学生時代の出会いであり、後者は社会人となって「全集を聴ける身分となった」という感慨の(ありがたい)廉価盤LP2枚だったはず。オーディオ条件もあるのかも知れないが、音楽の印象というのは、その時の精神状況、無垢虚心なる音楽への姿勢によって大きく変化するものなのでしょう。
カイルベルトのBrahms にCDで再会したワタシは、”音質の不備”に驚いたものです。「LPではこんな音ではなかったはず」とネットで発言したら、LPでもさほどの音質ではない、という答え有。こうして数年後の再聴の結果は、”ワタシの耳の不備”であり”ココロの不備”であったことは一目瞭然。第2/4番両作品とも、ゆったりシミジミと楽しんだものです。音質どうの、オーケストラの技量云々・・・に関わらず。
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交響曲第2番ニ長調のゆったり、静謐な世界を愛します。ノーミソの中では”あるべき姿”が鳴っていて(エエ加減なものだけれど)、カイルベルトはそれにとても近い説得力がありました。1962年といえば、既にカラヤン時代のベルリン・フィルであり、艶のある木管(オーボエ、フルート)やら、弦の磨き上げられた弦の深みは魅力的であります。金管を強調しないのは録音問題ですか?それとも表現上の抑制か(例えば、コンヴィチュニーでもそんなことを感じる)。時に音楽が上滑りする、上手いオーケストラにありがちの”音が安易に出過ぎる”〜そんなこととは無縁であります。
当たり前だけれど、旋律の節回し細部末端にカラヤン風味付けは存在せず、ストレートでむしろ剛直〜だけれど、強引ムリムリなところはなくて、常に抑制が利いております。テンポの変化は最低限であって、細部入念なる味付け(のよう)でもなく、ほとんどざっくりとしたストレート系の表現だけれど、雑な仕上げではない。静かな第1/2楽章の淡々骨太な表現はしっくりと胸に染み、上機嫌で晴れやかな第3楽章のスケルツォだって雄弁ではないが、にこやかなる表情は無口な親父の喜びであります。
そして、最終楽章の大爆発へ。印象的には、ここで初めて金管が響いた、といったところか。ジミな親父一世一代の晴れ舞台風か。ここだって、一糸乱れぬ(こんな表現が好きな人がいるんだよね。某隣国のマス・ゲームじゃあるまいし)怒濤のアンサンブル突進!ではなくて、どことなく響きは洗練されない、カッコ付けないところが(むしろ)好ましい。
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ハンブルク州立フィル(国立/州立の表現ともかく、ハンブルク国立管弦楽団、というウソ表記は止めていただけないか)との交響曲第4番ホ短調〜「鳴らないし、パッとしないオーケストラの響きだけれど、柔らかさがあるし、一種茫洋とした霧のような雰囲気もある。それが曲に合っている」との以前の感想・・・う〜む、なるほど。ハンブルクのオペラ・ハウスのオーケストラですよね。器用でないオーケストラは、カイルベルトの個性にいっそう似合っている・・・ような気もします。
それこそ”一糸乱れぬ”アンサンブルからますます遠く、時にたどたどしいほど。響きは濁りがちであり、だからこそ”歌”と”誠実”を感じさせる・・・弦のピッチは少々悪いような気もするし、木管の響きはずいぶんとジミであります。ホルンの剛直なる響きは既にBrucknerで確認しておりました。第3楽章「スケルツォ」の躍動は、洗練ない爆発に充ちておりました。
終楽章は、鳴らないオーケストラが悲劇を語って、胸を打ちました。剛力オーケストラが圧倒的にアンサンブルを磨き上げ、優秀録音で楽しむBrahms ・・・とは、また一風異なった、少々時代遅れの表現を楽しみました。 (2005年12月9日)
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