安易なる保守主義
「1,000円以下のCDしか買わない」「ここ最近は500円以下、いえいえ300円より下を狙ってます」〜って、ワタシの最近の音楽生活ぶりだけれど、ここ数年、急激にCDの単価は下がりました。「廉価盤推進協議会」などと大仰なジョーダン言わんでも、安いCDは簡単に、日本中どこでも入手出来るようになりました。ほんまはここからが勝負。多種多様な音楽、音源を経済的負担少なく楽しめる・・・エエ時代になりました。LP時代、CD初期時代は”贅沢品”だったですもんね。
BOOK・OFFやら中古屋さん、ネット・オークション、通販・・・「安ければ買う」という基本姿勢が、結果的に知名度にこだわらず、広く音楽を楽しむことにつながってきたと思います。ま、いつまでもカラヤン、バーンスタインでもないでしょ、と。ちょっと気にしていたのは、スター不在の時代を迎えて、数少ない若手新録音が、レギュラー価格であるが故に聴いてあげられない、という反省はありました。
CDは(基本/例外除いて)腐らないんです。1980年代の中古CDは時々BOOK・OFFで入手できるが、その頃のプラ・ケースは分厚くて立派だし、なによりちゃんと再生も可能。年に数十枚(百枚以上?)単位で「嗚呼、もうこれは聴かないだろうな」と処分するけれど、ま、差し引きエエ加減貯まっちゃいます。2006年は「Mozart YEAR」だったでしょ?「オペラ44枚」「セレナード&嬉遊曲23枚」まとめてオークション激安で落札したり、で、加速度付いております。贅沢なものです。
● これがいけない。
買った以上は・・・と一生懸命聴くじゃないですか。人生の時間は限られているし、聴き手の精神力持続力はもっと脆弱で怪しい。音楽は満腹状態に・・・って、(千度言うが)原点に帰らないといけませんね。じつは、HMVのサイトで「NAXOS」のコーナーを眺めていて少々驚きました。嗚呼、まったく未知の作曲家、作品、そして演奏家がゴロゴロしている。そりゃ、Mozart の「アルバのアスカニオ」だって充分に珍しく、歯応えのある作品に間違いなし。けっして安易に、有名曲ばかり追いかけているわけじゃないつもりだけど。
でもね、NAXOSのライン・アップを見ていたら頭下がります。だって商売でっせ。あれだけ大量の新録音、しかも、珍しい、貴重なる(ワタシはほとんど名前さえ聞いたことがない)音楽ずらり目白押し。未知の指揮者・団体による新録音有、往年の魅力的歴史的録音有。ここ最近、NAXOSは「1,000円弱?高いじゃん」的先入観で、あまり真剣に見ていなかったんです。もっぱら、中古屋で@250狙いばかり。それはそれで貴重なる音源はけっこうな物量で、棚中に揃ったけれど・・・WEISSとか、Turinaとか。
Ginastera(ヒナステラ)、Vanhal(ヴァンハル)、RINECKE(ライネッケ)、黛敏郎「涅槃交響曲」も新録音で出ていたんだなぁ。ボリス・ハイキンのロシアもののオペラ、ロバート・クラフトのStravinsky、Scho"nberg辺りは全部聴きたい!Elgar、Holstの自作自演とか、「ポーギーとベス」の初録音(これは知っていたけれど)とかも興味深い・・・嗚呼、キリがない!「エニグマ」のピアノ版なんてのもあるんですね。ローラン・プティジラール/ボルドー・アキティーヌ管弦楽団のフランスもの、スイス・バロック・ソロイスツの演奏もぜひ聴いてみたい・・・次々と登場する知名度低いが実力ありまっせ(想像)、的演奏者群の魅力。
しかも、BRILLIANT、membranなどと異なり、安易なる同一音源使い回しをしない。つまり個別に買い貯めた挙げ句、激安セットものが登場!パターンが少ないのも見識でしょう。これで「価格が少々・・・」というのは、聴き手の一方的傲慢なる言い分でしかありません。もちろん、いつも変わらぬ懇切丁寧なる録音情報クレジットは前提であります。
● つまりワタシは、いつの間にやら「安易なる保守主義」に至っていた、という自覚であります。
馴染みの作品ばかり、あれこれ理屈こねくり回して悦に入っている・・・あきまへんなぁ。”オトコだったら、ば〜んと行ってみろ!”的冒険から離れたら人生精神的に老境も近いか。例えば、Malipiero「沈黙の休止」/Webern 「管弦楽のための6 つの小品」作品6〜ブルーノ・マデルナ/イタリア放送トリノ管弦楽団(1961年)+Dallapiccla 「パルティータ」〜チェリビダッケ/イタリア放送トリノ管弦楽団(1968年)・・・このCDは、中古激安でなんども、あちこちで見掛け、2001年にBOOK・OFF@250にて購入したもの。(stradivarius STR 13608)〜こんなCDを購入し、楽しみの幅を広げていかないと。
(2006年12月8日)