Bruckner 交響曲第9番ニ短調
(ホーレンシュタイン/ウィーン交響楽団)


Bruckner  交響曲第9番ニ短調(ホーレンシュタイン/ウィーン交響楽団) Bruckner

交響曲第9番ニ短調(原典版)

ホーレンシュタイン/ウィーン交響楽団

TUXEDO MUSIC MNCD-2(VOX原盤) 1954年録音  300円(中古)で購入

 タクシード・レーベルは、1990年頃VOX音源を使用してCDをリリースしておりました。(もう消えたはず・・・って、通販で手に入りますか?)高いときは2,000円で、安いときは数百円で売られるという変な相場で、ワタシはあまり手を出しておりません。これはVOXBOXで2枚組で出ている(た?)ものと同じ録音のはず。かなり曖昧模糊とした音質なので覚悟して聴くように。

 これ、初期HPに掲載していたけれど、内容が気に入らずに自ら削除したもの。でも、こうやって再聴してみると圧倒されますね。スケールも迫力も、奥行きも深さ(音質のことに非ず)も、こりゃ尋常じゃない。壮絶、とか熱狂的とはこういうことを指すんでしょうね。いたずらに煽ったり、安易に絶叫していないと思うんだけれど、非常に雄弁、抑えたところだって、なんとなくザワついた妖しげなる心象風景も秀逸。

 ま、Brucknerってオーケストラの素(す)の色が出ちゃうじゃないですか。実力がモノを言う、というか。ウィーン交響楽団って、時に安易なヘロ演奏することもあって(あくまでCDで聴いた範囲だけど)、これはもっぱら指揮者の責任ですか?例えばBrucknerのキモ=ホルンが特別に痺れるような音色とは思えない(少々カルい、というか薄い、と言っては失礼か)が、ここではとてもそれらしい、というか、詠嘆の表情深刻な、密度の高い響きになっております。かなりの劣悪録音だけれど、ワタシの耳でも(その辺りは)ちゃんと理解できちゃう。やや前のめりの、急いた切迫感に充ちた第1楽章はかなり強面であり、粗野な集中力を誇ります。テンポも速め。

 もともと激しくアツいスケルツォだけれど、文句なくアツく、追い込まれたような表現〜でも、ばんばん乱暴にティンパニを叩いているだけでもないんです。要所要所のツボが決まっていて、しかもそれが上手に、少しずつ、とうとう最後には文句なく”迫りくる危機”風に盛り上がっていく、というか、いつの間にやら流れの渦に巻き込まれて息もつかせず・・・といった具合か。緻密でしっとり、そんな方向ではなく、んもうノリノリでグイグイ荒削りに進んでいく感じ。

 終楽章。やや早めのテンポで勢いと切迫感は持続しますね。金管の開放的な絶叫と、それを受ける弦のたしかな緊張関係。そして、”ゆっくりと荘厳に”アダージョはまるで葬送行進のようであり、やや先を急ぐような”焦り”を含んで怒りさえ感じます。これって、やっぱり時代の証言なんでしょうか。シェルヘンが同じオーケストラでMahler の交響曲第9番をやっているでしょ?個性方向は違うけれど、やっぱりこんな怪しい熱気が溢れていて、特別な”空気”を感じたものです。

 わざわざ音質の条件を乗り越えてムリして聴くような演奏じゃないかもしれないが、ワタシは充分に楽しみました。著名なるジュリーニ盤とはまた別な個性があって、その違いを味わうのもクラシック音楽を趣味とする醍醐味なんです。いずれ名曲を名曲として堪能させて下さる、すばらしき記録でした。

(2005年12月30日)

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