Hindemith 交響曲「画家マティス」/交響曲「ピッツバーグ」/
ウェーバーの主題による交響的変容 (ミラン・ホルヴァート/オーストリア放送交響楽団)


PILZ 160 273 Hindemith

交響曲「画家マティス」
交響曲「ピッツバーグ」
ウェーバーの主題による交響的変容

ミラン・ホルヴァート/オーストリア放送交響楽団

PILZ 160 273  (C)1992年DDD  900円?ほどで購入。

 PILZレーベルは一部の好事家には懐かしい名前でしょう。CDがまだ普及期で高価だった頃(1990年前後)に、1,000円という破格値(相場の1/3?)にて駅売り(乃至ホームセンターのカゴ売り)されていたもの。匿名(偽名)音源を多く含み、当時政治的経済的混乱の中で格安にて演奏家起用ができた東欧での音源使用が多かったんです(発足当初のNAXOSもそうであった)。やがてPILZは倒産し、その音源はPOINTレーベル、更には同朋社、デ・アゴスティーニの名曲全集的な出版物に多く流用されました。現在でも一部昔馴染みの音源CASCADE am@do classicsの激安ボックスなどで入手可能・・・ながら、もうほとんど消えてしまったんじゃないか?真剣に探していないけれど。(Beethoven 87枚組にもいくつか含まれました)

 PILZの棚中在庫はほとんど処分済みで、これはワタシのCD購入の原点みたいなものだから、ちゃんと保存しております・・・というか、Hindemithはあまり得意じゃない自覚があったので、この作品確認にはこれしかないのが正直なところ。嗜好は日々変化するので、久々ちゃんと聴いてあげましょう。音楽聴取の幅を広げる努力は、音楽を愉しむ者にとっての必須課題なんです。ちなみにPILZでの「DDD」表示はあてになりまへん。

 交響曲「画家マティス」はオペラと平行して作曲されたそうで、かのフルトヴェングラー初演(1934年)。破壊的な不協和音とは無縁、知的でモダーンな旋律がわかりやすい。第1楽章「天使の合奏」(Engelskonzert)はユーモラスなリズムに彩られ、不思議な旋律の感触は”リディア旋法”を使っているから、とのこと(わかったような、わからぬような?)。第2楽章「埋葬」(Grablegung )は、情感を押し殺したような鬱々とした旋律があっという間に終わり、 第3楽章「聖アントニウスの誘惑」(Versuchung des heiligen Antonius)にオケが激しく爆破する・・・みたいなんだけど、ようはするにこのCD、音質がかなり悪くて全体に曇っていることを(20年を経て)ようやく自覚いたしました。起承転結がどーもはっきりせんのは、作品の個性?演奏問題か。

 オーストリア放送交響楽団(現ウィーン放送交響楽団)は、あまり芯のかっちりとしたサウンドでもないし。蛇足だけれど、ミラン・ホルヴァートの首席在任は1969-1975年だから、後客演して録音した可能性もあるけれど、音の鮮度を考えると”DDD”表示は怪しい、という結論となります。

 ピッツバーグ市200年祭を記念した作品らしい「ピッツバーグ交響曲」(1959年ウィリアム・スタインバーグ初演 )は、破壊的でヴィヴィッド、打楽器大活躍の迫力で開始されました。旋律は辛口で怪しさ満載だけれど、これもそう激しい不協和音ではないんです。第2楽章「ゆったりとした行進曲」もいかにも辛気くさいHindemith節、幻想的だけれど甘さ皆無、ホルンの朗々としたスケールのソロに深遠なる意味合いを感じない。終楽章は切迫感+多彩な打楽器でリズミカルだけれど、爽快とは言い難い・・・のは、おそらく演奏+録音の問題(元気が足りない)ではないでしょうか。それこそ、ピッツバーグ交響楽団辺りでバリバリ演っていただくと似合いそうな、そんな作品です。

 「ウェーバーの主題による交響的変容」は著名な作品であって、録音も多いと思います。初演は1944年アルトゥール・ロジンスキー/ニューヨーク・フィル。第1楽章「アレグロ」はいつになくわかりやすい、民族的な旋律が躍動いたします。ここでもホルヴァートは少々元気が足りない?(このCD3曲中ではもっとも頑張っているが)録音の印象でしょうか。第2楽章「トゥーランドット」はピッコロで開始される中国風旋律がユーモラス。ここにシンプルかつ複雑な弦の旋律が、細かい打楽器木管に絡んでしつこく、担当楽器を替えつつ繰り返されて効果的。けっこう盛り上がってエエ感じに破壊的であります。第3楽章「アンダンティーノ」は、夜想曲風の静謐かつ甘い、暗い旋律が幻想的。Hindemithってこんな音楽も書けるんじゃないの、ちゃんと。

 終楽章「行進曲」は、Bartokの管弦楽のための協奏曲のフィナーレのような感じですね。(Bartokのほうがうんと効果的で派手だけれど)これも平易で明るい表情がいつもの”辛気くさい”Hindemithとは少々印象を変えてわかりやすい。これももっとキレのあるリズムで聴かせるべきところなのでしょう。

 音楽は出会いなのだな。若い頃、背伸びして新しい音楽にチャレンジしたが、このCDでは少々厳しかったか。おおよそ20年を経、あちこち経験を重ね、その意味合いを理解すべきちょっとマニアックな存在かも知れません。

(2010年10月1日)

 クロアチアの指揮者ミラン・ホルヴァート(1919〜)によるHindemithの交響曲三曲。最近、見直した、というか耳も新たに聴き直した録音です。

 「演奏そのものは神妙であり、精密であり、アンサンブルもよく整ってミラン・ホルヴァートらしい完成度の高さ。オケの性質でしょうか、個性的で魅力ある響きではありません。このオケは録音が少ないのですが(ほとんどがミラン・ホルヴァート指揮)、録音のせいもあって音色は地味で、大人しい。この曲で、いっそう暗い世界に連れていってくれるような、迫力不足。」

 〜とまぁ、わかったようなことを数年前に書いたが、何もわかっちゃない、ということですなぁ。これ、たしかに録音が曇りがちであまりよろしくないんです。「マティス」は、曲の存在そのものは有名だけれど、あまり演奏機会もないんじゃないのかな?それでもこのCD、そろそろ購入10年目に入るから何度か聴いていて、馴染んでくるもんなんです。

 フルトヴェングラーの「ウェーバー」(別途掲載)、シルヴェストリ/POの「マティス」を聴いたら、やたらメリハリがあって豪快骨太、なんとはなしに聴き覚えのある辛気くさい旋律も、妙に新鮮でした。他の演奏はほとんど聴いたことがないし、名のある作品は量をこなさないと真価は見えてこないものでしょうか。

 ようはするに曲の構造が見えないとダメなんでしょう。「マティス」における第3楽章「聖アントニウスの誘惑」の壮大なスケール、「ピッツバーグ」の暴力的な迫力、「ウェーバー」のハンガリー風の旋律と粗野なリズム、これがけっこう魅力的で楽しめました。

 オーストリア放響はCDで聴く限り、素直でクセも、アクも、厚みも足りない。「ピッツバーグ」は、シカゴ響とかフィラデルフィアなんかでゴリゴリやってくれると、目も眩むような効果が期待できそう。(よい演奏があったら教えてください)

 ミラン・ホルヴァートの演奏そのものは、数年前の自分の評価でそう間違っていなくて、「神妙・精密」方面なんです。おそらく鮮明な録音であれば、もっと楽しめるはず。どれも抑制が利いているというか、リリカルで美しいアンサンブル。フルトヴェングラーのところで書いたが、「ウェーバー」辺りは別もんの曲に思えるくらい。(フルさんは大爆発しております)

 「ウェーバー」はインターネットで検索していたら原曲が出ていたので掲載しておきます。これも手元にないので、一度比較してみたいもの。 

第1楽章 ピアノ連弾のためのアレグロOp.60-4
第2楽章 劇音楽「トゥーランドット」Op.37より序曲と行進曲
第3楽章 ピアノ連弾のためのアンダンティーノOp.10-2
第4楽章 ピアノ連弾のための行進曲Op.60-7

 フルトヴェングラーの演奏は壮絶な迫力だけれど、逆にミラン・ホルヴァートの演奏が知的で美しく響くという副産物がありました。Hindemithの作品は、ほか手元にはヴァイオリン・ソナタ、ホルン協奏曲があったはずだから、改めて聴いてみることにしましょう。

(2001年12月28日書き直し)

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written by wabisuke hayashi