ツィゴイネルワイゼン(ヤッシャ・ハイフェッツ/スタインバーグ/RCA交響楽団1951年)


RCA  BVCC-5088 Sarasate

ツィゴイネルワイゼン 作品20

Saint-Sae"ns

ハヴァネラ 作品83
序奏とロンド・カプリチオーソ 作品28

Chausson

詩曲 作品25

アイズラー・ソロモン/RCA ヴィクター交響楽団(1952年)

Beethoven

ロマンス ト長調 作品40/ヘ長調 作品50

ウィリアム・スタインバーグ/RCA ヴィクター交響楽団(1951年)

Brahms

ハンガリー舞曲第7番イ長調

アルフレッド・ウォーレンスタイン/ロサンゼルス・フィルハーモニー(録音情報不明)

Waxman

”カルメン”幻想曲

ドナルド・ヴーアヒース/RCA ヴィクター交響楽団(1946年)

ヤッシャ・ハイフェッツ(v)

これはかなり昔の17cmLPらしい* CD表記ではRCA交響楽団だけれど、オリジナル(NAXOS復刻でも)ではRCA ヴィクター交響楽団となっております。商標契約との関係か?

RCA BVCC-5088  2,000円(税込み)で購入

 以前にも触れたように、ワタシはハイフェッツの大ファンであり、1990年頃レギュラー・プライス(いや、これでも廉価盤だったか?当時は)でCDを何枚も購入しております。この一枚はLP時代から”極め付き”と言われた疑似ステレオ盤だけれど、若い人々には既に縁の薄いものになっているのかも知れません。だいたい「今更、”ツィゴイネルワイゼン”なんて!」といったところかな?音楽に貴賤なし。ワタシは「名曲小品集」みたいなものも大好き。もう眉間に皺寄せて、ムツかしいことばかり曰うのは止めにしましょうやい。これだけ息長く楽しんでいると、あながち2,000円も高くはない・・・かも。

 もちろん現役だけれど、オリジナルのモノラルに戻して下さっているのかな?ま、音楽とは畢竟”好き嫌い”の世界でして、「カラヤンって、どんな料理もカレー味」(カレー好きにはタマらぬ)同様、ハイフェッツだって「何を弾いてもハイフェッツ」でしょう。やや速めのテンポでサラサラと流れよく進んでいく、技巧になんの苦慮の痕跡も存在しない。常にテンションが高く、ストイック。クールな佇まいを崩さない。Mozart もWaxmanも同じに弾いちゃう。Sibelius とBeethoven だって同じスタイル。それでエエんです、全部素敵。痺れちゃう。

 誰でも知ってる歌ってる「ツィゴイネルワイゼン」って、ベタな旋律がクサくて、んもう最高です。演奏は誰のでもいいや・・・と常日頃考えてはいるが、結論的に手許にあるのはこのCDと、同じハイフェッツ(v)/バルビローリ/ロンドン交響楽団(1937年)のみ(・・・だったよなぁ?ああ、エルマンのがあったか、味わい系ヘロヘロの・・・更新までにリッチ盤も発見)。ハイフェッツの鬼神のようなテクニックに聴き惚れていると、とてつもない名曲に思えてくるからまったくもの凄い。しかも、常に涼しげなる表情は持続したまま。リキみ、汗などどこにも存在せず。しかしねぇ、この作品をいや増す快速テンポで演っちゃうなんて無謀な・・・(晩年のエルマンは、どんどんテンポが遅くなるんです)

 Saint-Sae"nsの2作品のほうが優れていると思います。(芸術の香り高い)有名どころ(例えばオイストラフ)の録音も存在して、やはり一流のプロには「ツィゴイネルワイゼン」はイロもの、というか”曲芸風作品”と考えられ、避けられているのでしょうか。どれもワン・パターンな表現、なのかも知れないが、期せずして作品の持ち味が素のまま表出します。ハヴァネラの気怠い熱気に充ちたリズム、「ロンド・カプリチオーソ」の高貴な旋律と切迫感。

 Beethoven の「ロマンス」はワタシの大好き作品だけれど、正直別な曲に聞こえましたね。粛々と、素っ気ないくらい快速による”ハイフェッツ節”に染め上げられて、例えばグリュミオー辺りで馴染んだ優しく雅びな味わいとはずいぶんと異なる・・・少々さっぱり過ぎか?(ここまでバックを務めるスタインバーグのせいもあるのか)

 Chausson「詩曲」は、脂粉にむせるような妖しいテイストを持った甘美な名曲であります。オイストラフ(1955年録音)が15:36に対して、13:19という快速テンポ。熱に浮かされたような、ラプソディック、かつ切迫した前のめりの勢いがあって、しかしどこか醒めている、といった味わい有。(収録順番はBeethoven の前)Brahms は、牧歌的であり、ヴァイオリンが縦横無尽に活躍、テンポを自在に揺らせて楽しさ、クサさには比類がない。もしかして、この一枚中の白眉か。

 ラストWaxmanの「カルメン幻想曲」〜凄い作品ですよね。誰でも知っている情熱的な旋律を、とことんヴァイオリンの技巧に奉仕させるべく変身させちゃう。大業(ワザ)小技取り混ぜて、大見得切ったり、鼻歌で流したり・・・変幻自在、酔わせるような世界でございます。最近だったら庄司紗矢香ちゃんとか、ヴェンゲーロフ辺りが演ってますね。旧世代はハイフェッツの呪縛で、なかなか演奏できなかっただろうな。(コーガンの録音が存在する。これも凄い演奏です!)

 この録音が一番旧いが、音質的にはほぼ問題ないでしょう。2,000円とはずいぶんと贅沢だけれど、それだけの価値と存在感有。永く愛聴したし。

written by wabisuke hayashi