Bach パルティータ第3/4/5番(ヴォルフ・ハーデン)



NAXOS 8550312
J.S.Bach

パルティータ第3番イ短調 BWV827
パルティータ第4番ニ長調 BWV828
パルティータ第5番ト長調 BWV829

ヴォルフ・ハーデン(p)

NAXOS 8550312 1985年録音 (おそらく5枚買ったら5,000円△一枚おまけのパターンで購入)

 「何年ぶりに再聴」ということでもなく、このCDはたびたび取り出して楽しむべき、お気に入りです。

 NAXOSカタログを確認すると、既に数年前から消えております。リュプサム盤が三枚で全集になっているので、廃番の憂き目にあったんでしょう。(この演奏は残念ながらお薦めできない)もう一枚のSchumann「フモレスケ」はまだ生きておりました。以前、CD紛失未遂事件がありまして、その一枚がこれだったんすね。見つかったから良かったが、ショックでした。

 デッサンのゆがんだBach の肖像がヘボいジャケット絵ではあるけれど、演奏は・・・ピアノ自体の音色が出色でして、おそらくスタインウェイではない。もっと柔らかくて地味な響き。鋭利で冷たい切れ味とは無縁の、白磁の輝きを連想させる清潔な音色でしょうか。やや不器用で、生真面目な歩み。ハーデンは室内楽の人(トリオ・フォントネ)だそうで、流麗なる技巧をウリにする人じゃないんです。走らない、流さない、雄弁ではない。誠実な歌はココロの沈静を呼び、そしてラスト「ジーグ」に向け、着実に聴き手の胸をアツくさせて下さる。

 例えば、グールドの演奏にはもっと特異なるリズムのノリと色気があったと思うし、これがチェンバロ(手元にはベルダー1999年録音のみ)だと、別な作品のように典雅で、ゆらゆら幻想的な味わいが溢れました。Bach の音楽は、楽器、演奏スタイルを選ばない。もともとストイックな音楽だと思うが、変化とか装飾音はほとんど存在せず、”清く、正しく、美しく”〜少々息苦しいくらいに、静謐に、ハーデンは表現して下さいました。

 第5番ト長調は、小さい子供たちが無心で走り回るように軽快で、コロコロ楽しい開始ですよね。各舞曲ごとに、繊細な変化を付けて音楽は粛々淡々、とつとつと進みました。契約問題等あるんだろうが、残りの作品も録音していただいて全曲発売されないでしょうか。ワタシはコメントできるのはこの程度です。

(2005年10月7日)


 手持ちのNAXOSの中ではもっとも旧い録音。買ったのもNAXOSが店頭に出始めた頃。(もちろんデジタル録音)全曲主義を貫くレーベルにしては中途半端な録音となってしまって、別な録音も出ているのでおそらく廃盤になっているでしょう。ハーデンはもともと室内楽の人だそうで、NAXOSにはあと2枚録音(レーガーとシューマン、西崎崇子とのヴァイオリン小曲集)があります。最近、新しい録音は出ていません。

 まだCDを集め始めたばかりの頃(おそらく1992年)で、LPをきれいさっぱり処分したワタシはレパートリーの回復に意欲を燃やしていたはず。「グールドBach の世界」という大物をかつて所有していたので、Bach の鍵盤作品はぜひとも欲しかったのです。(VOXでガリングのチェンバロによる全集もLPで持っていたなぁ。懐かしい)

 FICの海賊盤で、グールドのパルティータ第1/2/4/6番を首尾よく手に入れた(ANC181〜1,000円だったかな?)ワタシは、このハーデン盤で計全6曲揃えてご満悦。(演奏家なんてどうでもよかった・・・・安ければ)

 パルティータは、とくに第5番の春の訪れを感じさせるような、可憐で明るい曲想が大好きです。
 ハーデンのピアノは、ひとつひとつの音を慈しむように、ていねいで、静かで、淡々としたもの。グールドにくらべるとずいぶん地味。なにも主張していないように見えて、ほとんど飾りらしい飾りもない、スッピンの美人ですね。強い打鍵は一度も出てこなくて、そっとそっと弾いていて、眠くなるような快感。

 テクニック的に「切れる」印象もないのですが、確信犯だろうと思います。集中すると見えてくるのですが、ピアノの音色が繊細かつ暖かくて気持ちがよい。舞曲的なリズム感を強調したものでもないし、スケールも小さいかも。でも、そんなもの欲しいとも思いませんね。
 録音も自然。

 ハーデンは1962年生まれと云うから、まだまだ若いし、トリオ・フォントネというわりと名前の知られている室内楽で活躍しているドイツ人とのこと。(初期NAXOSらしい、なんとなくデッサンの悪いBach のジャケットが外していておもしろい)


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written by wabisuke hayashi