Schumann「フモレスケ」(ヴォルフ・ハーデン)Schumann フモレスケ 変ロ長調 作品20 Reger Bach の主題による変奏曲とフーガ 作品81 ハーデン(p) NAXOS 8.550469 1985年録音 833円で購入 トリオ・フォントネという室内楽では有名なハーデンの録音。初期NAXOSで、3枚分中途半端な録音が残されていて、最新カタログ上ではいちおう現役CDのはず。選曲はずいぶんと渋くて、いったいどうしてこんな組み合わせになったのか不思議、かつ魅力あるCDでした。各々30分弱くらいの作品だけれど、トラック二つだけという不親切な編集です。 交響曲はやや苦手だけれど、Schumannのピアノ曲はどれもお気に入りなんです。旋律は美しいし、ハーデン特有の地味で、誠実、明快・虚飾のない響きが胸を打つ・・・・・だけど、この曲についてはな〜んも知らんワタシ。解説にもこう書いてあるじゃないですか「The form of the Humoreske is elusive.」〜elusiveってなんやねん、と辞書を引いてみると「つかまえどころのない」という意とか。 いちおう曲順がドイツ語で出ているので、いつものようにドイツ在住の学生さんに訳を頼んでみたけれど・・・・
> Einfach
> Sehr rasch und leicht
> Wie im Anfang
> Hastig
> Nach und nach schneller
> Wie vorher > Adagio
> Einfach und zart
> Intermezzo (Einfach und zart) .
> Innig Schneller (Innig).
> Sehr lebhaft
> Immer lebhafter
> Stretta.
> Mit einigem Pomp.
> Zum Beschluss ・・・・・う〜む、これじゃねぇ、「つかまえどころのない」どころか・・・・、でも、音楽はとても美しい。 ハーデンの音色は、まるで歴史的楽器を使用したような、地味で控えめな音色。擬音で表現してみると「トツトツ」といった感じでしょうか。ま、Schumannのピアノ曲や室内楽は同じパターンで、自由自在に曲想が移り変わって行くんです。こどもが無邪気に走り回っているようでもあり、夢見るようなしっとりとした情感も登場する、ちょうどこれは歌曲のイメージか。 Schubert の旋律にも「溢れる歌」を感じ取ることは容易だけれど、時代が下っているせいか、こちらはもっと気紛れで変化に富んでいるんです。この人のBach パルティータでも同じだけれど、さっぱりとして、抑制された表現がとても個性的。ギラギラしたような技巧は表に出ないし、かといって大人しいだけの無個性な演奏でもない。淡々としているが、薄味の上品な味わいが深く、静謐であること。
Regerの作品はあまり録音がないと思います。(ゼルキンのがかつて出ていた)BWV 128 《ただキリストの昇天にのみ》 Auf Christi Himmelfahrt allein からの主題だそうで、いかにも彼らしい濃密な味わいが楽しめる作品。Schumannより更に時代は下って、さすがに強烈な打鍵は頻出するし、いかにも技巧的にもたいへんそうな曲なんです。 曲的には、大柄ですからハーデンの表現はいかがなものか。いくらでも派手派手しく、強烈な変奏曲ごとの対比を演出できるはずですが、やはりこの人には抑制がありました。「上品」と言い換えてもよろしい。繊細さが身上なんです。骨の細さは感じさせません。技術的に安定しているのはもちろんのこと。ラストへの圧倒的な盛り上がりには充分満足。 ハーデンは、できればMozart の協奏曲あたりを演奏すると似合っているような気もします。でも、録音は期待できないかな。NAXOSの3枚分も廃盤になった可能性もある。(2001年10月5日)
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