Grieg/Sibelius 弦楽アンサンブル作品
(エイドリアン・リーパー/カペラ・イストロポリターナ)
Grieg
二つの旋律 作品53
ノルウェーの旋律/初めての出会い
二つのノルウェイの旋律 作品63
民謡の調子で/牛寄せ歌と農民の踊り
愛の歌
二つの哀しき旋律 作品34
胸の痛手/過ぎた春
Sibelius
ロマンス ハ長調 作品42
アンダンテ・フェスティヴォ
カンツォネッタ 作品62a
恋人 作品14
恋人/愛する人の通る道/おやすみ、愛しい人、さようなら
エイドリアン・リーパー/カペラ・イストロポリターナ
NAXOS 8.550330 1989年録音 ブラティスラヴァ・モイゼス・ホール 833円
10年ぶり再聴。若く貧しく、有名無名問わず”安いCDしか買えなかった”音楽愛好家は、いくらでもたっぷり音楽を聴ける時代(世代?)となりました。当時、エイドリアン・リーパーにもカペラ・イストロポリターナにも特別愛着があったわけでもなし、ひたすら作品を虚心に楽しもうといった趣旨でした。1992年発売、たった今現役なのはさすがNAXOS、もちろんNMLにて拝聴可能。↓以下の素朴なコメントは認識違いがあって、カペラ・イストロポリターナはブラティスラヴァの常設団体だそう。1990年前後はNAXOS(とくにバロック)音源担当大車輪の活躍でした。古楽器演奏ひと通り普及して、こんな現代楽器のバロックも意外と新鮮に響きます。ここでの素晴らしき選曲(弦楽作品ばかり)は、ジミ、静謐、内省的なものばかり。ワタシの嗜好のツボです。現在でも似たような趣向ばかり好む性癖有。
特筆すべきは会場残響の自然なことでしょう。iPodにて拝聴すると濃密なアンサンブル?コンポにて部屋で響かせると、記憶懐かしい、ちょっぴり素朴、ジミな響きが蘇ってまいりました。Griegの旋律は、どれも短く、懐かしく、しみじみと胸に染み入るものばかり〜浮き立つような「ノルウェイの旋律」、「初めての出会い」って題名から甘く、切なく、後ろ向きの回顧そのもの。「民謡の調子で」って、おそらくは専門の方はノルウエイ固有の古来旋法を理解するのでしょう。ワタシには寂しい嘆きと感じます。嗚呼、切ない。。「牛寄せ歌と農民の踊り」って、題名からイメージするよりずっと洗練されて、しっとり深呼吸するような安寧の詠嘆(これが牛寄せ歌?)〜溌剌とした舞踏へ至ります。ここが「農民の踊り」ですね。
「愛の歌」は、原題は「Erotik」だから、もっとエッチなMahler のアダージエットみたい?と想像したら、そっと小さなこどもを慈しむような優しい旋律でした。次の「胸の痛手」「過ぎた春」は著名なものであって、若い頃からのお気に入り。
これほど胸を締め付ける旋律はほかに見当たらない。泣けます。青春の痛みそのもの。二度と帰ってこない若き日を回想するかのような、ひたすら甘美な世界・・・ ・・・その通り。リンク先のフィルハーモニア管弦楽団に比べ、編成は小さいし、ややザラリとしたサウンドも味わいあるもの。
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こうしてGrieg→Sibelius と聴き進めていくと(当たり前に)作曲家の個性相違を痛感いたします。Sibelius はもっと旋律がアーバンであって、民謡風土俗を感じさせぬ洗練、クールな気品を感じます。やはり短い作品ばかり。こちらも甘美な旋律連続、但し、甘さ控えめオトナの味でございます。ちょっと内向きテイスト。ロマンスは”ハ長調”なのに、寂しく、物憂げであります。複雑であり、Griegのような素朴な民謡風に非ず。ため息、吐息を感じさせる作品。
「アンダンテ・フェスティヴォ」はコラール風朗々とした歌であり、精神的に昂揚するものを感じました。これも一見シンプル、じつは微妙な陰影が次々と付加されます。「恋人」は幸せを感じられぬ寂しさが漂って、実らぬ恋、後ろ向きの思い出ばかり。静かに噛み締めるような、そんな哀しい旋律でした。 (2013年3月10日)
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カペラ・イストロポリターナは、1983年スロヴァキ・フィルのメンバーによって創立された、とのこと。NAXOS初期の録音をかなり引き受けていて、1990年代中盤以降は姿を消します。もしかしたら、録音用の変名かな?NAXOSにはそういうのがけっこうあるみたいだし。水際だった美しさを誇るアンサンブルではないが、素朴で土の匂いがするような・・・そんな味わいでしょう。
エイドリアン・リーパーはArte-NovaでのMahler 全集がとうとう完成しなかったみたいだけれど、もとより大曲系よりこういった小品に味がある人、のような気もしますね。この一枚はNAXOS初期のもので、あるようで意外と手に入らない、地味渋めの名曲がズラリ。ま、見た目脂ぎって、じつは草臥れ果てた中年腹出おじさんも、夜中にこんな静かな音楽聴いちゃうと涙が出ちゃう〜似合わんか?(スマン)
Griegは「二つの哀しき旋律 作品34」だけ、昔から馴染みでしたね。題名と曲調がこれほどピタリ!というのも珍しい名曲。「胸の痛手」「過ぎた春」って、嗚呼、青春は想い出の中に・・・なんて言う情景眼前に浮かぶでしょ?どこかのサイトに「自分の葬式にはコレを」って書いてました。同感。「初めての出会い」っちゅうのも、こみ上げるものがありますよね。題名だけでも。
これがずいぶんと、地味に、控え目に表現されるんです。「愛の歌」は「Erotik」が原題となっていて、なんやら怪しげですか?じつは3分少々のはかなげな旋律で、これは静かで淡い想いだなぁ。こんな「愛の歌」〜今時流行らんか。渋谷で小学生の小便売ってるような時代じゃ。
こうしていっしょに収録されると、Sibelius はずいぶんと上品というか、洗練されて、やや複雑な旋律に感じますね。「恋人」は、たしかバルビローリのを聴いたことがあるけど、意外と秘曲方面でしょ?いずれ2分から5分の小品ばかり。清冽な雰囲気は味わいはGriegに共通です。あとは好みの問題。
詠嘆と安らぎが交互するような世界ですね。「恋人」は、結局成就しなかったのかな。「愛する人の通る道」は細かい音型の連続で、揺れ動く心象が表現されます。「おやすみ」のソロ・ヴァイオリンは切ないっす。寂しげな憧憬は、静かにそっと囁くように語られました。選曲も演奏も、メインステージで語られるようなCDじゃないけど、貴重なる一枚。演奏は地味だけどね。(2003年9月26日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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